
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)06月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1497 3面
第111回日本消化器病学会総会が4月24日から3日間、都内で「臓器がつなぐ消化器病学」をテーマに開催され、徳洲会グループから5演題の発表があった。また、総会初日の本部評議員会の席上、第38回日本消化器病学会奨励賞の授与式があり、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の佐々木亜希子・消化器病センター部長が、同学会機関誌に投稿した論文が高い評価を受け、同賞を受賞した。
奨励賞の賞状を手にする佐々木部長
佐々木部長が奨励賞を受賞した論文のタイトルは「Severe induction of aberrant DNA methylation by nodular gastritis in adults」(成人の結節性胃炎によるDNAメチル化異常の重篤な誘発)。奨励賞を受賞した10人のうちのひとりに選ばれた。「大学病院の受賞が多いなか、民間病院として取り組んでいる基礎研究が評価され、奨励賞を受賞できたことは、とてもうれしいです」と佐々木部長。
短腸症候群をテーマにシンポジウムで発表する伊藤部長
論文では、胃がんのリスク因子である異常なDNAメチル化(遺伝子発現の抑制)が、結節性胃炎(NG)によって誘導されるか解析し、結果をまとめた。
DNAメチル化が起こると、がん抑制遺伝子の働きが抑えられ、がんが発生しやすくなる。NGは、びまん型胃がん(スキルス胃がん)のリスク因子。萎縮性胃炎(AG)によって異常なDNAメチル化が誘導されることは知られていたが、NGによるDNAメチル化の誘導の有無は不明だったことから、多施設共同研究として取り組んだ。佐々木部長が研究責任者を務めた。
大腸がん転移のメカニズムについてワークショップで発表する長山部長
佐々木部長は「びまん型胃がんは30~40代の比較的若い女性に多く発症する進行の早い胃がんです。基礎研究というと実験室のイメージや、臨床に役立つのはだいぶ先というイメージがありますが、疾患の予防や重症化予防、早期治療などにつなげ、研究成果を目の前の患者さんに還元していくことを目指しています」と抱負を語る。
解析の結果、NG患者さんから採取した胃粘膜検体を調べたところ、胃がんの有無にかかわらず、DNAメチル化異常が誘導されていることを明らかにした。これは、発がんの前の胃炎の状態からすでに異常なDNAメチル化が誘導されている状況を示し、NGが高リスク胃炎と称される機序の一つと示唆した。
「上部内視鏡検査を行う際にNGの所見を拾うようにしたり、NGはピロリ菌感染によって引き起こされるため、NGがある場合は除菌したりすることなどが臨床現場では大切だと考えます。今後、NGを発症した場合でも、どのような人が、がんを発症しやすいかなど機序を解明していきたい」と展望している。
日本消化器病学会総会では、徳洲会はシンポジウム1演題、ワークショップ1演題、一般演題(口演)2演題、一般演題(ミニオーラル)1演題の計5演題を発表。
シンポジウムでは湘南鎌倉病院の伊藤慎吾・外科部長が「急性疾患由来短腸症候群の予後」をテーマに発表。短腸症候群は、腸管を大量に切除したことで、消化や吸収の機能が大きく低下した状態をいう。クローン病や上腸間膜動脈血栓症、中腸軸捻転などが原因となることが多い。
伊藤部長は短腸症候群の定義や臨床的特徴、原疾患などを紹介したうえで、自施設で経験した症例に言及。治療内容や経過、背景、長期予後を後方視的に検討した。「非クローン病由来の短腸症候群の予後はきわめて不良で、本病態の認知度は低く、医療助成やサポート体制は十分ではありません」と結んだ。
ワークショップに登壇した宇治徳洲会病院(京都府)の長山聡・消化器外科部長は「播種細胞(DTC)オルガノイドを活用した、大腸癌微小転移巣の顕在化のメカニズムの解明」をテーマに発表。長山部長の前任地であるがん研究会がん研究所との共同研究だ。
長山部長は、大腸がん転移のメカニズムの解明を目指し、原発巣から血行性に遠隔臓器に到達した播種細胞(DTC)の細胞特性を調べるため、原発巣のPDO(患者由来オルガノイド=患者さんから採取した腫瘍細胞を用いて3次元培養した組織モデル)を用いてマウス転移モデルを作製。同所移植を行い、肝臓を調べたところ、肉眼的には転移病巣を確認できないものの、インビボイメージング(非侵襲的に視覚化する技術)では、がん細胞集団を確認できた。
「私たちは、これがDTCであろうと考え、DTC由来のオルガノイドの樹立に成功し、さらに同所移植を行いました。すると、2代目のマウスでは肺に肉眼的な転移巣、3代目では肝臓に明確な転移巣が形成されました」(長山部長)。同一患者さん由来の原発巣、DTC、肉眼的な転移巣から、それぞれ樹立したPDOを比較し、DTCに特徴的な遺伝子発現パターンを調べると、ケラチン遺伝子の発現が有意に亢進していることを確認。引き続き解析を進め、転移メカニズムの解明を目指す考えを示した。
一般演題(口演)では札幌東徳洲会病院の伊藤貴博IBDセンター副センター長が「クローン病寛解患者に対するBio終了の取り組み」、宇治徳洲会病院の嘉祥敬宇・消化器内科医師が「巨大肝嚢胞に対する超音波内視鏡下経消化管的ドレナージの有用性」と題し口演した。一般演題(ミニオーラル)では、湘南鎌倉病院の増田作栄・消化器病センター部長が「急性胆管炎における抗菌薬短期療法の効果:多施設共同ランダム化試験(Trial in Progress)」を発表した。