徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)02月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1477 1面
榛原総合病院(静岡県)は国産の手術支援ロボット「Saroa(サロア)サージカルシステム」(リバーフィールド社製)を導入、1例目の手術として上行結腸がん(大腸がん)の切除術を行い、以降も順調に症例を重ねている。従来の手術支援ロボットにはない“力覚”(触覚)を術者にフィードバックするのがサロアの特徴だ。これにより、鉗子が、どの程度の力で組織を把持しているかなど術者の手に伝えることができ、繊細な手技に寄与する。静岡県で初、全国でも5番目で、徳洲会グループでも初の導入。同院は当面、大腸がんの手術で活用していく方針だ。徳洲会グループは患者さんの身体に負担の少ない治療を提供するため、先進的な技術の導入に注力、サロアを含め保有する手術支援ロボットは計31台に上る。
「低侵襲手術を高精度に施行することに寄与します」と高山副院長
サロアは、先端に鉗子やカメラ(内視鏡)を取り付ける3本のロボットアームを有するペイシェントカートと、術者がモニターを見ながら手術操作を行うサージョンコンソールで構成。術者は操作ハンドル(ハンドコントローラー)で操作する。
モニターに映し手術室スタッフと術野を共有しながら手術を進める
指先に力覚を感じながら、オープンタイプのサージョンコンソールに座り手術
サロア手術を担当しているのは、これまで手術支援ロボット「ダヴィンチ」での執刀経験が豊富な高山悟・副院長(外科)。高山副院長は「操作ハンドルを通じて手に感触が伝わってくるのがサロアの大きな特徴です。これにより、力加減の繊細なコントロールを行いやすくなり、臓器を柔らかく持つことなどができます。患者さんの身体に負担の小さい低侵襲手術を高精度に施行できます」と説明する。
高山副院長が話すとおり、同機の最大の特徴は力覚提示機能だ。独自の空気圧制御技術により、手術に使用する鉗子にかかる力を検出、電気信号に変換して力覚として操作ハンドルにフィードバックする。術者は視覚情報に加えて触覚を頼りに力加減を調整することができ、臓器を優しく扱い、脆弱な臓器を傷つけるリスクを低減できる。
ペイシェントカートは軽量・小型化を図っており、手術室の床を補強したり手術室を拡張したりせずに利用することが可能。また、オープンプラットフォームを採用し、内視鏡やモニター、電気メス装置などは他社製品を組み合わせ使用できる。
同機器は2023年5月に胸部外科(心臓外科を除く)、一般消化器外科、泌尿器科、婦人科で薬事承認を取得した。
サロアを導入した経緯について、高山副院長は「高度医療の提供を通じて当院外科の存在感を高め、地域完結型の医療の実現を目指し、地域に貢献していくためです」と強調する。サロア導入に際して同院は院内勉強会を開くなど準備を進め、報道機関向けの説明会や地域の医療関係者向けに説明・見学会を開き、周知活動にも尽力した。
昨年10月に施行した1例目の手術は80代の女性患者さんで上行結腸がんだった。全周性狭窄性病変による通過障害を来しており手術となった。取材で訪れた日も上行結腸がんの70代女性の手術をサロアで実施し、病変を切除、摘出した。助手は馬場卓也・外科部長が務めている。当面、大腸がんの手術でサロアを活用していく計画だ。
サロアに関しては一般社団法人徳洲会が、大阪大学大学院医学系研究科、リバーフィールド社と共同で、低軌道衛星通信を用いた移動型遠隔手術システムの実証実験を八尾徳洲会総合病院(大阪府)で実施した実績がある。高山副院長を含む6人の外科医が参加した。実証専用機を用い24年6月に実施。
実証実験の狙いは、遠隔ロボット支援手術の実現可能性を実用レベルで検証することだ。サージョンコンソールを八尾病院の手術室内に、ペイシェントカートを八尾病院駐車場のトレーラー内に配置し、トレーニング用モデルで縫合・結紮など手技を行い、実験に成功した。
実用可能になれば、医師不足が深刻な離島・へき地の患者さんに対し、遠隔ロボット支援手術によって高度な手術を実施できるようになり、医療環境の向上が期待される。