
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)12月02日 月曜日 徳洲新聞 NO.1469 4面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は2023年6月に保険適用となった先進的な医療機器「アクアビーム ロボットシステム」を導入し、前立腺肥大症に対する新たな治療を開始した。経尿道的に挿入した棒状の医療器具から生理食塩水を高速噴射し、前立腺組織を切除するというもの。画像上に切除範囲を指定(マッピング)することで、治療計画に沿ってロボットが自動的に前立腺の切除を行うのが大きな特徴だ。スピーディに高精度の治療を行うことができる。低侵襲で出血が少ないうえに、熱損傷がないことから勃起機能不全や射精障害、尿失禁といった合併症のリスクがきわめて小さいというメリットがある。同院は今年7月に治療を開始、国内の市販後第1期導入施設であり徳洲会グループで初の導入となる。
「熱損傷がなく合併症がほとんど起こりません」と田邉・院長補佐
前立腺は男性に備わる生殖器のひとつで、膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むようにして存在している。加齢などにより肥大することで、排尿障害や蓄尿障害を引き起こすのが前立腺肥大症。QOL(生活の質)に大きな影響を及ぼす。高齢男性には珍しくない疾患だ。
薬物療法で効果が十分に得られない場合や薬剤の長期服用を避けたい場合に手術を行う。
湘南鎌倉病院の田邉一成・院長補佐兼腎移植・ロボット手術センター長兼泌尿器科統括部長は「前立腺肥大症に対する治療は長らく、内視鏡を用いて経尿道的に電気メスを挿入し、前立腺を削り取ったり(経尿道的前立腺切除術=TURP)、くり抜いたり(経尿道的前立腺核出術=TUEB)する手術療法が主流でしたが、熱によって周辺組織が影響を受け、勃起神経が障害されるなど合併症のリスクがありました。その後、患者さんの身体への負担がより小さい、レーザーを照射して前立腺組織を蒸散する治療法などが登場し普及してきました」と説明。
マッピングにより自動切除を行う「アクアビーム ロボットシステム」(画像提供:プロセプト バイオロボティクス)
続けて「今回当院が導入したアクアビームは熱を発することがないため、前立腺周囲にある勃起神経への影響や射精障害、尿失禁といった合併症のリスクがほとんどないのがメリットです。そのため、比較的若い患者さんにも安心して治療を受けていただくことができます。また、とくにボリュームが大きな前立腺の場合、少しずつ組織を蒸散していくレーザー手術よりも効率良く短時間に、かつ高精度の治療を行うことができます」とアピールする。
アクアビーム治療装置の開発段階には、米国や英国などの17施設で、従来からある手術療法であるTURPを比較対象としたWATER試験(無作為化、多施設共同、比較対象、二重盲検)が実施された。同試験では前立腺肥大症による下部尿路症状を有し、前立腺体積が30~80mlの45〜80歳の男性を対象とし、アクアビーム群116例、TURP群65例が無作為割り付けされ手術を受けた。
その結果、前立腺切除に要した平均切除時間はアクアビーム群が有意に短く、手術後3カ月時点で評価した有害事象発生率や手術に関連した射精障害もアクアビーム群で低かった。また手術後6カ月時点で評価したベースライン(治療開始前の数値)からの平均IPSSスコア(排尿症状の程度を調べるスコア)は、アクアビーム群で16.9点、TURP群で15.1点の減少という結果で、アクアビーム群のほうが改善幅は大きかった。
アクアビームを用いた治療は全身麻酔下に行う。まず、経直腸超音波検査のプローブ(超音波を受発信する探触子)を経直腸的に挿入。次に、先端に噴射用のノズルが付いたハンドピースという棒状の医療機器に、膀胱鏡のスコープをセットし、ハンドピースを経尿道的に挿入し、スコープの位置や超音波画像の調整を行った後、執刀医は膀胱鏡と経直腸的超音波の画像をリアルタイムに確認しながら、コンフォーマルプランニングユニットと呼ばれる装置のモニター画面上に、切除範囲を指定するためのマッピングを行い、治療計画を登録する。
準備が整った後、フットぺダルを踏むと、ロボットが自動で治療計画に沿って生理食塩水を高速噴射し前立腺組織を切除する。1回当たり5分間の噴射を2回繰り返す。執刀医は膀胱鏡画像や超音波画像をモニタリングし、必要に応じて出力の調整を行う。手術に要する時間は全体で1時間ほどだ。
「前立腺のサイズが50ml以上(日本泌尿器科学会などが連名で発表した『適正使用指針』で示された適応対象の条件のひとつ)の場合はアクアビームで治療を行い、それよりも小さい場合はレーザー治療を基本的に行っています。前立線肥大症は早いと40~50代でも発症し、QOL(生活の質)を大きく損なう原因になり得ます。薬剤による症状の改善効果が十分に得られず、お困りの患者さんがおられましたら、ぜひ一度ご相談ください」と田邉・院長補佐は呼びかけている。
なお、同院は前立腺がんと前立腺肥大症の診断・治療を専門に行う“前立腺センター”を設け、最適な医療の提供に尽力。前立腺がんに対しては、手術支援ロボット「ダヴィンチ」をはじめ最新の医療機器を備え、陽子線治療や放射線治療にも力を入れるほか、ホルモン療法、抗がん剤治療を提供。前立腺肥大症に対しても、患者さんの状態や希望をふまえ、アクアビームをはじめ、TURP、経尿道的前立腺レーザー蒸散術、投薬治療など幅広く対応している。