徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2024年(令和6年)11月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1468 4面

読み解く・読み得 紙上医療講演80
再発がんの症状を緩和

日本人の死因で、がん(悪性新生物)は1981年以来、トップとなっています。医療の進歩によって、さまざまな治療法が確立されるなか、再発したがんの症状を、カテーテルを用いて緩和する「がんカテーテル治療」があります。今回は南部徳洲会病院(沖縄県)の平安名常一・副院長兼放射線部統括部長が解説します。

南部徳洲会病院(沖縄県)平安名常一・副院長兼放射線部統括部長がんカテーテル治療の様子

がんは今や日本人の2人に1人が「生涯に一度は罹患する」と言われるほど、身近な病気となっています。がんの治療法は手術、放射線治療、抗がん剤を用いた全身化学療法が“三本柱”で、それぞれの長所・短所を補い生かす形で治療を行います。これが現在では最も有効なことから、がん治療の標準となっています。

がん治療は日進月歩で進化していますが、こうした集学的治療を行っても、がんの再発という問題は、つねに付きまといます。再発した場合、初回時よりも強い痛みや出血、悪臭、通過障害(がんで消化管が狭窄し食べ物などが通りにくくなること)などが生じることがあります。可能であれば、再手術、放射線の再照射、抗がん剤治療を継続しますが、再発がんの治療は初回よりも難しいケースが少なくありません。治療が難しければ、患者さんは症状に苦しみ、生活の質が著しく低下します。

その解決策として選択肢になり得るのが「がんカテーテル治療」です。足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを挿入し、腫瘍を栄養する血管まで進めて治療を行います。治療法はカテーテルの先端から抗がん剤を注入する「動注化学療法」、抗がん剤が使用できない場合は、血管にビーズ状の物質を詰めて血流を遮断する「動脈塞栓術」、双方を用いる「動注化学塞栓術」の3つの方法があります。

ポイントは「動脈」です。がんにとって動脈は重要な栄養補給路。そこに抗がん剤を投与したり、栄養(動脈血)を遮断したりすることで、がんの症状緩和を試みます。カテーテルの開発が進み、現在は細いマイクロカテーテルで末梢の動脈まで抗がん剤を投与することが可能です。

点滴で静脈から抗がん剤を投与する全身化学療法は、抗がん剤が心臓を経由して全身を回るため、血中で濃度が薄まります。そうなることを想定し、あらかじめ多くの量を投与しますが、動注化学療法であればピンポイントで対象病変に投与できるため、投与量が少なくてすむという特徴があります。ただし、やや煩雑な手技が求められることもあり、点滴による全身化学療法に比べ実施施設は限られます。

当院は2021年から、がんカテーテル治療を行っています。これまで乳がん、尿管がん、腎がん、肺がん、口腔がんなどで再発・転移した患者さんに、がんカテーテル治療を行いました。いずれも痛みや出血といった再発がんの症状に苦しみながらも、再手術や再照射などを行うことができず、患者さんが希望されたケースです。

がんカテーテル治療は、がんの根治を目指した治療法ではありません。あくまでも緩和治療です。がんの症状が軽減することで、生活の質が向上するきわめて重要な治療法だと思います。ただし適用は患者さんによって異なるため、医師と相談することが大切です。

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