徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)11月04日 月曜日 徳洲新聞 NO.1465 4面
東京西徳洲会病院は8月8日、文部科学省科学研究費(科研費)助成事業の研究機関に指定された。科研費は文科省が日本学術振興会を通じ、日本国内のあらゆる分野の基礎研究から応用研究まで支援する公的資金の助成制度。研究活動を活発化させ、医療の質の向上や病院機能の拡充につなげるのが狙いだ。徳洲会グループでは5施設目で、民間病院が研究機関の指定を受けるのは珍しい。
「臨床も研究も徳洲会」と(左から)國澤医局長、佐藤・名誉院長、田川・課長補佐
科研費の助成対象は主に大学や国公立の研究機関が行う研究だが、研究機関として文科相から承認を受けることで、民間病院でも科研費へ申請ができる。承認を得るには要件(研究活動を行う体制の整備、経営基盤の安定性の確立、倫理指針の順守など)を満たす必要がある。
申請が通ると、3~5年間で500万円以下(基盤研究C)など助成を得ることができる。研究に関連する物品の購入に加え、要件を満たせば学会参加費や国際学会の渡航費を含む経費にも活用可能。
東京西病院は従来から学術活動を積極的に行っており、病院として予算を確保し、医師をはじめ職員らの研究活動を支援してきた。しかし限度もあり「コストの観点から、やりたくてもためらっていた」(國澤卓之・医局長兼麻酔科部長)研究もあった。こうした状況に佐藤一彦・名誉院長は「実臨床で得た知見を研究に生かすための環境整備を、コスト面からも一層、後押しできるよう研究機関の指定を目指しました」と説明する。
昨年4月、同院は佐藤・名誉院長(当時は院長)や國澤医局長を中心メンバーに、研究機関に求められる要件を達成するため、院内体制の整備に取り組むチームを立ち上げた。
研究機関の指定を受けるには学術活動の実績を有し、適正な運営体制を維持していることが求められるが、同院ではもともと多くの医師が学会発表や論文執筆に積極的に取り組んでいたこともあり、承認を得るハードルは高くなかった。チームメンバーのひとりで、事務手続きなどを一任された田川陽介・経営企画室/ブランド戦略室課長補佐は、「研究者として登録を希望する医師も多く、指定に向けて院内全体で前向きに取り組めました」と振り返る。
科研費の活用により、臨床データを活用した研究活動を積極的に行えるように環境を整備。佐藤・名誉院長は「コストにとらわれることなく、日々の診療で蓄積された知見を新たな治療法の開発につなげ、患者さんに還元することができるようになります」と力を込める。
同院は科研費の活用が医師のスキルアップにもつながると期待を寄せる。たとえば専門医資格の認定・更新に際しては、学術活動が要件となるケースが大半だ。診察を行いながら学術活動を行うためには、研究時間の確保をはじめとした職場環境の整備とともに、研究費用や学会参加費用の支援も欠かせない。科研費で、こうした費用がカバーできるため、これまで以上に多くの学術活動に参加できる。國澤医局長は「医師の専門性向上、質の高い医療の提供、モチベーションアップにつながります」と強調する。
さらに院内の研究活動が活発化すれば、院内全体で学術研究を推進する機運が高まる。それにともない指導医資格をもつ医師が増えることで、研修医らの教育体制の強化にも寄与する。
また、同院は「臨床と研究の両立が可能な病院」としての魅力を打ち出し、医師の採用強化にもつなげていく考えだ。佐藤・名誉院長は「大学をはじめとした教育機関とは異なり、臨床の現場で働きながら研究できるのが当院の特色です」とアピール。目下、日々の診療と学術活動を両立しやすい、柔軟な勤務体制の構築にも取り組んでいる。
一方、科研費の助成により、院内予算に余裕ができれば、そのぶんは科研費の対象とならない分野の研究、院内の環境整備にも活用できる。田川・課長補佐は「科研費の対象研究と直接かかわらない各種備品の購入などに院内予算を割り当てることで、病院の機能拡充や科研費の対象外の疾患をもつ患者さんにも貢献できます」と指摘する。
同院では現在、来年度の交付に向けて4つの研究課題を申請中。「病院として研究課題を特定の分野に限定していない」(佐藤・名誉院長)ため、今後は看護師やメディカルスタッフの研究者登録も進め、多様な研究を展開していく構え。佐藤・名誉院長は「徳洲会グループの多くの病院は積極的に学会に参加しています。当院同様、研究機関の指定を目指せる病院は少なくないはず」と強調し、「徳洲会は臨床も研究も活発であることを示していきましょう」と呼びかける。