徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)10月21日 月曜日 徳洲新聞 NO.1463 1面
医療法人徳洲会(医徳)は9月14日から2日間、湘南国際村センター(神奈川県)で「第2回徳洲会国際心臓血管セミナーin葉山」を開催した。医徳が心臓血管治療に関する国際セミナーを主催するのは、昨年に続き2回目。現地に延べ284人が参集、WEBでは延べ570人がライブ視聴した。セミナーでは日本、米国、中国、インドネシアから集まった心臓血管治療に携わる医師らが38演題を発表(うち徳洲会グループ25演題)、会場は熱気にあふれていた。
「手術結果に妥協はしない」と浅井・統括部長
セミナーのメインテーマは「Valvular Heart Disease and Cardiac Arrhythmia」(心臓弁膜症と不整脈)。主催者は東上震一理事長、実行委員長は大橋壯樹・副理事長(名古屋徳洲会総合病院総長)、セミナー会長は浅井徹・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)心臓血管外科統括部長兼病院長補佐。
「大いに議論してほしい」と東上理事長
今回、新たに企画委員長を新田隆・医徳心臓血管外科顧問(羽生総合病院循環器統括顧問)、名誉会長を齋藤滋・湘南鎌倉病院心臓センター長と三角和雄・医徳専務理事(千葉西総合病院院長)が務めた。
東上理事長は開会挨拶で、徳洲会の歴史や心臓血管治療の成績を披露するとともに、7月10日に逝去した徳洲会創設者の徳田虎雄・名誉理事長の功績も振り返った。「本セミナーは、国境を超えた多くの医師と議論を交わせる場です。積極的にコミュニケーションを取り、心臓血管治療への理解を深めてください」と呼びかけた。
「循環器内科医師の協力が不可欠」と新田顧問
セミナーは徳洲会プレセッションからスタート。徳洲会病院の医師12人が登壇し、自院で行っている心臓血管領域の治療の概要や特徴、手術成績を紹介した。
離島での循環器診療やインドネシアでの診療経験など、離島・へき地医療、国際医療協力に尽力する徳洲会らしさを感じさせる発表もあった。
「これからも心臓血管領域に貢献」と大橋・副理事長
セッション1「僧帽弁疾患」では、僧帽弁の画像診断のポイント提示、手術支援ロボットや内視鏡を用いた治療方法や課題などを解説。手術支援ロボットについて、低侵襲な治療であり、在院期間が短くすみ、患者さんにとってメリットが大きいことに加え、さまざまな症例に対応できるため、医師の教育に効果的であるという意見も出た。
続いて浅井・統括部長は「最高水準、低侵襲の弁膜症治療を目指して」をテーマに会長講演を行った。心臓血管外科で低侵襲心臓手術(MICS)の流れは避けられない状況にあることを提示、MICSの様子を動画で示しながら解説した。「MICSは難しい手術であり、私自身も大変苦労しています。しかし、難しい手技だからといって、手術の結果に妥協してはいけません。患者さんに良い治療を提供するために研鑽しましょう」と呼びかけた。
セッション2「大動脈弁疾患」では、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)、手術支援ロボットを用いたAVR(大動脈弁置換術)、MICS-AVRをはじめとした大動脈弁疾患に対する多様な治療法の有用性や活用方法を提示。また米国や中国の大動脈弁治療の現況や今後の見とおしについて、俯瞰的な視点からの発表もあった。
2日目はセッション3「心房細動」からスタート。不整脈の根治療法を目的に行うカテーテルアブレーション(心臓の中に電極カテーテルを運び、異常部位を高周波電流で焼灼する治療法)に言及した発表では、「手術支援ロボットをカテーテルアブレーションと一緒に用いることで、より精緻な治療が可能になる。セミナーに参加している皆さんにも、挑戦してほしい」と呼びかけるひと幕もあった。
セッション4は「難治性心室性不整脈の治療」がテーマ。器質的心疾患に対するカテーテルアブレーションの有用性、プルキンエ繊維に関連した不整脈の機序などについて発表。
このうち新田顧問は「難治性心室頻拍(VT)の外科治療」をテーマに登壇した。カテーテルアブレーションやICD(植え込み型除細動器)では救命できない致死的VTの患者さんの場合、外科的治療が有効であることを示唆。
その一方で、VTの原因を突き止めるため、マッピング(電極カテーテルの位置を3次元的にコンピュータ上に表現する手法)を術前や術中に同時に行うことが重要であると強調。「外科医師だけでは的確な手術はできず、マッピングを行える循環器内科医師に協力いただくことで、良好な手術成績が得られます」とまとめた。
スペシャルセッションでは齋藤センター長がビデオ講義を行った。
閉会の挨拶で大橋・副理事長が、国内外問わず、多くの人が参加、視聴したことに謝辞を述べるとともに、「徳洲会は今後も心臓血管領域の発展に寄与し続けます」と誓った。
質疑応答が活発に交わされる会場
2日間を振り返り、浅井・統括部長はプログラム作成に加え、座長やコメンテーターとして多くの徳洲会病院の医師らが協力したことで、充実したセミナーになったと謝意を示した。そのうえで「心臓血管領域において外科と内科ではアプローチが異なり、従来、異なる診療科の医師が一堂に会して議論する機会は少ないです。当セミナーでは診療科を越え、多くの医師が集まり、積極的にディスカッションが交わされ、予想以上の盛り上がりを見せました」と満足気に振り返った。
ウェルカムパーティーで親交を深める
会場では発表が終わるたびに、質疑応答も活発に行われた。「次回のセミナーでは研修医の先生にも発表してもらいたい」、「心臓外科の先生も、ぜひ循環器内科の治療法を学んでほしい」といった声も多数上がっていた。さらにインドネシアやコンゴ民主共和国からのWEB 参加者もあり、徳洲会がこれまで行ってきた国際医療協力の成果も示された。
懇親会会場では葉山御前太鼓の演奏を披露
開催前日の13日にウェルカムパーティー、14日の夜に懇親会を開催するなど、参加者が交流を深める場も用意した。懇親会では奄美民謡や会場のある葉山町を拠点に活動する葉山御前太鼓保存会による演奏が披露され、会場を盛り上げた。