徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)09月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1458 3面
全国にある心臓カテーテル検査・治療の実施施設が注目した厚生労働省通知がある。「『現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について』等に関するQ&Aについて」がそれだ。心カテ現場でカテーテルやガイドワイヤーの保持など医師の補助行為の実施を、臨床工学技士(CE)と臨床検査技師にも明確に認めた通知文書だ。日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)など、関連学会による熱心な要望活動によって実現した。CVITのタスクシフト・シェア検討ワーキンググループ(WG)委員長として貢献したのが、湘南大磯病院(神奈川県)の髙橋佐枝子副院長(循環器内科)だ。「患者さんのため、日本のカテ医療のために貢献できたのはうれしい」と胸をなでおろしている。
第32回CVIT学術集会のタスク・シフト/シェアに関する委員会企画で口演する髙橋副院長
以前からCEや臨床検査技師は医師の負担軽減のため、チーム医療の一環で、カテ室で医師の補助業務として、カテーテルやガイドワイヤーの準備、医師に手渡しする行為、保持する行為、医師が体内から抜去したカテーテルやガイドワイヤーなどを清潔トレイ内に、安全に格納する行為などに取り組んできた。
ところが、タスク・シフト/シェアを推進するため、2021年9月に出された厚生労働省通知では、「こうした“血管造影・画像下治療の介助”に関して、看護師と診療放射線技師に対しては医師からのタスク・シフト/シェアが可能な業務の具体例として示されましたが、CEや臨床検査技師による可能な業務として明記されませんでした」と髙橋副院長は振り返る。
その結果、「これはグレーゾーンであり、実施してはいけないのではないか」と危惧を抱く風潮が出てきたという。「タスク・シフト/シェアの逆行につながることで、現場が困る事態となり、とくにマンパワーが不足しがちな地方では一大事でした。患者さんへの不利益にもなる恐れがありました。そこで、CVITは他の関連学会と連携し22年3月に要望書を国へ提出しました」(髙橋副院長)。
要望書を出すにあたって実施した実態調査(400施設から回答)では「冠動脈インターベンション(PCI)の清潔野の助手は、どの職種が行っていますか?」という質問に対し、医師(80.8%)に続いて多かったのが、37.3%にも上ったCEで、臨床検査技師は2.5%と割合は少ないが、一定数いることが、あらためて浮き彫りとなった。
CVITが同要望書を提出した後の22年9月、髙橋副院長はWGメンバーとなり委員長に就いた。要望を叶えるため、根拠の強度を高めることを目的に、CVITは23年夏に新たな実態調査を他学会と共同で実施。
「調査の結果、医師や診療科の地域偏在、医師の働き方改革などにより、循環器救急診療体制の維持が危うくなる可能性のあることがわかりました。緊急カテを行う体制を維持できなくなる施設を減らすためにも、CEと臨床検査技師への明確なタスク・シフト/シェアは悲願でした。徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の田代篤史先生(副院長兼循環器内科部長)もWGメンバーの一員として、離島のカテ現場の声を伝えたり働きかけをしたりと、尽力していただきました」(髙橋副院長)
粘り強い要望活動が功を奏し、今年6月、血管造影・画像下治療に関して両職種が医師の補助行為を行うことを認める内容を明文化した通知が、発出されたという次第だ。
さらに今後は、科学研究費助成事業として実施中の「臨床検査技師・臨床工学技士・診療放射線技師のタスク・シフティング/タスク・シェアリングの安全性と有効性評価」をテーマとする研究に、CVIT理事でもある髙橋副院長が研究分担者として参画し、より良いタスク・シフト/シェアの形成に貢献していく計画だ。