徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2024年(令和6年)09月02日 月曜日 徳洲新聞 NO.1456 1面

ロータブレーター治療開始
国内の離島病院では初めて
田代・徳之島徳洲会病院副院長が実施

徳之島徳洲会病院(鹿児島県)はロータブレーター治療を開始した。コレステロールなどが沈着して石灰化し、狭く硬くなった冠動脈に対して行うカテーテル治療のひとつ。専用カテーテルの先端にあるダイヤモンドコーティングされた金属部分が高速回転し、血管内の石灰部分を切削する。実施には施設基準を満たさなければならず、同院は昨年、国内の離島にある病院で初めてクリアした(医療機器メーカー調べ)。今年7月に1例目を手がけ、これまで5例を実施。すべて患者さんの経過は順調だ。

初症例を無事に終え喜ぶスタッフ(左から3人目が田代副院長、同6人目が神田助教)神田助教(右)のアドバイスを受けながら治療を手がける田代副院長(その手前)ロータブレーター。先端の金属部分の半分が人工ダイヤモンドでコーティング。術者が本体を手元に置き操作ロータブレーター治療のイメージ

冠動脈は心臓の筋肉(心筋)に血液を送る血管。心臓の表面に沿って形成され、酸素や栄養などを届けることで、心臓が正常に動く。しかし、さまざまな理由で血管の内側が傷つくと、血液中のコレステロールやカルシウムなどが沈着し、血管が狭くなったり硬くなったりする。この状態を動脈硬化といい、進行すると心筋梗塞や狭心症などを引き起こしやすい。

治療法は大きく3つに分けられ、そのひとつがPCI(経皮的冠動脈形成術)。カテーテルを用いる治療法の総称で、病変部分にバルーン(風船)やステント(メッシュ状の金属製の筒)などを運び血管を内側から押し広げ、血流を改善する。

ロータブレーター治療もPCIのひとつ。石灰化した病変は非常に硬く、バルーンやステントなどが病変部に運べないケースや病変部で広がらないほど硬いケースで行う。具体的には、人工ダイヤモンドが先端から半分ほどコーティングされた楕円状の金属が先端に備わった専用カテーテルを挿入し、圧縮窒素ガスで金属部分を1分間に14万~19万回転させ硬い石灰化した病変を削る。

物理学を生かした「ディファレンシャル・カッティング」という技術により、原則、先端のコーティングされた金属部分は硬い物だけを削り、柔らかい物は削れないのが特徴。基本的に切削片(削られた病変)は赤血球以下の大きさで末梢に流れ、最終的に体外に排出されるが、合併症として切削片が血管末梢で塞栓するリスクもゼロではない。また、薬剤に対するアレルギーがある患者さんなど、同治療が受けられないケースもある。

最終的に同治療後はバルーン、薬剤溶出性ステント(DES)や薬剤溶出性バルーン(DCB)などを用いて血管を治療する。

徳之島病院は田代篤史・副院長兼循環器内科部長を中心とする心臓血管カテーテルチームが研修を受けたり治療に関する環境を整えたりし、23年に離島の病院では国内で初めて施設基準をクリアした。

島民の方々の負担を軽減

デモンストレーションを行った時の透視画像。円の中心に石灰化された疑似病変を留置しており、実際の手技と同様に石灰を切削する

その後も島外の認定施設で研修を受けるなど研鑽。今年7月1日にデモ機を使ったシミュレーションを行い、作業を一つひとつ確認したうえで、翌2日午前中に1例目を実施した。同治療の経験が豊富な鹿児島大学病院の神田大輔・医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学助教兼診療講師が前日から立ち合い、適宜、指導した。

「通常、手技そのものは1時間程度」(田代副院長)だが、初症例ということもあって慎重を期し3時間かけ終了。昼食時にカンファレンスを行い、1例目を振り返り、同日、午後にもう1例実施した。

田代副院長は「力加減が難しかったです。強く押し込んでしまうと血管を傷つけてしまうような命にかかわる合併症につながりかねませんし、あまり弱くても、うまく削れず時間がかかってしまいます。オペレーターの手技の丁寧さが顕著に出る治療だと実感しました。また、心拍で動いたりするので、やはりデモ機とは全然違います」と強調。「今までだったら太刀打ちできなかったケースがきれいに治療でき、とても有用な武器を手に入れた感覚です」と喜びを露わにした。

治療後、止血するためにカテーテルの挿入部分に手を当てながら、患者さんに優しく話しかける田代副院長

その後も同院は症例を重ね、現在5例を実施。いずれも患者さんの経過は順調だ。

田代副院長は「従来の方法では治療を完遂できない患者さんが、島には意外と多いのです。これまでは船や飛行機で鹿児島本土に行くしかなく、申し訳ない思いでした」と吐露。「これからは島内で治療できます。この治療に限らず、今後も島の医療のために努力します」と意気軒高だ。

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