徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)06月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1443 1面
岸和田徳洲会病院(大阪府)は5月13日、大阪市内で「THE K2 SUMMIT 01」を初開催した。大阪警察病院との勉強会で、医療法人徳洲会(医徳)の東上震一理事長と大阪警察病院の澤芳樹院長の発案で実現した。当日は両院の心臓血管外科と循環器内科の医師が参加。末梢血管インターベンション(下肢動脈疾患の治療方法)をメインテーマに、自院の取り組み、治療やデバイスに関する最新トピックスなどについて発表した。今後も共同治験など連携・交流に意欲を見せた。
初開催を終え笑顔の東上理事長(前列中央)と澤院長(その左) 座長として会を盛り上げる畔栁院長と倉谷部長
会は、岸和田病院の藤原昌彦・循環器内科部長と大阪警察病院の飯田修・循環器内科部長兼血管内治療センター心血管治療部(内科)センター長が主にマネジメント。昨年、両者に加え、東上理事長、大橋壯樹・医徳副理事長、澤院長、大阪警察病院の倉谷徹・心臓血管外科部長の6人が会合したことがきっかけとなった。藤原部長は「会合の席で、“両院の良いところを補完する形での勉強会を開き、コミュニケーションを図りましょう”という話になり、私と飯田先生が準備を進めることになりました」と経緯を語る。
イベントの名称は藤原部長が考案。「“岸和田と警察のK”以外に、K2というエベレストに次ぎ世界で2番目に高い山があり、“高い山(目標)が2つ”」という意味も込めた。プログラムは、互いの専門分野でもある末梢血管インターベンションをメインテーマに設定。岸和田病院の畔栁智司院長と大阪警察病院の倉谷部長が座長、東上理事長、澤院長、西村好晴・和歌山県立医科大学心臓血管外科教授・科長兼附属病院長、鈴木友彰・滋賀医科大学心臓血管外科教授兼診療科長が討論者を務め、各演者らと意見を交わした。
当日は澤院長の挨拶でスタート、あらためて開催に至った背景を説明した。「じつは5年ほど前、まだ東上先生は岸和田病院、私は大阪大学にいた時に一度、勉強会を開いたことがありました。非常に好評で、東上先生と『次もやろう』と言っていたのですが、時が経ってしまい、その間に東上先生は徳洲会理事長に就任され、私は阪大教授を退官して大阪警察病院に着任。やはり徳洲会とのつながりは大事と考え、コミュニケーションを図りながら技術の交流が行える場を設けたいと思いました。最後まで盛り上がりましょう」と呼びかけた。
「さらに発展させたいと強く思いました」と藤原部長
その後、両院の医師が発表を行い、メインの「Hot Topics」では、藤原部長が下肢動脈(大動脈腸骨動脈、大腿膝窩動脈)のEVT(末梢血管治療)について俯瞰的に解説。歴史や、トピックスとして最新のデバイスや治療法などを説明した。
自院の取り組みにも触れ、特徴のひとつに2018年に開始したフットケアチームを紹介。血行再建医(循環器科医)や創傷管理医(皮膚科医師、形成外科医師)、看護師、CE(臨床工学技士)、リハビリテーションセラピストなど“多科相乗り”で週1回の回診、月2回のカンファレンスを行い、近隣の医療機関から多くの患者さんを紹介してもらうなど、「うまくいっています」と強調した。将来展望にもふれ、CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)が社会問題化する可能性を示唆。高齢者の場合、「どこまでの治療を行うかが、今後の私たちの課題です」と指摘した。
飯田部長は、膝下動脈の問題と将来の動向・最新デバイスについて発表。自院での取り組みも示した。
「Case Sha-ring」では、岸和田病院の竹本哲志・心臓血管外科医師が「EVAR(腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術)後に開腹手術を要した症例の短期・中期成績」をテーマに発表した。
自院で08年1月~23年12月にEVARを行った1,175例のうち、開腹手術になったのは19例(1.6%)。開腹手術になった方が最初にEVARを受けた平均年齢は69歳で、開腹手術に至るまでの期間は平均54.8カ月だったことから、竹本医師は「EVARの実施は60代ではなく70代後半ぐらいで良いのではないでしょうか」と指摘した。
発表を終えた竹本医師は「非常に緊張しました」と吐露。「外科医師の私にとって内科領域のカテーテルの話などは知らないことが多々あり、藤原先生や飯田先生の発表は大変興味深かったです」と振り返った。
大阪警察病院の大賀勇輝・心臓血管外科副医長は、血管内超音波検査(IVUS)を活用し、造影剤を使わずにEVARを完成した1例を提示した。
最後に東上理事長が挨拶。「澤先生と私から始まり、藤原先生と飯田先生が引き継いでくれて、こうして皆が集まって研鑽できる良い形にしてくれました。複数の組織が力を合わせて、外へ向けて、いろいろなものを発信してほしいと思います。ぜひ、この会が続いていくように盛り上げていってください」とエールを送った。
無事に閉会し、藤原部長は「世界最先端の治療と世界を巻き込むムーブメントを起こせる2病院であり、東上理事長、澤院長の助言の下、ますます発展させたいと強く思いました」と、意気込んでいた。