
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)05月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1442 4面
自然災害などによる被災地では、長期に及ぶ避難生活で避難した方の心身機能が低下する「生活不活発病」が深刻な課題となっています。とくに高齢者に多く、状態が改善しないと死に至る可能性も指摘されています。NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)隊員として令和6年能登半島地震の被災地に赴き、避難所で生活不活発病の予防に取り組んだ福岡徳洲会病院の泉弦輝リハビリテーション科副主任(理学療法士)が、避難生活中でも運動する重要性について解説します。
泉弦輝・福岡徳洲会病院リハビリテーション科副主任
避難所で簡単な体操を促すTMAT隊員
生活不活発病は災害を契機に動かない(生活が不活発な)状態が続き、ADL(日常生活動作)、認知機能などが低下する疾患です。
被災して避難所での生活を余儀なくされると、家事や外出など体を動かす機会が減少します。また、手すりが少なく、床で寝起きするような環境も多いことから、高齢者をはじめ歩行や立ち座りに不安がある方は、さらに身体活動が減少しやすくなります。
身体活動の減少は筋肉の拘縮や筋力低下を招き、たとえば転倒して寝たきりとなり免疫力が低下、肺炎を発症して最悪、命を落とすこともあります。うつ傾向や知的活動の低下を引き起こすことも指摘されています。精神的な面に影響が出ることで、身体活動の減少をさらに招く悪循環になることもあります。
今回の能登半島地震でも、以前は自力歩行できていた方が、避難所生活を送るなかで歩行機能が低下し、車いすが必要になるといったケースがありました。
生活不活発病を予防するには、避難生活中でも体を動かすことが大切です。起き上がった時のめまいや立ちくらみを“被災による疲れ”と捉え、寝た状態を保ちがちですが、それは生活不活発病の症状のひとつ。日中はベッド上で体を起こしたり、いすや車いすに座ったりして、座位を保つようにしましょう。できれば座った状態でかかとを上下に動かし、むくみの予防や全身の血流改善に努めます。立ち座りを繰り返す運動も足の大きな筋肉が動き、全身運動になるため効果的です。
また、目的意識をもって行動することも重要です。「体操後に、おしゃべりを楽しむ」など、目的を設定することで意欲が湧き、体を動かす機会も増える好循環につながります。おしゃべりなどは人との交流につながり、社会参加の機会にもなるため、積極的に人と会う場所に行くことが望ましいです。
災害は、いつ襲ってくるかわからず、日頃の備えが重要です。避難する時は非常用持ち出し袋とともに、ふだん履き慣れている靴や杖も、できるだけ携帯するようにしましょう。能登半島地震では、背負われたり車に乗ったりして避難してきた高齢者の方のなかには、杖や靴を持参できておらず、避難所での移動に苦労しているケースがありました。
携帯できなかった場合は、避難先にいる医療専門職に相談してください。支援物資として手配できることもあります。災害時だからと我慢するのではなく、被災前と変わらぬ心身機能を維持するための生活環境を整えることも大切です。