
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)04月30日 火曜日 徳洲新聞 NO.1438 4面
「健康的に生きるために必要な栄養素の量が不足している状態」を低栄養と呼びます。低栄養が続くと、治療効果の低下や合併症のリスクを増加させ、結果として健康状態に悪影響を与えかねません。そのため正しく低栄養を診断し、適切に栄養管理を行うことが重要です。今回は岸和田徳洲会病院(大阪府)の村山敦・歯科口腔外科副部長が、低栄養の診断について解説します。
村山敦・岸和田徳洲会病院(大阪府)歯科口腔外科副部長

低栄養を正しく診断する必要性については、議論の余地はありませんが、これまで低栄養を診断するための国際的に統一された基準や方法はありませんでした。
一般的に、栄養不良の有無は栄養スクリーニング(ふるい分け)で栄養学的リスクがある、あるいはその疑いがある患者さんを抽出、栄養アセスメント(評価)で詳細な栄養状態を判定するという流れになります。それぞれ、いろいろな指標をまとめたツールを用いて行いますが、きちんと信頼性が検証されたものもあれば、ひとつでは十分でないとされているものもあるなど、ツールの質にばらつきがありました。
他にも国や地域によって重視する指標が体重減少、BMI(体格指数)、栄養摂取状況など異なる、そもそもスクリーニングとアセスメントの区別が曖昧といった課題もあり、これらが低栄養に関する国際的な研究に支障をきたし、結果的に、より効果的な低栄養治療の開発・提供を進みにくくさせている側面がありました。
こうした課題を解決するために、日本栄養治療学会をはじめ世界の栄養関連学会が低栄養の国際的診断基準を目指して2018年に共同で提唱したのが「GLIM基準」(Global Leadership Initiative on Malnutrition)です。GLIM基準では、第1段階として検証済みの既存の栄養スクリーニングツールで低栄養リスクの有無を判定します。第1段階で低栄養リスクありと判定された場合は、第2段階の診断的アセスメントとして「表現型基準」(意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少)と、「病因基準」(食事摂取量減少/消化吸収能低下、疾患負荷/炎症)のふたつの基準を用い、それぞれ1項目以上該当すると低栄養と診断されます。その後、細分化された表現型基準で、より高度な基準値をひとつでも超えたら重度低栄養、超える項目がなければ中等度低栄養と診断されます。
特徴的なのは、表現型基準に従来のツールでは評価項目に入っていることが少ない「筋肉量の減少」が盛り込まれていることです。筋肉を構成し体を維持するのに必要な栄養素であるタンパク質の減少が評価でき、低栄養と診断する根拠になります。また、低栄養の要因に考慮している点も特徴のひとつ。低栄養は、食物摂取不足による場合と、がんや外傷、その他疾患にともなう炎症などに起因している場合があり、何が原因かを見極めやすくなっています。
現在、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類に低栄養を病名として収載する動きがあり、収載された場合、GLIM基準が診断基準になります。“世界の共通言語”ができることで、より適切な低栄養の診断、治療や栄養管理が可能になることが期待されています。