徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2024年(令和6年)04月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1435 1面

宇治徳洲会病院
京都府から「高度救命救急センター」に指定
民間病院では全国2施設目・徳洲会グループで初めて

宇治徳洲会病院(京都府)は4月1日、京都府から高度救命救急センターの指定を受けた。とくに高度な診療機能をもち、通常の救命救急センターでは対応が困難な傷病の診療を担うのが高度救命救急センターだ。同府が同センターの指定を行うのは初。全国で47医療機関が指定を受けている(2023年12月時点)。ほぼ大学病院や県立病院など公立病院が占めており、民間病院では宇治病院が2施設目。徳洲会グループで初めて。同府南部の基幹病院として同院は救急・急性期医療に注力する一方、回復期・慢性期・在宅まで切れ目のない医療・介護提供体制の構築を進めるとともに、次はドクターヘリの基地病院を目指す。

次は“ドクターヘリの基地病院”を目指す

「病院の診療機能を計画的に高めてきました」と末吉院長

救命救急センターは複数の診療科領域にわたって、高度な専門医療を必要とする重篤・重症の救急患者さんを24時間体制で受け入れる三次救急の医療機関をいう。そのなかでも、とくに高度な診療機能を有し、通常の救命救急センターでは対応困難な外傷や疾患(広範囲熱傷、四肢切断、急性中毒など特殊疾患)などの診療を担うのが高度救命救急センターだ。

宇治病院は2012年3月に徳洲会第1号の救命救急センターに指定。近畿地方で民間病院として初のことだった。徳洲会ではその後、岸和田徳洲会病院(12年12月、大阪府)と湘南鎌倉総合病院(13年4月、神奈川県)が指定を受けた。

救急搬送と重篤症例 受け入れ京都府最多

ハイブリッドERは隣室との扉を開けER内にCT装置を引き込むことが可能 毒薬物の分析に力を発揮する「QTRAP4500システム」

宇治病院は12年以降も救急医療やがん医療、災害医療など幅広い領域にわたり、京都府南部の基幹病院として地域医療の向上に尽力し、地域医療支援病院や地域災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けてきた。

末吉敦院長は「当院の整備方針は、地域で発生する急性期のすべての医療需要に応え、生命を安心して預けられる病院となることです。こうした方針を、より行政に認められた形で達成するために、各種指定の取得に計画的に取り組んでいます」と説明する。

同院が高度救命救急センターの指定を受けた要因として、積極的に救急搬送を受け入れ、多くの重篤患者さんの診療を担い、地域に多大な貢献を行ってきたことがある。22年の1年間で、1万95人の救急搬送を受け入れ、そのうち2割以上に相当する2,088人は重篤症例だった。それぞれ同府内で最多の実績だ。

重篤症例は重症急性冠症候群、重症大動脈疾患、重症脳血管疾患、重症外傷、四肢切断、重症熱傷、重症急性中毒などを含む。手薄になりがちな夜間でも約20人に上る医師が院内に控えるなど、手厚い診療体制を敷くことで、高度な救急医療を24時間365日支えている。

ハイブリッドERなど 計画的に診療機能向上

「高度救命救急センターを目指すため、当院は熱傷ユニットやハイブリッドER(救急外来)、四肢接合センターの開設など、計画的・段階的に診療機能の向上に取り組んできました」と末吉院長は振り返る。

熱傷ユニットは重症熱傷の集中治療を行う設備で、熱傷治療室や熱傷用空気流動ベッド、シャワー室などで構成。13年6月に導入した。同ベッドは浴槽のような形をしたタンク内部に、粒状の微小な特殊セラミックビーズが入っているのが特徴。その上を覆うフィルターシーツは血液や汗、尿などの体液を透過する。ベッドの下から上方向に空気の力でビーズを流動させ、身体が水に浮いているような状況をつくり、皮膚の圧迫を和らげる。

ハイブリッドERは19年12月に導入。ERの初療スペースの一角が、天吊り式の血管造影装置を配備した個室となっており、必要に応じて隣室との境にある扉を開けてCT(コンピュータ断層撮影装置)を室内にスライド移動できる。ERに搬送後、検査ごとに患者さんの移動が必要なく、治療台に寝たまま血管造影やCT検査が可能。迅速な診断・治療が可能となり、一刻を争う救急患者さんの救命率向上が期待される。京都府内で初、全国でも12番目の導入施設となった。

また、四肢接合センターを20年10月に開設し、切断指や切断肢、血管、神経、腱損傷、開放骨折、軟部組織損傷など重篤な四肢外傷に対し、マイクロサージャリー(顕微鏡を使った手術)を主とした治療を行い、早期再建、患者さんの社会復帰を目指す。

21年には毒薬物の分析に威力を発揮する「QTRAP4500システム」を導入。血液や尿に含まれる1,375種類もの毒薬物の検査が可能だ。病棟再編も行いICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)、救急病棟の増床を図った。

地域包括ケアシステム 整備も並行し進行着々

同院は急性期病院としての発展を目指すとともに、地域包括ケアシステムの構築も並行して進めている。

すでに在宅クリニックや介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、複数の訪問看護ステーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を整備済み。4月には看護小規模多機能型居宅介護を新たに開始するなど、地域包括ケアシステムの構築を着々と進めている。さらに将来的には同院の隣に、宇治徳洲会リハビリテーション病院を開設する計画もある。

高度救命救急センターとともに、末吉院長が目標に掲げてきたのが、ドクターヘリの基地病院になることだ。京都府はドクターヘリを単独運用していない唯一の都道府県であり、現在は、同府を含む関西広域連合が事業主体となっている京滋ドクターヘリ(基地病院:滋賀県内)や豊岡ドクターヘリ(同:兵庫県内)などが頼り。

末吉院長は「京都府は南北に長い特徴があり、とくに災害時には陸路での搬送では時間がかかり過ぎ、助かる命も助からなくなってしまいます。府内に基地病院を置き、迅速な対応が可能となる京都府単独のドクターヘリの導入には大きな意義があると考えます。当院は屋上に管制室付きのヘリポートを有し、脳や心臓の重症疾患、外傷・熱傷、四肢接合、中毒など幅広い診療機能を有しますので、今後、基地病院となることを目指します」と抱負を語る。

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