徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)04月01日 月曜日 徳洲新聞 NO.1434 4面
「地域全体の医療レベル向上に寄与します」と丸山センター長
出雲徳洲会病院(島根県)内に設置した徳洲会山陰病理診断研究センター(T-SAP)は、グループ外の医療施設から病理診断(組織診、細胞診)を積極的に受け入れ、地域医療の質向上に貢献している。
徳洲会病理部会はT-SAPを含め全国に5センターを展開、主にグループ病院の病理診断を地域内で集約し、質的・量的向上を目指している。このうちT-SAPは、グループ内に限らず、グループ外の病理医のいない医療施設との病病連携・病診連携も推進する目的で開設した。
背景には、日本病理学会が厚生労働省に提示した疑義照会がある。同学会は「病理学的所見を客観的に記述する行為(たとえば異型細胞が多い、好中球浸潤が多いなど)は医行為に該当せず」としたうえで、「医学的判断を伴う罹患の可能性の提示や診断(病理学的診断)を行う行為は(中略)病院または診療所において、医師が実施する必要がある」と疑義照会し、厚労省は「貴見のとおり」と回答。
T-SAPの丸山理留敬センター長は「病理医のいない医療施設の病理診断は、検査会社に依頼するしかありません。この場合、病理医による病理診断がないまま、がん治療が行われることになり、診断の責任は臨床医になります」と指摘。「当院が立地する地域では、病病連携・病診連携による病理診断は進んでいなかったので、T-SAPを開設する際にグループ外の病理診断も受け入れることを想定しました」。
検査会社では報告書の提出に1週間以上かかるケースが多いが、T-SAPでは2~4日で対応可能。現在、T-SAPではグループの宇和島徳洲会病院(愛媛県)と高砂西部病院(兵庫県)に加え、グループ外の8施設の病院・診療所から病理診断を受け入れている。業務量は年々増加し、2023年は組織診が2,913件(うちグループ外が655件)、細胞診が1,390件(うちグループ外が40件)。4月からは、グループ外から新たに3施設が加わり、今年は組織診が5,000件を超える見込みだ。これにともない4月から常勤の病理医が1人増える。また今後は、院内外で病理解剖やCPC(臨床病理検討会)にも力を入れていく。
臨床検査技師のスキルアップにも注力。院内では学会で活躍中の外部講師を招き勉強会を実施、同部会ではeラーニングやグループ横断的な研修を開くなど研鑽の機会を増やしている。
丸山センター長は「病病連携・病診連携の推進は、地域全体の医療レベル(診断レベル)向上に寄与すると考えます。同時に、病理医の役割が明確になり、社会的地位の向上にもつながれば良いと思います。病理医自身も、医療チームの一員としての自覚をもち、臨床医や多職種との連携を深めていかなくてはなりません」と課題を示す。