徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)04月01日 月曜日 徳洲新聞 NO.1434 4面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は子宮筋腫や子宮腺筋症などに対する子宮摘出手術で、V-NOTESを導入した。お腹に傷を付けず、膣からアプローチする腹腔鏡下手術。低侵襲で術後の痛みが軽くなるため、早期の社会復帰が可能となる。徳洲会グループでは吹田徳洲会病院(大阪府)と神戸徳洲会病院でも実施。
「患者さんのニーズに応えていきたい」と福田部長
子宮筋腫や子宮腺筋症など良性の子宮疾患に対し子宮摘出を行う場合、以前はお腹を10cmほど切開する開腹手術が行われていたが、近年では腹腔鏡下手術が一般的になっている。同手術は臍部(へそ)や下腹部に3~4カ所の孔を開け、内視鏡や鉗子などを挿入し、映し出された画像を見ながら手術を行う。開腹手術に比べ傷が小さく、術後の痛みも少ないため、入院期間が短く、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いることで、より安全かつ正確に手術を行うことが可能だ。
V-NOTESによる子宮摘出手術の様子 膣から腹腔鏡のカメラや鉗子などを挿入、摘出した組織(子宮や卵巣)も膣から取り出す
膣から、子宮を目視できる部分まで引き出して行う膣式子宮摘出手術もある。お腹に傷を付けずに手術できるのがメリットだが、視野が狭いこともあり難易度が高い。子宮の大きさや可動性の不良、子宮と周囲の臓器に強い癒着がある場合などには、対応できないケースもある。
一方、V-NOTESは腹腔鏡下手術と膣式子宮摘出手術のハイブリッド式手術と言えるもので、お腹に傷を付けず、膣からアプローチする腹腔鏡下手術だ。2020年に保険適用され、湘南鎌倉病院では23年9月に1例目を行った。実施するための施設要件などはなく、医療機器メーカーによるハンズオントレーニングがある。
福田貴則・産婦人科部長は「お腹に傷が付かず、美容的に優れているのがメリットだと考えます。また、内視鏡で視野を確保できるので、膣式と比べて、より正確に手術を進めることができます。神奈川県では当院を含め10施設が実施していますが、湘南地域で行っているのは当院のみです」。
V-NOTESは専用のリトラクター(開創器)を使って行う。まず膣から膣腔内にリトラクターを装着し、リトラクターに沿わせてカメラと鉗子など手術器具を挿入、助手がカメラを保持し、術者が鉗子などを操作して手術を行う。「膣式の手術に慣れていないと、リトラクターの装着に手間がかかるかもしれず、無理に装着しようとして、膀胱損傷など合併症を引き起こさないように注意しなければなりません」(福田部長)と指摘。
適応外となる症例もある。重症(巨大腫瘍)や周囲の臓器と強い癒着がある場合、性交未経験者や妊娠中の方、膣が狭い、もしくは子宮が大きい方などには実施できない。V-NOTESが難しい場合は、手術途中から通常の腹腔鏡下手術に術式を変更することもある。
V-NOTESは子宮摘出だけでなく、卵巣摘出も可能。同院でも今後、卵巣疾患への適応も視野に入れている。
福田部長は「婦人科の良性疾患への手術は、腹腔鏡下手術により、低侵襲化が進んでいますが、V-NOTESの導入により、さらなる低侵襲が実現できます。これから積極的に広報していきます」と強調。若手医師の教育にも触れ、「当院では腹腔鏡下手術もV-NOTESも経験できますので、いろいろな手技を学んでほしいです」とアピールする。