徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)03月25日 月曜日 徳洲新聞 NO.1433 4面
とくに高齢のご家族がいる方にとって、介護は切実なテーマです。「いずれ自分が介護する時期が来る」と覚悟していても、実際に直面すると「何から始めればいいのか」、「どこに相談すればいいのか」と、とまどう声が少なくありません。介護する立場になった時、慌てることなく対応するにはどうすれば良いのでしょうか。今回は、宇治徳洲会病院(京都府)の北川きよみ看護部長が自らの経験をもとにポイントを解説します。
北川きよみ宇治徳洲会病院(京都府)看護部長
私は今、実家にいる80代の父を家族で介護しています。認知症があり、左半身まひで要介護度は最も高い5。ふだんは父とふたりで暮らす母が世話をし、平日は実家から車で20分の場所に住む姉が時々様子を見に行き、週末は私が戻ってサポートしています。介護保険は訪問介護、訪問看護、訪問診療、通所介護(デイサービス)、ショートステイとフルに活用しています。
父の介護生活が始まったのは2016年。当院の「もの忘れ外来」を受診し、アルツハイマー型認知症と診断されたことがきっかけでした。同年に要介護認定を受け、要介護1に認定。昨年5月には脳出血で左半身まひとなり、約2カ月入院。その間、認知症が進行し、家族を認識できない時もありました。父の変わりゆく姿に母は耐えられず、自宅に連れて帰ることを希望し、担当ケアマネジャーに相談して自宅の環境を整え、1週間ほどで退院しました。立位も取れず、要介護度は一気に5に変更、今に至ります。
親の介護は覚悟していました。しかし、いざ直面すると何をどうすればいいかわからず、もう少し準備しておけば、もっとスムーズだったと反省しています。
この実体験を通じて、介護する側の心構えを3つ示します。ひとつは「(親やパートナーの)日常生活の様子に少しでも違和感があれば確認する」です。認知症の兆候は診断前からありましたが、父が冗談ばかり言う性格のため、見すごしていました。診断後、認知症の方に見られる特徴のひとつが父にも見つかり、しばらく前から発症していたと気付き、父の様子をきちんと確認しておくべきだったと後悔しました。
もうひとつは「身の回りの重要品の保管場所を把握しておく」です。母が把握していたので良かったのですが、父のお薬手帳や保険証、印鑑など受診や各種手続きの際に必要になる物品の保管場所がわからなければ困る場面が、いくつもありました。
3つめは「地域包括支援センターに早めに相談する」です。本格的に介護が必要になる前に、一度、地域包括ケアセンターや役所など介護保険の入り口となる機関を訪れ、相談すると良いでしょう。実際に介護が必要になった時にスムーズに進められると思います。場合によっては、担当ケアマネジャーをつくるきっかけにもなります。やはり介護でケアマネジャーは、とても大切な存在。父がスムーズに退院できたのも担当ケアマネジャーのおかげです。
いずれにしても、早めに準備しておくことが重要。そして、介護はひとりではできません。周囲の身内や社会資源に頼ることも大切です。