徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)03月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1431 4面
岸和田徳洲会病院(大阪府)は看護師を対象に多施設合同フィジカルアセスメントラリー研修を開催した。これは、模擬患者さんの多様な症例にアプローチし、患者さんの様子から適切な方法で必要な看護の提供に導くためのトレーニング。今回は急変を防ぐ対応力向上を目的とした。同院初の試みで、徳洲会大阪・関西ブロックの9病院から合計51人の看護師が受講。チーム制で点数評価を行った結果、野崎徳洲会病院(同)が優勝した。
「楽しくできました」と参加者一同 模擬患者さんを丁寧に観察し情報収集 症例ごとにインスタラクターと対応を振り返る 模擬患者さんも演技や模型でリアルな雰囲気を演出 優勝を喜ぶ野崎病院の(左から)西尾世里奈看護師、玉木瞳看護師、奥谷友香看護師、仲田諭司看護師
フィジカルアセスメントとは、患者さんの全身状態から情報を収集・分析し、患者さんに適切な対応を考察することで、今や看護師にとって欠かせない技術のひとつと言われている。
岸和田病院も今までフィジカルアセスメントに関する研修を行っていたが、より広く浸透させる目的で、初めて多施設合同かつ複数の症例に連続でアプローチするラリー形式での研修を開催。同院の中村直晶・看護師長(クリティカルケア認定看護師)が企画し、まずは大阪・関西ブロックの病院看護師を対象とした。
研修は病院ごとに4~5人のチーム制で実施した。インストラクターや模擬患者さん役は、主に同ブロック病院の認定看護師が務め、各チームには担当のインストラクターをひとりずつ配置した。
今回は「院内で遭遇しがちな急変前の患者さんの状態悪化」をテーマに、アナフィラキシーショック、呼吸不全、循環血流量減少性ショック、意識障害、腹痛、心肺停止の6症例を用意。1症例につき、前半30分はフィジカルアセスメントにあて、受講者は模擬患者さんの様子やカルテ情報をもとに一次評価、異常の発見、原因や必要な対応の分析、他者への応援要請や医師への報告を実践した。
後半30分は担当インスタラクターと振り返りを行い、一次評価で必要なABCD(Airway:気道、Breathing:呼吸、Circulation:循環、Disability of CNS:意識)アプローチや、コミュニケーション技法のSBAR(Situation:状況、Background:背景、Assessment:客観的評価、Recommendation:提案)など必要な知識・技術を学んだ。
このサイクルを各チームが6回繰り返し、研修は終了。担当インストラクターによるチームの評価も行い、助言の有無などでフィジカルアセスメントを点数化した結果、野崎病院がトップだった。「ベスト模擬患者賞」も選出し、アナフィラキシーショックで熱演した福岡徳洲会病院の和田秀一・看護副主任(集中ケア認定看護師)、松原徳洲会病院(大阪府)の中村和文看護師(クリティカルケア認定看護師)らが表彰された。
参加した神戸徳洲会病院の鎌田愛看護師は「多くの症例を通じて、チームが一丸となり考えを深めていくことができました」と満足した様子。四日市徳洲会病院(三重県)の松本康志看護師も「ABCD評価など適切なアプローチが生命危機の早期把握につながっていくと実感しました」と納得していた。
研修を見守った岸和田病院の深野明美・看護部長は「認定看護師が、生き生きと自主的に取り組んでくれたのが一番。医師の働き方改革で、今後はフィジカルアセスメントが看護師にとって一層重要になります。研修の意義は大きいです」と強調した。
中村・看護師長は「模擬患者さん役も含め、楽しそうにトレーニングできたのが良かったです」と振り返り、「秋頃に今度は2日間で開催したいと思っています。1日ずつ行うことで参加できるチームや地域が拡大できるはず」と構想を明かす。
「認定看護師の有無など、環境による“教育格差”をなくしたいと思っています。徳洲会には、さまざまな分野の認定看護師がいますし、グループのスケールメリットを生かせば、いろいろなことができると思います」と声を弾ませていた。