徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)02月05日 月曜日 徳洲新聞 NO.1426 3面
「NPWTは難治性創傷に対する画期的な物理療法です」と市岡教授
埼玉医科大学医学部形成外科の市岡滋教授は「創傷ケアの最新事情」をテーマに講演した。同大学病院は難治性創傷の分野で全国トップクラスの治療実績を誇る。
市岡教授は「創傷ケアの歴史は感染との闘いでした」と切り出し、創傷ケアの軌跡を概説。壊死組織を除去するデブリードマンや、抗菌薬・抗生物質が登場した経緯なども説明した。
続いて、Moist Wound Healing以降の創傷ケアの変遷を解説。これは、乾燥状態よりも湿潤環境の方が早く治癒することに基づく治療の概念で、英国のウィンター博士が1962年に動物実験で証明した。市岡教授はデブリードマンが感染コントロールの原則であると指摘したうえで、抗菌性の創傷被覆材や外用剤などを紹介。また、バイオフィルム(宿主による免疫や抗菌剤による除菌を妨げる微生物が形成する構造体)対策の新しい製品である超音波デブリードマンや、洗浄液、被覆材を説明した。
このあと、難治性創傷に対する画期的な物理療法として普及している局所陰圧閉鎖療法(NPWT)に言及。「NPWTは創傷にスポンジを詰めシールで密閉して陰圧状態にする(吸引する)治療法です。日本では2009年にVAC治療システム、12年にRENASYS創傷治療システムが承認、使用されています」。NPWT開発の歴史や機器の進化を振り返り、新しいNPWTシステムや切開創管理システム、羊膜由来バイオマテリアルなどを紹介した。