徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2024年(令和6年)01月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1425 4面
徳洲会グループ10病院はMRI融合標的前立腺生検(MRIフュージョン生検)システム「KOELIS TRINITY」を導入した。MRIフュージョン生検とは、事前に撮影した前立腺のMRI(磁気共鳴画像診断)画像を超音波画像に融合させ、超音波画像上に3Dで病変部位(ターゲット)を表示させながら行う生検法。2022年度の診療報酬改定で保険適応された。がんが疑われる部位に、きちんと針が刺さっているか、リアルタイムで確認しながら生検を実施できるため、検査の精度が向上する。鎌ケ谷総合病院(千葉県)の導入事例を紹介する。
「地域医療に貢献していきたい」と阿部部長
従来の前立腺生検は、MRI検査で同定したターゲットを頭の中に思い浮かべながら、経直腸超音波画像上で病変を探し針生検を行う。病変がはっきり同定できれば問題ないが、早期がんで病変が小さい場合は、MRI画像上では同定できても、超音波画像では見えないケースも多い。また、ターゲットが前立腺腹側にあるため、生検困難となるケースもある。このような場合、おおよその場所に狙いを付けて、生検の本数を多くすることで診断の正確さを担保するのが一般的だ。
一方、MRIフュージョン生検では、MRI画像上で同定したターゲットにマーキングし、そのデータを「トリニティ」のソフトウエアに取り込むことにより、超音波画像上に3Dでマッピングすることが可能。リアルタイムに描出される病変部位を観察しながら、確実にターゲットを狙って生検することができるため、がん病巣の検出率が向上し、局在診断も可能となる。
MRI画像を融合し超音波画像上にターゲットを3Dでマッピング
鎌ケ谷病院の阿部真樹・泌尿器科部長は「これまでは2次元の超音波画像下で前立腺生検を行っていました。MRI画像上で同定したターゲットの位置を思い浮かべながら針を刺すのですが、超音波画像では病変が見えず、どうしても予測して刺すしかないケースもありました。生検で、がんが診断できなかった場合、患者さんを定期的に診察し、半年後や1年後に再生検することになります」と説明する。
「MRIフュージョン生検は、リアルタイムにターゲットの位置を確認できるので、針刺しの的中率が上がり、病変部位に集中して採取することができます。検査の精度が上がることで、初期病変の見逃しが減ると同時に、不必要な再生検の回避にもつながり、前立腺生検による感染症や出血などの合併症も減らせます」と強調する。
MRIフュージョン生検は、PSA(前立腺特異抗原)検査などスクリーニング検査で、がんが疑われたすべての患者さんに実施するわけではない。MRI検査で腫瘍が確認できない場合、病変部位へのマーキングができないため、MRIフュージョン生検は行わず、従来の超音波画像下での生検を行うケースもある。
また、MRIフュージョン生検を行うには、通常の生検に比べ準備段階での工程が多く、機器操作の習熟も必要だ。検査時間はMRI画像の取り込みに10~15分、麻酔をして生検を行うのに10~15分かかり、通常の生検よりも長くかかる。
阿部部長は操作上のメリットについて、「一度、MRI画像を融合させれば、超音波検査でプローブ(患者さんの体に当てる部分)の角度を変えても、つねに画像が連動するのは助かっています。ゆくゆくはMRI画像を取り込む際に、AI(人工知能)で自動補正される機能も付与されると聞いていますので、期待しています」。
正確な早期がん診断と局在診断ができれば、多岐にわたる治療法のなかから、患者さん一人ひとりに合わせた治療が選択できる。同院では、前立腺がんに対し内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」による低侵襲手術を行っているが、阿部部長は「MRIフュージョン生検で、早期がんの検出率が上がるようになれば、手術件数が増える可能性もあります」と予測する。
また昨年4月に、同院の泌尿器科は常勤医が1人増え5人体制となり、診療機能を強化。ロボット支援手術では、新たに膀胱全摘出や腎臓部分切除も開始。「今後も最新の医療技術を積極的に取り入れ、患者さんにより良い医療を提供し、地域医療に貢献していきたいと思います」と意気込んでいる。