徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)12月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1419 1面

徳洲会心臓血管外科部会
「心外DB」活用し研究実施へ
活動方針にブランド力向上と教育環境改善

徳洲会心臓血管外科部会は10月20日、宮城県仙台市で第8回会合を開催した。15病院から計24人の心臓血管外科医らが参加、徳洲会心臓血管外科データベース(心外DB)を活用した臨床研究の実施計画について発表があった。また部会活動方針なども示した。同19日~21日には同市内で第76回日本胸部外科学会定期学術集会が開かれ、徳洲会グループからは計21演題と多数の発表があり、「JATS Case Presentation Awards 心臓3」のセッションで、福岡徳洲会病院心臓血管外科の稗田拓朗医師が優秀演題賞を受賞した。

日本胸部外科学会 稗田・福岡病院医師が優秀演題賞

15病院から24人の心臓血管外科医らが参集

部会の冒頭、大橋壯樹・副理事長(名古屋徳洲会総合病院総長)は「ぜひ部会の先生方で助け合い、徳洲会の心臓血管外科を、診療の質・量ともに、また学術的にも大きくしていければと考えています。そして、若い先生方にも、もっと参加していただくことで、さらなる発展を期待しています。交流を深め連携を強化していきましょう」と呼びかけた。

「診療の質・量に加え、学術的にもより大きく」と大橋・副理事長

次いで、部会長を務める千葉西総合病院の中村喜次・副院長兼心臓血管外科主任部長が「この徳洲会心臓血管外科部会は大橋先生が10年近く前に立ち上げられました。部会活動や、そのなかで生まれてきた心外DBの構築・活用の芽が少しずつ育ってきています。全国の患者さんのため、さらに発展させていくべく、実りのある議論ができればと考えています」と挨拶。

「全国の患者さんのため、さらに発展を」と中村部会長

参加者が各所属病院の現状報告を行った後、「徳洲会心臓血管外科手術症例データベースの報告」と題し、徳洲会インフォメーションシステムの担当者が、グループの心外手術数や、そのうち心外DBへの入力件数・入力率などを説明。発表後の意見交換では、入力率の向上を図っていく必要性があるとの認識で一致した。

同部会は心外DBを活用した学術活動を通じて医学の発展に貢献していく方針。第1弾として急性A型大動脈解離を対象とした臨床研究を準備中で、千葉西病院心臓血管外科の伊藤雄二郎・副部長兼大動脈センター長がプレゼンテーションを行った。A型解離は心臓に近い上行大動脈の中膜が裂け、急死に至る合併症を引き起こしやすく、緊急手術を要する重篤な疾患だ。

A型解離手術の1割が徳洲会

アンケート結果から、グループ病院の心臓血管外科スタッフ体制や緊急手術の受け入れ体制、A型解離の受け入れ状況や手術適応、治療方針などを紹介。グループ全体のA型解離の手術症例は2021年444件、22年550件に上ることなどがわかった。A型解離の手術数は国内全体で約6,000例とされていることから、1割近くは徳洲会が実施した計算になる。

「国内の先行研究では、手術を行った症例のみを対象に検討を行っています。徳洲会では今回、手術に至らなかった症例も含めた臨床研究を計画しています」と腹案を明かした。

プレゼン後には、新田隆・一般社団法人徳洲会医療戦略室特別顧問兼医療法人徳洲会心臓血管外科顧問(羽生総合病院循環器統括顧問)が、心外DBを活用し、さまざまな検討を加え発信することの意義を強調。また、心外DBへの登録率100%を目指して高めることの重要性を指摘した。

続いて、中村部会長が部会活動の方針を発表。「徳洲会心臓血管外科部会 2023-2024活動プラン案」を提示した。活動目標には「徳洲会心臓血管外科のブランド力向上と教育環境の改善」を明記し、紹介患者さんの増加や若手医師のリクルート、心臓血管外科手術にかかわる職員のモチベーション向上などを目指す。

具体的なアクション案として、発信力を高めるため心臓血管外科手術症例データベースの活用による学会・論文発表、徳洲会施設間でのマンパワーの共有や手術見学・交流増加、若手医師を中心に国内外への短期留学や見学サポートなどを挙げた。

この後、徳洲会臨床工学部会から野崎徳洲会病院(大阪府)の山野辺基技士長、松原徳洲会病院(同)の吉見隆司技士長、千葉西病院の林貞治技士長が説明に立ち、人工心肺回路の標準化をテーマにプレゼン。

臨床工学部会は人工心肺業務に関する応援時のインシデント・アクシデント(ヒヤリハット)の低減、災害などによる供給停止時の互助機能確立、人工心肺回路のコスト削減を目的として標準化を推進。心外部会と足並みをそろえるため、今回の部会で標準回路の使用推奨について提案、おおむね賛同を得た。終了後には懇親会を開催、積極的に情報交換し親睦を深めた。

日本胸部外科学会定期学術集会

優秀演題賞を受賞した稗田医師

優秀演題賞を受賞した稗田医師は「無再発生存中の肺動脈内膜肉腫の1手術例」をテーマに発表した。症例は50代男性で、当初肺塞栓症と診断され循環器内科で抗凝固療法を開始したものの、血栓が消えなかったため、PET-CT撮影したところ異常集積があり、腫瘍の可能性も考慮。

肺動脈内カテーテル的腫瘍生検を行ったところ、肺動脈内膜肉腫を疑い腫瘍切除目的で心臓血管外科に紹介。呼吸器外科とも協議を行い、心停止下に肺動脈を切開し、左肺動脈から右肺動脈、肺動脈本幹に広がっていた腫瘍を切除。人工血管を用いて右肺動脈再建を施行、左肺全摘を行って手術を終えた。術後は放射線療法や化学療法を行い、再発所見を認めず経過観察中だ。

稗田医師は「視野確保困難と予想された左下肺静脈も、正中切開で人工心肺補助下であったため、良好な視野で安全に処理することが可能でした」とまとめた。

このほか、ロボット支援下僧帽弁形成術、A型解離に対する手術介入までの時間短縮の取り組み、漏斗胸に対する胸肋挙上術、MICS(低侵襲心臓手術)での麻酔管理やモニタリングなど多岐にわたるテーマで、一般口演などオーラル12題、ポスター9題を合わせ、計21演題を発表した。

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