徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)11月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1415 1面
徳洲会グループがコンゴ民主共和国で進めている病院建設プロジェクトが大きく前進――。医療法人徳洲会の東上震一理事長は10月24日、同国の首都キンシャサで、カンバ・ロジャー保健相と面談、医療パートナーシップ協定を締結した。これにより、徳洲会が推進している現地での病院建設が本格化する。初期投資額は30億円で、まず心臓血管外科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、救急・外傷医療を提供する50床規模の病院からスタートする計画。2024年11月に着工、26年12月の開院を目指す。
湘南鎌倉病院での研修や日本への留学経験がある医師、看護師ら医療従事者らと懇談
今回の徳洲会コンゴ視察団は東上理事長を団長に小林修三・常務理事(湘南鎌倉総合病院院長)、同国出身で病院長に就任予定の一般社団法人徳洲会のムワナタンブエ・ミランガ顧問、建築部の佐平健吾・部長代理、プロジェクトリーダーを務める医療安全・質管理部の野口幸洋課長、広報部長兼小紙編集長の上田昇の6人。また、協力企業として、海外で病院マネジメントの実績がある日揮の長坂聡部長、松下弘典マネージャーが同行した。
一行は現地時間で10月21日夜にキンシャサに到着、翌22日にはカマンガ・ジョー国家警察将軍(警察組織の保健・医療サービス部門責任者)、湘南鎌倉病院でのトレーニングや日本への留学経験がある現地の医師、看護師ら医療従事者らと懇談会を開いた。
病院建設地を視察。左からルンダ大統領補佐官、カマンガ警察将軍、小林・常務理事、東上理事長、ミランガ顧問
湘南鎌倉病院で研修した医療従事者らは、小林・常務理事に駆け寄り、口々に「またお会いできて光栄です」と再会を喜んだ。東上理事長も挨拶のなかで「コンゴの皆さんのために、近代的な病院を建設します。ここにお集まりの医療従事者の方々には、ぜひ徳洲会コンゴ病院で働いてほしい」と呼びかけると拍手が湧き起っていた。
会場には日本大使館の南博之・特命全権大使も駆け付け、「徳洲会の病院建設に協力させていただきます。立派な病院が開院できることを大いに期待しています」と、エールを送った。懇談会後、徳洲会一行は日本大使館を表敬訪問し、南大使から同国の社会情勢などについて聞いた。
徳洲会コンゴ病院建設プロジェクトを伝える看板
23日は病院建設地を視察、ルンダ・ケリー大統領補佐官(大統領府日本タスクフォース長)、カマンガ警察将軍、国立警察病院の医療従事者らと意見交換した。建設地は国立警察病院と同じ敷地にあり、その一角には徳洲会が透析機器を寄贈し、開設を支援した透析センター(18年オープン)がある。
小林・常務理事は「透析センターを見学し、湘南鎌倉病院で研修を受けた医師や看護師らが、きちんと業務を行っていることがわかりました」と満足げ。だが、透析機器の保守・点検が的確になされず、寄贈した10台のうち半数程度しか稼働していない現状を見て、「徳洲会が透析機器を寄贈した多くの国と同様に、臨床工学技士が制度的に存在しないことが、大きな課題です」と指摘していた。
徳洲会が開設支援した透析センターの前で記念撮影
この後、国家警察のトップであるデュドネ・アミュリ長官を表敬訪問した。デュドネ長官は「コンゴ国民のために徳洲会が病院を建設してくださることに感謝します」と謝意を表した。
会談が終わり、建物を出ると、現地のメディアが待ち構えており、東上理事長がインタビューを受けた。
東上理事長は「コンゴ国民のために徳洲会が近代的な病院を建設します。本日、国立警察病院を視察しましたが、医療従事者の知識・技術をもっと向上させる必要性を感じました。来日し、徳洲会病院で研修を受けていただきたいと考えています」と話し、医療機器・設備の寄贈も合わせて検討していくことを明かした。
透析センター内を視察。徳田・名誉理事長の写真が掲げられている(奥)
その後、徳洲会キンシャサオフィスに移動。夕刻には大統領府日本タスクフォースが主催する歓迎レセプションに参加し、カンバ保健相ら関係者らと懇談した。
24日は、駐日コンゴ民主共和国大使館のルクムエナ・センダ大使も同行し、保健省を訪問、東上理事長とカンバ保健相が医療パートナーシップ協定を締結した。徳洲会と同国は2004年に医療協力に関する覚書(MOU)を結んでいたが、今回の協定は病院建設地の移譲や輸入品、税金、関税、使用料などの免税に関する文言が盛り込まれ、より具体的な内容となっている。
医療従事者に囲まれ記念撮影に応じる東上理事長(左)と小林・常務理事。奥に見えるのが国立警察病院
東上理事長は「徳洲会がコンゴに病院を建設するのは、徳洲会の“生命だけは平等だ”の理念の下、コンゴの医療水準を向上させ、コンゴ国民に最善の医療を受けていただくためです。病院の利益を国外に持ち出すことはありません。また、徳洲会のアフリカ担当として長年働いているミランガ顧問に敬意を表し、顧問の母国に病院を建設する意味合いもあります」と意義を強調。
カンバ保健相と固い握手を交わす東上理事長
さらに「徳洲会の創設者である徳田虎雄・名誉理事長は、日本のみならず外国でも人々のために良い医療を提供していくと言い続けておられます。ぜひ、お互いに協力して、良い病院を建てましょう」と呼びかけた。
これに対し、カンバ保健相は「私が訪日して、徳洲会病院を視察した時、徳田先生が掲げた理念をよく理解することができました。我が国の医療の質向上のために、ぜひ協力をお願いいたします」と応えると、ふたりは立ち上がり、固い握手を交わした。
徳洲会キンシャサオフィスから望む市内の景色
会談後、ミランガ顧問は「病院が完成したら、私は多くの若い医師たちとともに働きます。これまで海外で治療を受けなければならなかった疾患を徳洲会コンゴ病院で治療します。多くのコンゴ人の命を救うことができる同院の建設に、心より感謝いたします」と満面の笑みを見せた。
野口課長は「徳田・名誉理事長が唱えてきたアフリカでの病院建設が目に見える形で動き出しました。文化の異なるアフリカでのプロジェクトは、今後も多くの困難に突き当たると思いますが、現地には私たちと一緒に病院をつくり上げたいという仲間がたくさんいます。成功のカギは人です。この仲間たちと一緒に頑張っていきます」と意欲を新たにしていた。
国家警察のデュドネ長官(右)と会談する(左から)小林・常務理事、東上理事長、ミランガ顧問
日揮の長坂部長は「“生命だけは平等だ”の理念の下、日本国内だけでなく海外にも積極的に医療を展開する徳洲会の行動力・実行力には、同じ日本人としてうれしく、また誇りを感じます。コンゴは人口1億人近くを有する国ですが、一部地域で内戦が継続しており、経済的発展はこれからという国です。医療面でも発展途上であり、技術、教育、施設・設備など多くの問題を抱えています。当社はカンボジアで病院を設立し運営している経験を生かし、徳洲会コンゴ病院の設立に少しでも寄与できればと思っています」と抱負を語った。
今後については24年1月に設計を開始、11月に起工、26年6月竣工。医療機器・設備の搬入など開設準備を経て12月に開院予定だ。なお、徳洲会はモンゴル、インドネシア、タンザニアなどでも病院建設プロジェクトを推進している。
徳洲会コンゴ病院の完成予想図
コンゴ民主共和国の首都キンシャサにある国立警察病院の敷地と隣接する約4,200㎡の土地に、3階建て、延べ床面積3,950㎡の病院を建設する。病床数は50床規模。また、将来の増築も視野に、隣接する透析センター(徳洲会が開設支援し2018年にオープン)を含む約6,600㎡を用地として設定している。
診療科目は心臓血管外科、循環器内科、消化器内科(消化器内視鏡)、腎臓内科(将来的には腎移植)、救急・外傷医療。同国では近年、非感染性疾患(がん、心疾患、糖尿病、慢性呼吸疾患、その他の非感染性疾患)が急速に増加しているが、これら疾患に対する質の高い医療提供ができていないのが現状。加えて人口増加と脆弱な交通インフラにより、交通外傷も多発していることから、当初の診療科目を選定した。
また、今回締結した医療パートナーシップ協定にも明記されているが、免税措置などを受けるため、徳洲会は同国にNGO(非政府組織)を設立し、マネジメント業務を行っていく。
病院建設にかかる初期投資額は30億円規模で、22年の医療法人徳洲会理事会で承認。徳洲会コンゴ病院の着工は24年11月、竣工は26年6月、開院は12月を予定。