徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)10月30日 月曜日 徳洲新聞 NO.1413 1面

山形病院
治験事業を積極推進
被験者への手厚い対応などで好調

山形徳洲会病院は製薬メーカーから治験の依頼を積極的に引き受け新薬の開発に貢献している。徳洲会はグループの方針として、さまざまな疾患で苦しむ患者さんのため、医療の発展を目指して治験事業を推進。なかでも山形病院は常勤医1人当たりの治験売上高が徳洲会75病院のなかでトップの実績(2022年4月~23年3月)を誇る。常勤医師数は8人と限られているものの、11年に治験業務を開始以降、専任CRC(治験コーディネーター)の増員や手厚い被験者対応、依頼者への独自の対応を取ることなどにより、治験事業は好調が続いている。

病院運営に大きなインパクト

「毎回、契約症例数の満了を目指しています」と笹川院長

治験は厳格なルールの下、製薬メーカーなどが医療機関に依頼(企業治験の場合)して、実際の患者さんに未承認の新しい薬剤を投与したり医療機器・材料を使用したりして、有効性や安全性を検討するための重要な工程。治験で有効性・安全性が認められると厚生労働省が承認し、国内で販売できるようになる。

徳洲会グループが治験事業を本格的に開始したのは2006年。各病院に治験センター(現・臨床試験センター)を設置し、グループ会社として未来医療研究センターを設立。治験受託(窓口)の一元化、共同IRB(治験審査委員会)の運営、CRC研修の実施、臨床研究や治験業務の支援、SOP(標準作業手順書)の統一、マニュアルの標準化などを進め、適切に治験を行うための環境を整えてきた。現在、徳洲会グループ35病院に臨床試験センターを設置済みで、同センターを設置していない病院にも窓口の設置など進めている。

山形病院では11年に治験センターが発足。同院はこれまで泌尿器科や脳神経外科の治験実績が多く、このほか整形外科や、近年ではRSウイルスワクチンの治験で内科も取り組んだ。

自身、泌尿器科医として同院の治験事業を牽引する笹川五十次院長は「新薬の開発に携わることができると、モチベーションのアップにつながりますし、新しい知識の吸収もできるため、とても勉強になります。治療効果が表れて患者さんが良くなっていく姿を見ることは、医療者としてこの上ない喜びでもあります」と治験推進の意義を説く。

また笹川院長は、治験事業が軌道に乗れば「病院運営に与える影響は、新たにひとつの診療科を開設するほどのインパクトがあります」と強調する。医業原価の上昇など医療機関を取り巻く環境が厳しさを増すなか、治験は患者さんへの貢献という側面に加えて、重要な収入源にもなり得るというわけだ。

もちろん、それには依頼者である製薬メーカーから選ばれる医療機関でなくてはならない。製薬メーカーから徳洲会グループの治験窓口である未来医療研究センターに相談がもちかけられると、投薬対象となる疾患の患者さんがどれくらい通院・入院しているか、医師が治験を引き受ける意思があるかなどについて、臨床試験センターを設置している病院を中心に、未来医療研究センターがグループ病院に問い合わせることとなる。

山形病院臨床試験センターのCRC(後列中央が志済CRC)

山形病院臨床試験センターの志済美樹CRC(看護師)は「実施できそうな治験の案内に対しては、まず参加意思を示すようにしています」と積極性をアピール。治験を推進するうえで医師のモチベーションを一層高めるため、治験収入の一部を、治験を実施した診療科で学会交通費や論文投稿料などに使えるよう改めることも行った。

また、治験業務全般のサポートを担うCRCの役割が大きいことから、同院は治験の実績が上がってきた時点で、段階的に迅速にCRCを増員。現在、専任CRCが6人在籍する。さらに、薬剤師の人員不足を補うため、成田富里徳洲会病院(千葉県)と古河総合病院(茨城県)からひとりずつ薬剤師が応援に来ており、治験薬調剤業務を手がけている。一方で、8月からは庄内余目病院(山形県)にCRCひとりを応援に出し、他院のサポートも行っている。

県外の検査施設まで同行

被験者への対応に関して、たとえば脳神経外科がアルツハイマー型認知症の治療薬を対象に実施した治験では、正確な診断を行うことが治験参加の前提となることから、関東や関西の医療機関でアミロイドPET検査を受ける必要があった。同認知症の場合、脳にアミロイドβと呼ばれる特殊なたんぱく質が蓄積することがわかっており、それを確かめるための検査だ。ところが、被験者さんは高齢のため、自力で行くには不安があった。そこで、山形病院のCRCが検査施設までの付き添いを行うなど、患者さんが安心して治験に参加できるよう手厚い対応を行った。

さらに、新型コロナが猛威を振るい、都道府県をまたいでの移動に対し自粛要請が出されていた時期には、県外の徳洲会病院のCRCの協力を得て、検査施設までの案内を代行してもらうなど、グループのメリットを生かした連携プレーで乗りきることもあったという。

「『安心して治験に参加できた』という感想をもった被験者さんはリピーターとなることが多く、新たな被験者を紹介してくれることもあります」と志済CRCは説明する。

笹川院長は「治験薬に関しては事前に論文などで調べ、こちらの興味を示したり、依頼者との打ち合わせの際にはねぎらいの言葉をかけたりしています。お互い人間ですので、こうしたコミュニケーションも大切だと考えています。そして、『依頼者との約束は守り、契約症例数の満了や症例数の追加を目指す』。次にまた治験実施施設として入るためには、これが重要です」と指摘している。

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