徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)10月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1411 3面
第26回日本臨床救急医学会総会・学術集会が都内で「救急医療の可視化と暗黙知」をテーマに開催された。徳洲会グループからは医師や薬剤師、救急救命士など多職種が、パネルディスカッションやシンポジウム、ワークショップ、一般演題、ポスターの各セッションで計14演題と多数の発表を行った。
AEDの普及・促進策などを提言する丸川部門長
「日本の蘇生学・医療 これまでとこれから」をテーマとするシンポジウムに登壇したのは、徳洲会集中治療部会部会長を務める吹田徳洲会病院(大阪府)救急・集中治療部門の丸川征四郎部門長。「AEDから見た心肺蘇生 これまでとこれから」と題し発表した。
冒頭、昨年11月に逝去した岡田和夫・日本蘇生協議会(JRC)名誉会長を追悼するため会場全体で黙禱を捧げた。丸川部門長は岡田・名誉会長をしのびながら、JRCが2002年1月に発足するまでの経緯を説明。AED(自動体外式除細動器)開発の歴史や普及状況を概説したうえで、直面している課題として、配置のミスマッチや除細動の低い実施率などを挙げた。
最後に丸川部門長は「AEDの普及・促進に向け、①AEDの設置場所のルール化、②設置台数に関しては区域ごとの推定心停止発生率を基準に推奨、③財団全国AEDマップのグレードアップ、④パッド交換や設置・廃棄に対する助成――など行政的支援を強化し、世界の動向も紹介して、公的スペースへの設置を義務化することが望まれます」と提言した。
ER専従薬剤師をテーマに発表した齋藤主任
「どうする? 救急診療と電子カルテ:電子カルテに求めるもの」をテーマとするパネルディスカッションでは、札幌東徳洲会病院の齋藤靖弘・薬剤部主任(救急専門薬剤師)が「診療録からみた救急搬送患者の救急外来(ER)での薬歴記録状況と専従薬剤師の影響」について発表。
齋藤主任はER専従薬剤師の影響を調べるため、ER専従薬剤師勤務時(A)と非勤務時(B)の救急搬送患者さんに関する薬歴記録状況などを検討。結果、持参薬鑑別実施率はAで85.1%、Bで84.3%。救急医が救急搬送患者さんの薬歴をすべて診療録に記載していた割合はAで26.4%、Bで36.4%。いずれも有意差を認めなかった。
「薬剤師からの口頭伝達などにより、救急医が薬歴を把握していた可能性は考えられますが、ERでの患者薬歴把握に関しては、ER専従薬剤師と救急医の連携が重要と考えます」とまとめた。
同じく札幌東病院の井沼浩政・救急センター主任(救急救命士)は「どうする? ドクターカー・ドクターヘリ:救急現場急行と病院間搬送」をテーマとするパネルディスカッションで、「院内救命士による病院間搬送の実績と課題」を発表。
同院は2020年から救急救命士を採用しており、ERでの初療と搬送業務を中心に活動。搬送業務は、安全で確実な患者さんの搬送、自治体消防の負担軽減による地域救急医療への貢献、医師の負担軽減やタスクシフト(業務移管)を目的として実施している。
井沼主任は「病院間搬送では医療行為を継続したり医療機器を用いたりしての搬送が多いです。今後、院内の救急救命士が定着するためには、法律と診療報酬の整備が必要と言えます」と訴えた。
内因性疾患に関する一般演題では、八尾徳洲会総合病院(大阪府)の藤本浩之・初期研修医(2年次)が「放射線治療後にPTP誤飲により発症した小腸穿孔の一例」をテーマに発表。
症例は70代女性で、右下腹部痛で前医に救急搬送、CT(コンピュータ断層撮影)検査で上行結腸周辺にフリーエア(遊離ガス)を認めた。放射線治療の既往から放射線腸炎による消化管穿孔疑いの診断となり、手術目的で同院に紹介。開腹で小腸切除吻合術を施行したところ、腸内からPTP(薬の包装シートの一種)と薬剤が見つかった。「高齢者では誤飲のエピソードの有無にかかわらず、異物での穿孔も疑うべきと考えます」と示唆した。
また、札幌東病院の吉田将馬・救急救命士が「どうする? 救急救命士の医療機関内での役割」をテーマとするワークショップで、「院内救命士が行う当院での搬送業務における問題点」と題して発表を行った。このほか徳洲会グループからは、一般演題5題、ポスター4題の発表があった。