徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)10月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1411 1面

内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」
鼠径ヘルニアの手術スタート
千葉病院に続き野崎病院・湘南鎌倉病院

内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」による鼠径ヘルニアの手術を野崎徳洲会病院(大阪府)、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)が相次いで開始した。現在、同手術は保険収載されていないが、保険適用を見越し体制を整備しておくのが目的。両院に先立ち千葉徳洲会病院は2021年11月に同手術をスタートしている。

「良い治療はつねにアンテナを張って取り組みます」と峯田副院長

鼠径ヘルニアの治療では、脱出しているヘルニア内容を元のおなかの中に収め出口を閉じる手術を行う。この修復には、メッシュ(人工の網)を用いない「組織縫合法」とメッシュを用いる「メッシュ法」のふたつがある。組織縫合法は人工物の使用が少なく、感染に強い利点があるが、メッシュ法に比べて再発が多く疼痛が強いため、成人鼠径ヘルニアの大半はメッシュ法が選択される。

「鼠径ヘルニアのロボット支援手術は若手医師の教育に有用」と門川部長

手術のアプローチ法としては、主に鼠径部切開法と腹腔鏡下手術がある。鼠径部切開法は鼠径部を約4cm切開して手術する方法で、日本では約6~7割が同法で行われる。腹腔鏡下手術では、おなかに5~10mmほどの穴を3カ所開け、アクセス用のポートを差し込み、ポートからスコープや鉗子を挿入して手術を行う。傷痕が目立たず、術後の痛みも少ないため、社会復帰が早いのがメリットだ。

「治療環境や症例に合わせて術式を選べるように準備します」と五十嵐医長

腹腔鏡下手術を支援するロボットであるダヴィンチは、内視鏡や鉗子を装着する4本のロボットアームをもつ「ペイシェントカート」と、それを操作する「サージョンコンソール」などで構成。術者は視野を拡大できる三次元の立体映像を見ながら、遠隔操作で手術を行う。ロボットアームは多関節で、ぶれの少ない安定した動きが可能。

徳洲会グループ病院でいち早く鼠径ヘルニアのロボット支援手術に取り組んだのが千葉病院だ。2021年11月に始め、21年に3件、22年に6件、現在までに計14件を実施。開始当初は峯田章副院長(外科)のみが執刀していたが、今年から北里憲司郎・外科部長も取り組み始めた。

湘南鎌倉病院の1例目では峯田副院長(右)が訪れ指導

峯田副院長は「患者さんにとって良い治療は、つねにアンテナを張って取り組んでいます。ロボット支援手術は、狭いおなかの中でも鉗子をスムーズに動かせるので、タッカー(時間経過で溶けてなくなる釘のようなもの)を使用しないメッシュが扱いやすい。そのため、患者さんの術後の痛みは少ないと思います」と強調する。

野崎病院は4月13日に1例目を実施。同院外科では、すでに胃がんに対するロボット支援手術を行っており、鼠径ヘルニアもスムーズに実施できた。10月には、直腸がんに対するロボット支援手術を行う予定だ。

門川佳央・消化器外科部長は「鼠径ヘルニアのロボット支援手術は、若手医師への教育的な有用性を考え、保険収載に先駆けて取り組み始めました。大学病院など大きな病院では、他の手術にダヴィンチを使い、鼠径ヘルニアまで回らない可能性もあると思いますが、当院では若手医師にもチャンスを与えることができます」と語気を強める。

湘南鎌倉病院は8月26日に1例目を実施。その前に、執刀医の五十嵐優人・外科医長は千葉病院に見学に行き、手術当日は峯田副院長が湘南鎌倉病院を訪れ指導した。同院では3月に直腸がん、4月に大腸がんでロボット支援手術を始めており、鼠径ヘルニアに対しても保険収載を見越して準備しておくことが重要と考えた。

五十嵐医長は「当院は1996年に日帰り手術(鼠径ヘルニアを含む)を日本で初めて開始したパイオニアであり、ヘルニアハイボリュームセンターでもあります。鼠径ヘルニアのロボット支援手術は、コスト面に課題があるものの、ニーズがあれば件数を増やしていきたいです。今後はヘルニアハイボリュームセンターである当院から、新たなエビデンスを発信できればと考えています」と抱負を語る。

離島・へき地病院での手術にも触れ、「さまざまな病院に応援に行き、現地で手術を行うこともあります。ロボット支援手術は、あくまでひとつのツールですので、これだけにこだわるのではなく、治療環境や症例に合わせて術式を選べるよう、できる限りの選択肢を準備するようにしています」と強調する。

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