徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)10月10日 火曜日 徳洲新聞 NO.1410 3面

9月度 徳洲会グループ医療経営戦略セミ
山上・和歌山医科大学教授
膵がん診療・研究に貢献
地域連携で早期発見プロジェクトも

和歌山県立医科大学探索的がん免疫学講座の山上裕機教授は「活物窮理-天然を見つめ、天然に学ぶ-」をテーマに講演した。山上教授は肝胆膵外科を専門とする膵がん外科治療の第一人者。これまでの研究成果や早期膵がん発見プロジェクトなど紹介した。

「地域と連携し早期膵がんの発見に尽力しています」と山上教授

まず、和歌山県出身で麻酔薬「通仙散」を開発し1804年に世界初の全身麻酔下外科手術(乳がん手術)に成功した華岡青洲の功績を紹介。青洲が掲げた理念であり和歌山医大建学の精神である“活物窮理”に言及し、「活物(患者さん)に親しみ、患者さんを見詰めることで、やがて患者さんの心の声が聞こえるようになり、より良い医療を行えるようになるという華岡先生の教えを表しています」と解説した。

山上教授は2001年に同大外科学第二講座教授に就任。①外科学研究で国際貢献、②優秀な外科医を教育・育成――を目標に掲げ同講座を運営してきた。

数ある業績のなかから、基礎研究では膵がん手術後再発予防のペプチドワクチン療法や、iPS細胞由来の樹状細胞(免疫細胞の一種)によるワクチン効果の研究などを紹介。臨床研究では、胃がんロボット支援下手術と腹腔鏡下手術のランダム化比較試験など「明日の日常臨床に役立つ研究」に取り組んできたことを強調した。

また、教授就任前から膵頭十二指腸切除術の術後管理として、ドレーン(体液を体外に排出するための管)早期抜去に関する臨床研究を実施してきた結果、膵液瘻や腹腔内感染が減少することを確認。「当大学から提唱したドレーン早期抜去が国際コンセンサスになりました」とアピールした。

最後に膵がん早期発見プロジェクト「きのくにプロジェクト」を発表。和歌山県全域と大阪府の一部地域の医師会や病院協会との協力により、症状や所見などから膵がんリスクが高い方には、画像検査や超音波内視鏡検査を推奨。膵がん疑いの患者さんは大学病院で高解像度の超音波内視鏡検査による早期膵がんの発見・治療を行うというものだ。全国規模での早期発見の取り組みの重要性を指摘し、徳洲会グループに対して膵がんドックなど複数の施策からなるプロジェクトの実施を提案、期待感を示した。

腫瘍内科アピール 澤木・湘南鎌倉 病院センター長

「徳洲会グループ内で連携していきたい」と澤木センター長

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の澤木明オンコロジーセンター長は「当院における腫瘍内科の活動について」と題し講演した。同院の腫瘍内科は①標準治療がない、②重複がんや原発不明がん、③肉腫など希少疾患、④がん疑いの患者さん――に対し検査や治療を行う総合窓口。

がんゲノムプロファイリング検査、NET(神経内分泌腫瘍)/GIST(消化管間質腫瘍)専門外来、遺伝カウンセリングなどに加え、院内のキャンサーボード(多診療科の医師や多職種が最善の治療方針について検討する会議)やレジメン(がん薬物療法の標準治療計画)、化学療法室の運営、がんの相談や情報発信の窓口も担う。

同院が昨年、厚生労働省から「がんゲノム医療連携病院」の指定を受けたことで実施可能になった「がんゲノムプロファイリング検査」は、生検や手術などで採取したがん組織を用い、大量のゲノムの情報を読み取る検査であると説明。原発不明がんに対し、同検査により原発特定に寄与した症例を提示した。

続いてNET/GIST専門外来を紹介した。NETの治療法として、内照射療法(体内から放射線を当てる治療)のひとつであるペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)を提示。これはルタテラという薬を用い、細胞の内側から腫瘍細胞に障害を与える治療法だ。また、GISTについては症例を示し、診断に至る過程や治療法などに言及した。

同センターでは、外見の変化に起因するがん患者さんの苦痛を軽減するアピアランスケアにも注力。最後に「腫瘍内科がある病院は少ないと思いますが、だからこそグループ内で連携していきたいです。多くの症例の情報を集めていくことで、次の治療につながっていくと考えます」と締めくくった。

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