徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)09月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1406 1面
八尾徳洲会総合病院(大阪府)が導入した脊椎手術支援ロボット「MAZOR X(マゾールエックス)ロボットシステム」が順調だ。これは、脊椎変性疾患などに対する脊椎固定術を行う際に使用する医療機器で、手術計画の作成や、ロボットアームによる手術器具の正確な誘導、リアルタイムナビゲーションシステムによる高精度なスクリュー挿入などに寄与。医師の負担軽減にも貢献する。2021年3月に国内で製造販売承認を得た新しい機器で、徳洲会グループでは初導入。同院は同ロボットを用い、より質の高い手術の提供に尽力していく構えだ。
「脊椎変性疾患でお困りの患者さんのために貢献」と當麻部長
脊椎固定術は脊柱管狭窄症や腰椎変性すべり症、椎間板ヘルニアなど脊椎の変性・変形疾患や脊椎骨折などに対して行う手術。神経を圧迫している部位を切除することで痛みやしびれを緩和し、脊椎を安定させるために椎弓根スクリューと呼ばれるネジを挿入、スクリュー同士をロッド(金属の棒)で連結し固定する。脊椎には重要な神経や血管が通っていることから正確・安全な手術が求められる。
ナビゲーション画像を見ながら慎重に手術を進める
MAZORロボットシステムはロボットアーム(サージカルアーム)、サージカルモニタ、ナビゲーションシステムで構成。手術では、まず術前に患者さんのCT画像を撮影し、その画像データをシステム内に取り込み、患部の3D画像を作成する。同画像をもとにスクリューを挿入する位置、角度、深さを決定するなど綿密な手術計画を立案。
手術開始前に手術器具をシステムに登録(レジストレーション)しておく。これにより、リアルタイムにモニタ上の3D画像に手術器具の位置情報を表示、患部との位置関係の把握に役立ち、ミリ単位でのスクリュー挿入を画像上で確認しながら行うことができる。
術前に計画した位置・角度・深さにスクリューを挿入
スクリュー挿入時には術前に立てた計画に沿って、手術台に取り付けたロボットアームが自動で動き出し、最適な角度・位置で停止する。アームの先端にドリルガイド(円筒形の手術器具)を装着し、ドリルで下穴を作成、予定の位置にスクリューを挿入するという流れだ。
脊椎固定術の執刀を担当する八尾病院整形外科の當麻俊彦部長は「術前に手術計画を立てることで、スクリューを挿入すべき場所に計画どおりに誘導してくれ、より精度の高い手術を行えるようになりました。術者の負担軽減にもつながっていると感じています」と評価。
同院は主にハイブリッド手術室(X線透視装置を配備した手術室)で同ロボットを使った手術を施行。ハイブリッド手術室にはシーメンス社のARTIS phenoという据え置き型の高性能多軸透視・撮影装置を導入しており、同装置を活用してナビゲーション用のリアルタイム画像を作成している。ただしハイブリッド手術室でなくても、術中透視用のCアーム(移動型X線透視装置)があれば、通常の手術室でも同様の手術が可能だ。
患者さんは手術前日に入院し、入院期間は2週間前後。手術翌日からコルセットを付けて離床訓練を開始、社会復帰を目指す。
同院が徳洲会グループで初めてMAZORロボットシステムを導入したのは今年4月。以降、毎週コンスタントに脊椎固定術を行っており、再手術に至った症例はない。
なお、同ロボットの導入以前から、同院はハイブリッド手術室でナビゲーションシステムを用いるなど、精度の高い手術を担保する環境を整えて脊椎固定術に取り組んできた。そうしたなか、より正確な手術を可能にする新たな医療機器に着目した谷仁介・麻酔科部長兼中央手術部長の後押しで、同ロボットの導入に至った。
「手術を受けた患者さんからは、『痛みも取れて外出しやすくなりました』、『元の仕事に復帰できました』などと喜んでいただいています。脊椎変性疾患は加齢とともに発症のリスクが高まりますので、高齢者人口の増加とともに脊椎固定術のニーズも増えていくと見られます。安全な手術に寄与する同システムを活用して、脊椎変性疾患でお困りの患者さんのために貢献していきたい」と當麻部長は意気込んでいる。