徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)08月28日 月曜日 徳洲新聞 NO.1404 1面

バイオバンク・ジャパン プロジェクト
研究への積極的な利活用を呼びかけ
集積試料は51疾患・44万症例と世界最大級

遺伝情報に基づく個別化(オーダーメイド)医療の発展・普及に向けた動きが新たな段階を迎えている。ゲノム(全遺伝情報)解析情報を集積しているバイオバンク・ジャパン(BBJ)は、構築がスタートした2003年から20年が経ち、51疾患・26万7,000人・44万症例という世界最大級の試料を保有。平均追跡期間も10年以上となり、これら膨大な試料を利活用し、個別化医療など研究の一層の推進が期待されている。徳洲会グループはBBJ発足当初より協力、ゲノム担当理事である医療法人徳洲会の小林修三・常務理事(湘南鎌倉総合病院院長)は「ぜひ積極的に活用し、創薬や疾患予防、新たな治療法の確立などにつながる研究に役立てていただきたい」と呼びかけている。

徳洲会グループから半数の症例提供

「BBJへの協力は徳洲会の存在意義を示す活動」と小林・常務理事

BBJは一人ひとりの体質に合った医療を実現するため、2003年4月にスタートした「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」の基幹事業として、患者さんから提供された生体試料(DNA、血清)や臨床情報の収集・保管を目的に発足。

国内12医療機関と連携し、18年3月までに51疾患・26万7,000人・44万症例という世界最大級の疾患バイオバンクに成長した。22年9月末までに延べ約275万例のゲノム情報などを学術機関や企業に提供、発表された論文数は国際共同研究を含め500本を超える。徳洲会は発足当初から協力し、登録した症例は全体の半数近くに上る。

「積極的な研究提案をお待ちしています」と松田教授

小林・常務理事は「徳田虎雄・名誉理事長は、目の前の患者さんを救うだけでなく、世界の厚生省として国内外の医療の発展に貢献することを目標に掲げました。BBJへの協力は、アフリカやアジアで徳洲会が取り組んでいる透析センターの開設支援などと並ぶ重要な貢献のひとつで、徳洲会の存在意義を示す活動です」と強調する。

続けて「たとえば同じ年齢層の糖尿病の患者さん同士で、背景因子などの違いによる影響を取り除いたとしても、慢性腎不全を発症する患者さんがいれば、発症しない患者さんがいることも20年間に及ぶプロジェクトでわかってきました。遺伝子の違いが独立した因子として疾患の進行に影響しているのです。エピジェネティック(遺伝子の変異によらない遺伝子発現の制御の仕組み)な違いを考慮する必要はありますが、遺伝子の違いが与える影響は重要です。ぜひ、BBJの試料を活用して研究に取り組んでいただきたい」と新たな知見やエビデンス(科学的根拠)の発信につながる研究、論文発表を勧奨している。

DNAバンクには約27万人分の試料を保管

近年、クローン性造血(造血幹細胞に生じた遺伝子変異)と、さまざまな疾患との関連性が指摘されていることをふまえ、徳洲会では目下、クローン性造血の有無と腎機能の推移の関連を検討する研究を計画している。

4月にBBJ代表に就任した東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻クリニカルシークエンス分野の松田浩一教授は、徳洲会の協力に謝意を表したうえで、「膨大な遺伝情報を解析することで、疾患に関連する遺伝子を見つけることが可能になりました。遺伝情報に基づく疾患リスクの評価により、疾患の予防や早期発見にも役立てることができます。積極的な研究提案をお待ちしています」と呼びかける。

今後も継続して試料登録者の診療情報の更新などフォローアップを続けると同時に、「遺伝子異常が見つかった試料提供者の方々に、その情報をフィードバックし、ゲノム医療につなげていただくことを検討しています」と新たな試みを明かす。カウンセリング体制など整備し、協力医療機関と連携して進めていく考え。また、患者さんから再同意を取りながら、ウェアラブルデバイス(身に付けられる機器)を用いた生活ログ(睡眠時間や運動などの記録)の収集を検討。「遺伝情報と合わせることで、より精度の高い疾患予測のモデル構築を模索していきます」と意欲を示す。

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