徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)08月14日 月曜日 徳洲新聞 NO.1402 1面
一般社団法人徳洲会(社徳)は新たに医療戦略室を開設した。今年、創設50周年を迎えた徳洲会グループは次の50年に向け、一段と発展していくため、同室が各種施策を検討していく。具体的には、学術活動の推進による徳洲会のブランド力向上や医師の採用・教育の強化、臨床ビッグデータやAI(人工知能)の利活用など医療DX(デジタル技術の活用による業務改善やイノベーション)戦略についても方向性を示す考え。
医療戦略会議の中心メンバー(社徳東京本部で撮影)
医療戦略室は大橋壯樹・副理事長が担当理事となり、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の亀井徹正総長、新田隆・医療戦略室特別顧問兼医療法人徳洲会(医徳)心臓血管外科顧問(羽生総合病院[埼玉県]循環器統括顧問)、医徳の落合亮一顧問、野村岳志・周術期医療地域支援室室長、社徳の石川一郎本部長、徳洲会インフォメーションシステムの尾﨑勝彦社長らを中心メンバーとして6月から月1回、「医療戦略会議」を開いている。新田・特別顧問は日本医科大学心臓血管外科講座主任教授、落合顧問は東邦大学医学部麻酔科学講座教授、野村室長は東京女子医科大学集中治療科教授を歴任しており、これまでの経験や経歴を生かした濃厚な議論が期待される。
7月末までに開いた2回の会議では、学術活動を推進していくことの重要性を再確認した。
これまで徳洲会は民間医療グループとして臨床に注力すると同時に、学会発表や論文発表といった学術活動についても、医学の発展や患者さんへの貢献につながることから推奨してきた。そのための倫理審査体制も、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」などに沿って整備。特定臨床研究の実施に必要な認定臨床研究審査委員会もグループ内に有している。
今後、学術活動をさらに積極的に推進、実践し、印象付けることができれば、徳洲会グループのブランド力向上につながり、学術・研究に関心を寄せる医療者のリクルートなどに結び付くことから、重点項目として位置付けている。
また、ビッグデータやAIの活用についても議論。徳洲会グループでは1,400万症例からなる徳洲会メディカルデータベース(TMD)を構築しており、グループ内外の研究に対してデータ提供を行っている。最近では、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と新型コロナ感染症後遺症をテーマに12万症例超の臨床データを用いて共同研究を実施した(小紙1399号に詳報)。
“宝の山”とも言えるTMDの利活用を一層促進することを課題と捉え、TMDにどのようなデータが含まれているかを簡潔にまとめたデータカタログ(データの目録)を整備する。BI(病院運営管理)ツールから閲覧できる仕組みを構築する予定だ。あわせて、現場の職員を対象にIT(情報技術)教育を行い、データカタログを配信するなどTMDを周知する取り組みも行う。これによりクリニカルクエスチョン(臨床的疑問)に端を発する研究の後押しにつなげる。
AIに関しては、徳洲会はすでにCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)、単純X線撮影などの読影を対象に、AI画像診断を一部の病院で先行して取り入れるなど、新しい技術の導入を積極推進。
こうしたAIによる読影補助は、いわゆる識別系AIと言われるものだ。他方、最近テレビなどのニュースでもしばしば取り上げられているChat GPTは生成系AIの代表格として知られる。医療界では、入退院サマリや診療録などの作成補助として、生成系AIに対しても業務負担軽減への期待が大きい。こうした技術の導入に関しても、議論の俎上に載せていく。
教育に関しては、初期研修を終えた後の専門医を目指す専攻医に対するサポート体制や研修体制の充実なども議題に上った。徳洲会グループは今年度、過去最多となる医科193人、歯科9人の計202人の研修医が入職。医科の初期研修医は2年の研修期間終了後、通常、基本領域19領域のいずれかの専門医資格を得るために、専門研修に移行する。初期研修後、いかにグループ内の病院が専門研修の受け皿になれるかが大きな課題となっており、研修委員会や各部会などと連携しながら取り組みを進めていく。
遠隔診療支援システムや医療DX推進体制など多岐にわたるテーマも議題としている。次回会議は8月18日の予定。
大橋・副理事長は「目標は徳洲会が質・量ともに日本一のリーディングホスピタルとなり、地域医療にますます貢献していくことです。そして職員が生き生きと、やりがいを感じながら仕事をできる環境をつくっていくことです。医療戦略会議での議論に関しては進捗に応じ執行理事会や徳洲会医療経営戦略セミナーを通じ、皆さんにお伝えしていきます」と意欲を見せる。