徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)07月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1399 4面

読み解く・読み得 紙上医療講演66
悲しみの影響を最小限に

今回はグリーフケアがテーマです。グリーフとは「悲嘆」とも呼ばれ、死別や身体機能の喪失体験などから生じる深い悲しみや嘆き、怒りといった心身の反応を意味します。いずれも「誰もが経験するような正常な反応」ですが、強度に長時間継続すると、日常生活に支障を来すこともあります。悲嘆を和らげるグリーフケアについて、札幌南徳洲会病院の須藤純子・看護師長(緩和ケア認定看護師)が具体的に解説します。

慰霊祭を開き、気持ちを表現する場を創出 スタッフがグリーフケアの対象者になることも

グリーフは日本語では「悲嘆」と訳され、大切な人や存在を失うこと(喪失体験)で引き起こされる心身のさまざまな反応を意味します(死別など将来予測されていることへの悲嘆も含む:予期悲嘆)。一例として、悲しみや怒り、不安、恐怖、食欲不振、睡眠障害、抑うつ、否認、罪の意識、落ち着かない、涙を流す、引きこもるなどが挙げられ、いずれも「誰もが経験するような正常な反応」とされています。

ただし、悲嘆が強度に長時間継続し、非常に苦痛で社会生活を営めない重い精神症状を引き起こす場合、専門的治療が必要となります。そうならないようにサポートするひとつの方法がグリーフケアです。

「ケア」と言っても、介護のような食事介助や清拭など具体的な行為を指すわけではありません。グリーフケアは「悲嘆を和らげ、乗り越えるために対象者に寄り添う」という考え方や概念に近いものがあります。なぜなら、悲嘆は人それぞれだからです。抱える時期や内容、支援方法なども千差万別。グリーフケアは、とても個別性が高く、誰にでも共通する悲嘆のプロセスや解決手法はありません。悲嘆を抱える現実のなかで、対象者が新しい生活や新しい自分を見付け、前に進んでいけるように関心を寄せることが重要です。

対象者は悲嘆を抱え込んでいる方すべてになります。たとえば、緩和ケアを柱とする当院では、大切な方を失ったご遺族はもちろんですが、患者さん自身も、今まで、できていたことができなくなったり、社会的な役割を失ったりするなど、何らかの喪失体験をしています。また、患者さんが亡くなった時に、深くかかわったスタッフが、患者さんを失う悲しみや無力感などから対象になることもあります。

悲嘆を和らげるためには、まず対象者が悲嘆を抱えていることの理解からはじめ、気持ちを表現できる環境の整備や関係性の構築、悲嘆についての正しい情報提供などに努めます。気持ちを声に出したり書き留めたりする方、遺族同士での対話で共感を覚える方、十分悲しんだり涙を流したりする方などがおり、人によって和らげる方法や時期もさまざまです。私たちのような第三者が介入するのではなく、時間をかけて一人で乗り越えるケースもあります。

当院でも遺族会や慰霊祭、スタッフ間のカンファレンスなどを行いますが、これらは私たち医療者ができるひとつの方法に過ぎず、グリーフケアそのものではないのです。支援する側にとって、“doing(する)”ではなく、“being(つねに存在している)”であることが、グリーフケアでは大事です。

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