徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)07月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1398 3面

川元・湘南厚木病院部長&井上・湘南鎌倉病院主任部長
「PBMのための貧血管理」テーマ
日本輸血・細胞治療学会で共催セミ

第71回日本輸血・細胞治療学会学術総会が5月10日から4日間、千葉県で開催され、湘南厚木病院(神奈川県)の川元俊二・無輸血治療外科部長が座長、湘南鎌倉総合病院(同)の井上裕美・産婦人科主任部長が特別講演の講師を務める共催セミナーを実施した。テーマは「Patient Blood Management(PBM)を実践するために必要な貧血管理とは」。

「PBMは今後ますます重要になります」と川元部長

座長の川元部長は「PBM~世界の趨勢と我が国における役割と実践~」と題し基調講演した。輸血には合併症に加え、供給不足や医療費高騰などの問題があると指摘。合併症には免疫不全や感染症、血栓が起きやすくなる、がんの再発率が高まるなどがあると説明し、「輸血は本当に必要な時に限るべき」と強調した。また、患者さんの自律性にも触れ、「治療の選択を患者さんと共有する」ことが必要でありながら、輸血の代替療法に関する説明が足りていない現状を示した。

こうした背景をもとにPBMの重要性をアピール。①術前には赤血球を増やし最適化する、②術中には止血を確実に行い、失血を最小限にとどめる、③術後は貧血への耐用と代償能力を生かし全身管理する――という3つの治療原則を示し、それぞれ詳しく解説した。また、PBMの実践により輸血を回避することで、患者さんの予後改善に加え、在院日数や医療費も削減する、いわゆる“診療改善”につながることも説いた。

最後に、WHO(世界保健機関)がポリシーブリーフ(包括的な政策提言)を出し、「PBMは早急に必要な治療である」と宣言したことを報告。「PBMは今後ますます重要になってきます。多職種での対応が必要です」と締めくくった。

「周産期はいつ出血が起きるかわかりません」と井上・主任部長

井上・主任部長は「少子高齢化時代の女性のPBM」をテーマに特別講演した。現在、若年層(10~30代)の献血者数は減少傾向にあり、「血液の供給不足が深刻化するため、輸血しなくてよい状況を作らなくてはならない」と強調。一方、少子高齢化時代について国は、未婚化、晩婚化、出生力低下を要因に考えていると説明した。

晩婚化などによる妊娠・出産の高齢化や不妊治療後の出産は、合併症を引き起こすケースが高くなり、とくに帝王切開は経腟分娩より出血量が多くなる。また、前置胎盤(胎盤が子宮口をふさぐような位置にある状態)では、これまで処置の際に輸血を余儀なくされていたが、これに対し子宮動脈塞栓術の技法が有効であると指摘。これはカテーテルを用い動脈をバルーンで塞栓し、処置をした後に戻すという方法で、「放射線科の協力が必要であり、院内で連携強化しておくことが大切です」と助言した。

最後に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)による血小板の再生、デバイスの進化による出血予防など最新の知見に触れ、「周産期はいつ出血が起きるかわからず、つねに出血のリスクをともなう医療です。したがって輸血管理については、患者さんに合わせた方法を取れるように準備しておくことが重要です」とまとめた。

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