徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)07月17日 月曜日 徳洲新聞 NO.1398 1面
庄内余目病院(山形県)は地域全体で肺炎や心不全、尿路感染症の患者さんの治療や療養を支援するため、鶴岡市立荘内病院、鶴岡協立病院とともに「鶴岡・田川3病院地域包括ケアパス連携協定」を締結した。高齢者に多い3つの疾患に関して、役割分担しながら急性期から亜急性期、回復期の治療をスムーズに提供するのが狙いだ。
協定書を持つ(右から)寺田院長、鈴木院長、堀内院長 協定を締結し、連携強化で一致した3病院の三役や地域連携担当職員
協定の締結式は5月31日に鶴岡市立荘内病院で実施。同院の鈴木聡院長、庄内余目病院の寺田康院長、鶴岡協立病院の堀内隆三院長が協定書に署名した。昨年12月にキックオフミーティ
ングを開き、4月には「鶴岡・田川3病院地域包括ケアパス協議会」を設立。各病院の3役や地域連携担当者による協議を何度も重ねてきた。
対象とする疾患は誤嚥性を含む肺炎、心不全、尿路感染症の3疾患。原則65歳以上の患者さんが対象だ。患者さんごとに作成した共通の診療計画書(クリニカルパス=科学的根拠に基づき、標準化した時系列の診療計画)を3病院で共有。役割分担しながら連携し、急性期の治療、その後の亜急性期、回復期治療、在宅などでの療養へとスムーズな移行を目指している。
クリニカルパスを共有し、それに則して患者さんへの治療や療養支援を行うことで、限られた医療資源を効率良く活用できる。検査や治療、リハビリテーションなどのスケジュールをあらかじめ患者さんや家族に示せるため、安心感の醸成につながることも期待される。
寺田院長は「当院が立地する地域のように医療資源が少ないへき地では、地域の医療機関同士の連携強化が欠かせません。そうすることで、よりきめ細かいネットワークを構築することができ、適切に医療を受けられない方たちを減らすことができると考えます。こうした連携がさらに網の目のように地域全体に発展していくことが肝要です。今後も3病院で協力し合い、庄内地域の地域医療に貢献していきたい」と抱負を語っている。
協定では、すべて急性期病床からなる521床を有する鶴岡市立荘内病院で急性期治療を行った3疾患の患者さんに関しては、急性期を脱した後の亜急性期、回復期の治療を庄内余目病院と鶴岡協立病院が引き受ける。両院には、こうした患者さんの受け入れに適した地域包括ケア病棟がある。さらに両院を退院後は、日常の健康管理を行う地域のかかりつけ医(診療所)や高齢者施設などにつないでいく方針だ。
地域包括ケア病棟は急性期治療後の患者さんや、在宅患者さんの急変時の受け入れ、積極的なリハビリテーションの実施による在宅復帰支援など幅広い役割をもっており、できる限り住み慣れた地域での生活を支える“地域包括ケアシステム”の一角を担う。
庄内余目病院は2018年1月に同病棟を45床で開設。毎週火曜日に寺田院長をはじめ多職種で患者さんのベッドサイドを訪れる病棟回診を行っている。回診後には毎回、身体の状態だけでなく退院後の生活も見据えた情報共有や、今後の方針を検討するカンファレンス(症例検討会)を開催している。
医療依存度が高くショートステイ(短期入所生活介護)の利用が難しい方の受け入れや、在宅療養に不安がある方、あと少しの入院治療で社会復帰できそうな方、介護施設などへの退院がすぐには難しい方など、多様な患者さんを受け入れ、在宅復帰をサポート。また、在宅患者さんの家族の介護の疲弊を緩和するため、一時的な受け入れ(レスパイト)にも対応するなど、地域のニーズにきめ細かく応える受け皿として機能している。
なお、今回の協定は、参加した病院の機能に制限を加えるものではなく、従来から取り組んでいる医療はすべて継続。庄内余目病院は積極的に救急搬送の受け入れを行い、急性期から回復期、慢性期まで幅広い医療を提供するケアミックス型の病院で、医療機関の少ないへき地では欠かせない存在だ。これまで肺炎や心不全、尿路感染症の急性期治療にも取り組んでおり、今後も救急患者さんへの対応などを必要に応じて担っていく。