徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)07月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1397 4面
渡邊裕之・薬剤部長 福岡徳洲会病院
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、がんに対する自己免疫を活性化することで抗腫瘍効果を発揮します。一方、従来の殺細胞性抗がん剤や分子標的薬では生じなかった自己免疫疾患様の副作用発現が知られており、免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれています。irAEは活性化した抗腫瘍免疫が正常臓器を攻撃することで生じます。とくに注意が必要なGrade3以上のirAE発生頻度は14~29%と報告され、その発生臓器は多岐にわたり、発生時期も予想が付きません。
irAEには3つの重要な特徴があります。一つ目は「同時かつ異時」で、数種類のirAEが同時に発現するか、または異なる間隔で次々に発現することを意味します。二つ目は「永続的」で、ICI治療中止後もirAEが発現することを意味します。三つ目は「臨床的ベネフィットとの関連性」。抗PD-1抗体で治療された進行性悪性黒色腫患者では、Grade3以上のirAEを有する患者群で全生存期間の延長が報告されています。このことからICIの恩恵を享受するには、irAEを適切にマネジメントすることが重要と言えます。
そのためには医療者による症状の早期発見・対応に加え、患者さんが初期症状に気付き、いつでも相談できる体制整備が必要。医師や病院スタッフに限らず、かかりつけ医や薬局薬剤師など多くの医療スタッフに、irAE発見のスキルを習得してもらうことが大切です。