徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)07月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1397 1面
千葉西総合病院が注力しているMICS(低侵襲心臓手術)の症例数が1,000例を突破した。中村喜次・副院長兼心臓血管外科主任部長が2013年12月に着任し、MICSを開始してから10年弱で達成。年間100例超の施設は国内でも数少ないとされ、多くの患者さんや紹介元の医療機関から信頼され、選ばれてきた証左と言える。内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」を活用するなど新しい技術を取り入れながら、身体に負担の少ない低侵襲手術を推進し、これからも地域医療に貢献していく構えだ。
「周りのスタッフのおかげ」と中村副院長
千葉西病院では大動脈弁や僧帽弁、三尖弁といった心臓の弁が正常に機能しなくなる弁膜症や、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患に対してMICSを施行。1,000例目を実施したのは2月で、ダヴィンチを活用した僧帽弁形成術だった。MICSの累計症例数は5月末時点で1,026件に上り(22年までの年別推移は図1参照)、同院心臓血管外科が施行するMICS以外も含めた心臓・胸部大血管手術の症例数は年間600件を超える(図2)。
MICSの特徴は低侵襲であり、術後の回復が早いのがメリットだ。右胸のあたりを5cmほど小切開し、肋骨の間から器具を挿入して手術手技を行う。従来の心臓手術で行う胸骨正中切開法は、胸骨を縦に20cm程度切開するため侵襲が大きく身体への負担は大きい。MICSの適応があれば、このように小さな創で手術することが可能だ。
17年にはダヴィンチを心臓手術に導入。ダヴィンチは鮮明な拡大視野が得られ、自在に動く多関節構造の鉗子や手振れ補正の機能などがあり、より正確で安全な手術をサポートする医療機器だ。今ではMICSの半数以上はダヴィンチ手術が占める。
「MICSは、手術が上手な医師がひとりいればできる手術ではありません。とくにダヴィンチを使ったMICSの場合は一層その傾向が強まり、術者以外の力がとても重要で、チームワークが求められます。麻酔科の先生や看護師、臨床工学技士の方たちに感謝しています」と中村副院長は謝意を表す。
1,000例の道程を振り返り、中村副院長はリーディング施設としての苦労に言及。同院は国内でも早期にMICSを開始した施設のひとつであることから、全国の患者さんのため、MICSの普及や手術成績の向上を目指し、多忙な業務のかたわら同院での経験を学会発表や論文をとおして他の施設と共有するための学術活動にも腐心してきた。
患者さんに最善の治療を提供するため、同院は心臓疾患に関して、心臓血管外科と循環器内科がハートチームとして合同でカンファレンスを実施。週に2回、TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)の適応症例や、カテーテル治療とバイパス手術を組み合わせたハイブリッド冠動脈治療を行う症例などを対象に、治療戦略などを討議している。
「患者さんの希望に寄り添いながら、かつ数年先を見据え医学的にベストな選択を探り、手術では、しっかりと準備を行い最大のパフォーマンスを発揮することに全力を傾けています。それもすべて、患者さんが元気になり笑顔を取り戻していただきたいためです」(中村副院長)