徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)07月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1396 1面
東京西徳洲会病院は国産初の内視鏡手術支援ロボット「hinotori」を導入、6月5日に1例目の前立腺がんに対する前立腺全摘出術を行い奏功した。hinotoriは内視鏡や手術器具を装着した4本のロボットアームを、医師が3D画像を見ながら遠隔操作して手術を行う。
hinotoriをバックに左から桶川院長、原部長、二宮直紀・泌尿器科医長 モニターに手術画像を映し出しながらhinotoriで手術を行う
hinotoriは「サージョンコックピット」と呼ばれる専用の操作台と、4本のロボットアームを備えた「オペレーションユニット」などで構成。
4本のロボットアームは内視鏡カメラ、メスや鉗子などを装着し、人間の手首よりも可動域が広く、手ぶれ補正などの機能も備わっていることから、より精度の高い手術ができる。2020年に泌尿器科領域、22年に消化器外科領域と婦人科領域が保険適用となった。同院は内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチSi」を導入していたが、更新に際しhinotoriを導入。
原秀彦・泌尿器科部長は看護師、臨床工学技士らとトレーニングを受講、術前の5月下旬には、術中に無駄のない動きができる配置にするため、麻酔科医や手術室看護師らとともにシミュレーションを行い、レイアウトなどを入念に確認した。1例目の患者さんは前立腺がんの70代男性。当日は武蔵野徳洲会病院(東京都)の桶川隆嗣院長がプロクター(手術指導医)として立ち会った。手術は無事に終了し、患者さんは大きな出血などなく、術後も良好に推移。術後1週間ほどで退院した。6月12日には2例目となる前立腺がんの60代男性の手術を行い、良好な経過をたどっている。原部長は「同じ術式でダヴィンチでの経験がありましたので、問題ありませんでした」。続けて「視認性の高さに驚きました。3D画像や視野の拡大表示で詳細に患部を見ることができるので、前立腺全摘術を行う際の合併症の可能性も低減できると考えます」と強調する。
ロボット支援手術では、術中の出血も抑えられ、従来の腹腔鏡よりも操作性が高いことから、手術時間も短縮。「前立腺がんを含め高齢になってから、がん手術を行う方が増えています。ロボット支援手術は患者さんの負担も少なく、より安心して手術を受けていただけると思います」と原部長は評価する。
さらに「ハイリスク前立腺がんの手術で、hinotoriは力を発揮できると考えています」とアピール。病巣が大きく、再発率も高いとされるハイリスク前立腺がんは、通常の前立腺がんよりも広範囲に前立腺を切除する必要がある。これまで開腹手術を余儀なくされていた症例が、hinotoriなら低侵襲で手術が可能となり、より精緻に患部を見ながら切除を行うことで、根治の可能性を高めることが期待できる。同院では今後、ハイリスク前立腺がん患者さんへの手術も検討している。
7月末まで週2回程度、hinotoriでの手術予定が入っており、順調な滑り出しとなっている。「地元の昭島市が、前立腺がん検診の受診を積極的に進めていることもあり、当院でも多く行っています。検診で、がんを早期発見し、ロボット支援手術で患者さんの負担も軽減、より安全な手術を提供することで、地域の方の健康づくりに貢献したいです」と原部長。
今後は近隣の医療機関などに同院のhinotori導入を周知するなど、広報活動にも力を入れていく。なお、徳洲会グループでは23病院(計24台)が「ダヴィンチ」、3病院が「hinotori」、1病院が外科手術支援ロボット「ヒューゴ」を導入している。