
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)06月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1395 3面
第105回日本消化器内視鏡学会総会が5月25日から3日間、都内で開かれた。テーマは「エビデンスと実践に基づく新内視鏡学の確立」。徳洲会グループは5演題を発表した。シンポジウムと一般演題を中心に紹介する。
札幌東徳洲会病院 伊藤貴博IBDセンター部長
「炎症性腸疾患の内視鏡的モニタリング(下部)」と題するシンポジウムに登壇した。伊藤部長の演題テーマは「クローン病患者へのハイブリッド内視鏡による全腸管評価と治療介入の意義」。
大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす疾患の総称を炎症性腸疾患(IBD)と言い、クローン病はIBDのひとつ。原因不明で難病に指定されている。初期症状の多くは下痢や腹痛だが、発病に気付かず、次第に腸管の機能が低下し、最終的に手術に至るケースも少なくない。手術を回避するには、内視鏡検査で病状の厳密なコントロールが重要とされている。
伊藤部長は、小腸カプセル内視鏡(SBCE)と通常の下部消化管内視鏡(CS)を同日に行い全腸管評価する自院の取り組み(自称「ハイブリッド内視鏡」)について検証。ハイブリッド内視鏡を施行したクローン病患者さん79人を対象に、バイオマーカー(ある疾患の病状変化や治療効果の指標となる項目や血液検査などに基づく生体内物質。タンパク質の量など)の数値や、病変の重症度を評価するスコア、治療内容などを分析した。
その結果、内視鏡的寛解(全腸管の粘膜病変が消える状態)と、それに対応する血清バイオマーカーのLRG値が12.9μg/mL以下の低値だったと報告。「LRGを用いた治療のフォローアップの提案」として、「LRG値を参考に、適切な時期に全腸管評価を行い、治療介入の是非を検討することで患者さんの予後を改善できるのではと考えます」と締めくくった。
鹿児島徳洲会病院 前田裕之・外科・消化器外科医長
「上部消化管出血を契機に発見され内視鏡的治癒切除できた同時性多発早期胃癌の1例」と題し発表。吐血で緊急搬送された高齢の女性患者さんに対し、上部消化管出血と診断して止血処置を行った。後日、止血確認とスクリーニングのため、再度、内視鏡検査を施行したところ、早期の同時性多発胃がんが判明。高齢のため、日程間隔を空けて1カ所ずつESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)を行い、術後の経過も良好なことを報告した。
前田医長は、同時性多発胃がんは萎縮粘膜を背景に幽門腺領域に発生することが多く、今回の症例でも同様だった点を指摘。「とくに高齢者の場合、ピロリ菌感染による萎縮粘膜で胃がんリスクが上昇していることを念頭に置き、定期的に上部消化管内視鏡検査をすることが求められます」と強調した。
宇治徳洲会病院(京都府) 小寺徹・健診センター部長
「胃体部大彎に残存胃底腺粘膜が形成される過程を観察しえた自己免疫性胃炎の1例」をテーマに口演(口頭発表)した。自己免疫性胃炎(AIG)は、自己免疫機序(自分自身の細胞や組織に反応して攻撃してしまう現象)によって胃壁細胞が傷害される病気。多くは胃体部(胃の真ん中)の萎縮性胃炎を引き起こすとともに、さまざまな形状の残存胃底腺粘膜をともなう。
小寺部長は、自院の人間ドックを2017年から22年にかけて受診し、その間にAIGと診断された中年男性の症例を経時的に報告。実施した内視鏡検査も示し、19~22年に胃体部大彎の皺襞(ひだ)が亀裂によって分断され、その後、皺襞全体が平坦化したことで、広範囲に帯状や島状の残存胃底腺粘膜が形成されたことを説明。「AIGが進展する様式のひとつと考えられます」と、まとめた。