徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)06月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1394 4面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は6月1日、横浜国立大学と包括連携協定を締結した。ヘルステクノロジー研究や人材育成などを通じた社会貢献、相互発展が狙い。最初の取り組みとして、7月から同院の現場に学生が入り課題を調査(フィールドワーク=現地調査)し、解決案をフィードバックする「オモロイ病院プロジェクト(仮称)~産・学・医連携における課題発見・解決授業~」を実施する。同院がフィールドワークで学生を受け入れるのは初めて。
「医療現場の課題を見つけ、解決につなげてほしい」と芦原事務長
今回、協定を結んだ背景には、2019年5月に湘南鎌倉病院、神奈川県、藤沢市、鎌倉市、湘南ヘルスイノベーションパークの5者が藤沢市の村岡地区と鎌倉市の深沢地区でヘルスイノベーションの最先端拠点形成を目指す覚書を締結したことにある。同覚書の一環として、以前から同院は横浜国立大学と連携を進めていたが、さらなる関係強化を図るために協定締結に至った。
協定に記した連携事項は表のとおり。これらを通じて、医療データを活用した未病診断技術の開発や地域医療モビリティネットワークの構築など先駆的な研究成果創生、医療現場での課題発見・解決に向けた実践的な大学教育、医療現場を理解した人材の輩出などを目指す。
同院の芦原教之事務長は「協定を通じ、学生の皆さんに医療現場を知っていただくとともに、当院が現場に即した研究の一助になれたら良いと思います」と期待を寄せる。
連携の具体的な取り組みとして、まずは7月に「オモロイ病院プロジェクト(仮称)~産・学・医連携における課題発見・解決授業~」を実施する。これは、同大の学部副専攻プログラム「地域交流科目」内の「地域課題実習」のひとつで、学生が実際に病院を訪れ、院内の課題を調査・研究し、解決策を病院に提案するという内容。プロジェクトの実施にあたり、同院では「診療待ち時間」、「病院までのアクセスと治療までのアクセス」、「エネルギー(照明点灯時間、電気量)」、「転倒転落」の4つを主なテーマとして示し、そこから学生がより具体的な課題を導き出すことを検討している。
「いきなり学生が病院に来ても課題はわかりづらいと思うので、待ち時間や移動時間、電気の使用時間、転倒のタイミングなど“時間”を足がかりに、病院の課題を考えてもらうよう大学に提案しています」(芦原事務長)。
カリキュラムは1回90分で全15回。テーマ決めから課題調査・研究、レポート作成を経て、来年3月に研究発表を行う予定。今年度は4人程度の学生が受講予定で、現在、同大で履修者を選考している。
病院側も窓口となる職員の配置、フィールドワークのスペース確保など、学生を迎え入れるための準備に余念がない。「院内の職員だけでなく、たとえば転倒予防策で福祉用具に関する話が聞きたいのであれば、専門家や企業などを紹介し、議論する場を調整するサポートなども考えています」と芦原事務長。
そうした議論から新たなサービスや製品開発につながる可能性もあると展望。また学生から希望があれば、患者さんとコミュニケーションを図る機会のセッティングも検討しているという。
同プロジェクトは必修プログラムではないため、授業内容に高い関心をもつ学生が受講。芦原事務長も「意欲の高い学生が多く参加する授業と聞いています」と胸をふくらませる。またインターンシップや病院実習と異なり、課題発見の視点をもった学生が院内に入ることで、今まで気付かなかった課題や新たな魅力の発見などにつながることも期待している。
「病院は人間工学的な観点から建設されていないこともあり、院内には患者さんにとって使い勝手が悪く感じるところがあるかもしれません。大学ではこうした学問を学ぶ学生もいるので、良いアイデアを出してもらえるといいですね」と芦原事務長。このように医療系以外の学生が病院の実際を知ることで、就職先の候補になるような展開となることも視野に入れている。
こうした協定を大学と結び、フィールドワークを行うのは同院にとって初の試み。まずは同プロジェクトを着実に行い、連携スキームの確立を目指す。