徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)05月01日 月曜日 徳洲新聞 NO.1387 4面
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)は2019年6月に下肢創傷ケアチームを発足、足病(足の創や痛み、むくみなど)で入院している患者さんに対し、定期的な回診とカンファレンス(検討会)を行い、チームとして成熟してきた。また、同時に開設した下肢創傷外来も順調に患者数を伸ばし、地域から好評を得ている。
倉田部長(前列中央)を中心にチーム医療を実施 下肢創傷ケアチームによる回診の様子
下肢創傷ケアチームは外科、皮膚科、形成外科、整形外科、糖尿病内科、腎臓内科、循環器内科の医師に加え、皮膚・排泄ケア特定認定看護師(WOC)、リハビリテーションセラピストなどからなり、足病に悩む患者さんに専門的な治療を行う。たとえば、足の血流が悪く、治りにくい創ができ、痛くて歩けない患者さんに対し、バイパスやカテーテルを用いた血管内治療などを実施、必要であれば大腿や下肢、足部などで壊死した組織を切除し、可能な限り歩けるようにしたうえで、再発しないようにフォローする。
対象となるのは末梢性動脈性疾患、糖尿病性足病変、静脈性潰瘍(静脈瘤、深部静脈血栓症)などによる潰瘍や壊疽。足病は靴擦れや小さな傷、やけどなどをきっかけに発症することもあり、早めに治療すれば、すぐに治るような傷でも、放置すると潰瘍ができ、壊死や壊疽に発展する。また、成因(血流障害、神経障害)、部位、感染の有無などにより治療方針が異なるため、複数の診療科や多職種によるチーム医療が必要不可欠だ。
学会でポスター発表をする髙島・看護師長
同チームの中心となる倉田修治・外科部長兼日帰り手術センター長は、「当院は総合病院であり、多くの診療科がそろっています。そのメリットを生かし、各診療科の医師や多職種でチームを発足し、足病に悩む患者さんが少しでも長く歩けるように、少しでも早く治るようにと、協力・連携して取り組んでいます」とアピールする。
同チームの発足と同時に下肢創傷外来も開設。倉田部長と共にチームを立ち上げたWOCの髙島聖子・看護師長は、「湘南地区に足病を専門的に診察する施設が少なく、遠方の大学病院などで治療を受けている患者さんがいることがわかり、専門外来を開設しました。今後、高齢化が進み、足病の患者さんは増加することが見込まれます」と強調する。
足病は長期にわたる療養が必要で、患者さんの受け入れを敬遠する施設が多いなか、同院は一貫して「断らない医療」を実践。口コミが広がり、同外来は順調に患者数を伸ばし、開設当初は週1回だったのを週2回に拡大した。
また、足病の治療にかかわる診療報酬では、20年度に「静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの)」、22年度に「下肢静脈処置」、「下肢創傷処置管理料」が新設、注目度の高い領域であることがわかる。
足病の予防では、フットケア指導士の資格をもつ成川香理看護師が活躍。3月に特定行為研修を修了し、さらに活動の場が広がる見込みだ。「糖尿病が悪化して、足病を発症しないようにケアしています。まだ創傷管理については勉強を始めたばかりなので、臨床でしっかりと学びたいと思います」と意気込みを見せる。
同チームのメンバーは学会発表にも注力。19年に発足した日本フットケア・足病医学会の学術集会では、第1回から毎年、多職種それぞれが演題発表を実施。そのため日常診療も、つねに問題意識をもって取り組むように心がけている。
同チームの立ち上げから約4年が経過。複数の診療科の医師がバラバラに足病を診るのではなく、チーム一丸となり一人ひとりの患者さんに対応するというスタイルを貫き、経験を蓄積したことで、「チーム内に“阿吽の呼吸”が生まれ、以前よりも無駄が削ぎ落とされ、より洗練してきたと感じます」(倉田部長)。ただし、課題として「在院日数の長さ」を挙げ、自宅や介護施設、慢性期病院で経過観察しても、結果が変わらないと判断できる場合は早期退院を目指す。また、高齢で通院が大変な患者さんには、訪問診療・看護という選択肢も示す。「こうした課題をチームで話し合えることも強みです」と倉田部長は目を細める。
さらに、「地域からの紹介患者さんが多いので、治療の結果を出すことを大切にしています。そのために先進的な病院に見学に行ったり、外部研修を受けたりして自己研鑽が欠かせません」とストイックな姿勢。「患者さんを自分の家族と思い、真摯に診療することがモットーです。まずは湘南一の下肢創傷ケアチームをつくり上げ、地域に貢献していきたいと思います」と意気軒高だ。