徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)03月13日 月曜日 徳洲新聞 NO.1380 1面
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)機能的神経疾患センターは、パーキンソン病の患者さんに対し脳深部刺激療法(DBS)の1例目を行い奏功した。同センターではMRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)、高周波脳凝固術(RF)も実施、これら3つの治療法を施行しているのは徳洲会グループでは同院のみ。3治療法をすべて行う施設は全国にも珍しい。山本一徹センター長は「患者さんに合わせて、いろいろな治療の選択肢を提示できるのが当センターのメリットです」とアピールしている。
「患者さんに合わせ、いろいろな治療の選択肢を提示できます」と山本センター長
機能的神経疾患とは、脳や脊髄などの神経での情報のやり取りがうまくできなくなることにより生じる病気で、パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア(不随意運動の一種)、痙縮、神経に起因する慢性疼痛などを言う。また、イップス(スポーツで特定の運動を行う際に見られる動作の異常)は精神的な問題と思われがちだが、ジストニアの一種であり、脳の治療により改善が期待できる。音楽家ジストニア(手や指がこわばってうまく演奏できない状態)も同様で、これらが治療可能なことは十分知られていない。
MRgFUS治療中に患者さんの震えの様子を確認する山本センター長
これらの疾患には、神経回路の異常を遮断して症状を改善する治療を行う。そのひとつが、湘南藤沢病院で17年から実施してきたMRgFUSで、これは超音波を一点に集中させ脳の患部を熱凝固する“メスを使わない手術”。外科的侵襲がほとんどないのがメリットだが、頭蓋骨密度が低いと患部の温度が上がりきらず、治療効果が得られないことがある。また、生涯で1回のみしか保険適用されないため、対側を治療する場合は自費で行うしかない。
DBSの治療の様子。術中に患者さんを覚醒させ効果や合併症を確認
一方、昨年8月に開設した同院機能的神経疾患センターが取り組み始めた外科的治療として、脳に細い電極を入れ、先端の温度を上げて熱凝固するRF(2022年11月に1例目)、脳に電極を埋め込み、持続的に電気刺激を行うDBS(23年1月に1例目)がある。これらは頭蓋骨にドリルで穴を開けて行う侵襲的な手術だが、脳の患部を直接焼灼、または電気刺激を与えるため効果が出やすい。また、保険適用の回数に制限がなく、DBSは同時に両側の治療が可能だ。
脳深部刺激療法(DBS)の模式図
RF、DBSともに局所麻酔下で手術を行うが、頭蓋骨にドリルで穴を開ける行程など、患者さんのトラウマ(心的外傷)になることを防ぐため、同院では福井公哉・麻酔科部長の協力を得て、鎮静下で行う。頭蓋骨に小さな穴を開けた後、患者さんを覚醒させ、まず試験的に電気刺激を実施、効果と合併症の有無を確認してから本番の治療に移行する。DBSでは脳に電極を埋め込んだ後、全身麻酔に切り替えて右胸(鎖骨下)に刺激装置を埋め込む手術も行う(図)。
山本センター長は「どの治療にもメリット、デメリットがあるので、患者さんに合わせて最適な治療を提案します。私自身、海外でも多数の手術経験があり、安全で質の高い治療を提供しますが、これから手術チームとしても成熟し、より短時間で行えるようになれば、さらに多くの方々に貢献できるようになると思います」と意気軒高だ。