徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2023年(令和5年)03月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1379 1面
NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)は、2月6日に発生したトルコ南東部地震に対し翌7日からリレー形式で先遣隊、本隊の第1、2陣を派遣。第2陣が活動を終了した27日まで合計23人の隊員が現地で医療支援を行った。各隊長はどのような思いで活動したのか。今回は7~14日まで先遣隊を率いた福岡徳洲会病院の坂元孝光・総合診療科部長に聞いた。
医療活動の許可を後押ししてくれたトルコ共和国青少年スポーツ担当相(中央)と(右が坂元部長)
先遣隊は7日に日本を発ち、8日にアダナで活動を開始しました。到着すると、何百ものテントが並び、一角には遺体を入れるバッグ、その上空をヘリや飛行機が重症患者さんの搬送で飛びまくっている……そんな光景が目に飛び込んできました。テントの中では避難された方が肩幅程度のスペースで生活しており、避難者の治療・ケアがTMATの強みですから、同行したふたりの隊員とも「(TMATの)ニーズはある」と確信しました。
ただ、医療支援を行うまでに大変苦労しました。10年前であれば、世界各国からさまざまな医療支援チームが被災地に入り自由に活動できたのですが、かえって現場が混乱するケースも散見され、現在はWHO(世界保健機関)がEMT(緊急医療チーム)として認証するシステムが進められています。
トルコでも現地にEMT調整本部(EMTCC)が設置され活動許可を求めに赴いたのですが、TMATはまだ認証プロセスの過程にあること、さらに申請しているカテゴリーがType 1 Mobile(1日50人程度の移動型診療)で今回EMTCCが求めているチームとは異なることから、許可が下りなかったのです。それでも、日本から駆け付けたことを尊重してくれ、「自分たちでトルコの保健省や医師会などと交渉し、活動拠点が確保できれば活動を認める」ということになりました。
医療ニーズの高い地域の情報を得ては、現地の医師会や行政などを訪れ、そのたびにTMATの概要を含め一から説明。1日に1,000㎞以上移動したこともあります。苦労したかいもあり、10日にEMTCCの許可が得られ、12日に到着した本隊の第1陣に引き継ぐことができました。以前であれば先遣隊も医療活動を行っていましたが、今回は活動するための環境づくりに奔走し、ほとんどできませんでした。
あらためて思うのは、今後、海外の災害医療支援は国際的なルールやシステムのっとって行うこと。発災2日後に支援に入ったにもかかわらず、現地の病院(600床)からすべての患者さんが後方病院に転送されていたり、トルコ全土から2,000人以上の医師が被災地に集められ活動していたりするなど、システマチックな対応に正直、驚きました。システムが整備されているぶん、イレギュラーな対応をしてもらうには時間を要します。
とくにEMT認証は必須。TMAT以外にも、日本のNGOが医療支援活動を行おうと現地入りしたのですが、同じように認証されていないチームは思うような活動ができていませんでした。最後に、今回は遠距離でしたが、徳洲会が検討しているホンダジェットであれば、東南アジアくらいの近隣国ではより迅速な支援ができると感じました。