徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2023年(令和5年)02月06日 月曜日 徳洲新聞 NO.1375 1面

第56回日本臨床腎移植学会
腎移植の“課題と近未来”がテーマ
大会長に田邉・湘南鎌倉病院センター長

第56回日本臨床腎移植学会が2月10日から3日間、都内の「The Okura Tokyo」を会場に開催される。湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の田邉一成ロボット手術・臓器移植センター長が大会長を務める。徳洲会グループも全面的にバックアップする。現地会場での開催を主体としつつも、新型コロナの感染状況を考慮し、WEB参加も可能。大会のメインテーマには「2023 腎移植の課題と近未来の腎移植は?」を掲げ、シンポジウムや一般演題などで多様な切り口のプログラムを用意。多職種が知見を共有し移植医療の発展や質向上を目指す。

10日から「The Okura Tokyo」で開催

「一歩一歩、着実に国際医療協力を進めていきます」と東上理事長

大会長の田邉センター長は東京女子医科大学病院の院長兼主任教授を務めた後、22年10月に湘南鎌倉病院に入職。腎移植に関して豊富な経験を有するスペシャリストとして、同院着任以前から、徳洲会が同大学と共同で取り組んだタンザニアに対する腎移植支援プロジェクトに参加、大きな役割を果たしてきた。

今回の学会は徳洲会が全面的にバックアップし、同院の小林修三院長が実行委員長、腎臓病総合医療センターの日髙寿美センター長が事務局長を務める。

多彩なプログラムを組み、会長講演では今学会のメインテーマにもなっている「2023腎移植の課題と近未来の腎移植は?」と題し、田邉センター長が登壇、さらに同学会の剣持敬理事長(藤田医科大学医学部臓器移植科教授)が理事長講演を行う。

特別講演は3演題を企画。東上震一・医療法人徳洲会理事長兼一般社団法人徳洲会理事長が特別講演1で「タンザニア国における腎移植支援事業(仮題)」、高橋慎一朗・東京大学史料編纂所教授が特別講演2で「武士の都 鎌倉の歴史(仮題)」、AIM医学研究所の宮﨑徹・代表理事兼所長が特別講演3で「End-stage kidney disease(ESKD)におけるAIMの診断的・治療的意義」をテーマにそれぞれ講演を行う。AIMは血中タンパク質の一種で、腎機能の改善促進効果が期待され、目下研究が活発化している。

東上理事長が講演を行うタンザニアへの支援に関しては、03年に徳洲会とタンザニアが医療協力に関する協定書を締結。その後、徳洲会病院でタンザニアの現地スタッフの研修を受け入れたり、透析機器を寄贈したりするなど、国立ドドマ大学付属透析センターの開設を支援、13年オープンするに至った。その後、タンザニアからの要請に応え、東京女子医大と共同で腎移植支援プロジェクトを開始。18年には徳洲会と同大学のサポートにより、ドドマ大に隣接する国立ベンジャミン・ムカパ病院で、タンザニア初の現地医療スタッフによる腎移植が実現した。

海外で病院建設支援

東上理事長は「プロジェクト強化のためドドマ大に“腎移植センター”を付設する計画があります。そこでは移植手術の質を維持・向上するため、スタッフの教育など行い、将来的にはタンザニア人自身の手で医療者を育成し、タンザニア周辺国に腎移植の技術を広める拠点にすることが目標です。また、腎臓病予防の啓発にも力を入れていきたい」と展望。

続けて「徳洲会は“生命だけは平等だ”の理念の下、病に苦しみ困っている弱者のために、せめて医療だけでも公平に届けたいという思いをもって活動しています。国際医療協力は、国内で離島・へき地医療を堅持することと同様に、徳洲会の存在価値を世界に示す重要なプロジェクトと位置付けています」と力を込める。

また、東上理事長はコンゴ民主共和国やインドネシア、モンゴルでの病院建設支援計画に言及し、今後も現実的なスピードで一歩一歩、着実に国際医療協力を進めることを強調。

なお、今学会の参加者には徳洲会のロゴマークが入ったネームケース付きストラップを提供する。離島・へき地医療や国際医療協力など徳洲会の特徴的な取り組みを示すパネル展示、徳洲会の新型コロナ対応を綴った書籍『徳洲会 コロナと闘った800日』(笹井恵里子著、飛鳥新社刊、1,650円)や徳洲会案内パンフフレットの配布、徳洲会の紹介動画の放映などを行うブースも出展する。

腎移植の社会的意義広め Well-beingな医療目指す 小林修三・実行委員長

小林・湘南鎌倉病院院長

第56回日本臨床腎移植学会を当院の田邉一成ロボット手術・臓器移植センター長が大会長となり開催することとなりました。私も実行委員長として、今学会をサポートします。

日本では約33万人もの透析患者さんがおり、徳洲会グループ全体では5,531人(1月31日時点)が登録されています。透析患者さんの約1.7%、60人に1人は徳洲会の施設で透析を受けているわけです。ここまで大きく透析医療にグループがかかわっていることを考えると、腎移植についても同様に大きく貢献する存在意義が徳洲会にはあることから、全体的に今学会をバックアップしています。

現在、日本では腎代替医療に関し、腎移植、腹膜透析、家庭透析の3つに舵を切ろうとする方向にあります。つまり、週3回通院し血液透析を行うのではなく、「Well-being(心身と社会的な健康を意味する概念)な医療」を目標にする時代に入っています。1年長生きすることを目指すのではなく、1年良い生活を継続できることに重きを置く、腎移植、腹膜透析、家庭透析の3つが腎代替医療の選択肢であることが示されているのです。

私のような腎臓内科医も、腎代替医療の選択肢として腎移植をまず考え、患者さんに提案することが求められるようになってきました。今学会では腎臓内科医の先生方にも多く参加いただきたいと思っています。また、腎移植という非常に有効な医療が、人々の命を助けるということを、より多くの世間の皆様に知っていただき、腎移植の社会的意義を広める契機に今学会がなることを目指します。

特別ではない治療へ 腎移植の周知を図る 日髙寿美・事務局長

日髙・湘南鎌倉病院腎臓病総合医療センター長

私は事務局長として開催支援を行っています。今学会をきっかけに、腎移植への壁を取り払い、腎代替医療の選択肢のひとつとして腎移植が選ばれるよう、働きかけたいと考えています。当院では2012年から腎移植を行い、17年には腎移植内科を立ち上げました。私は腎臓内科医としてかかわっていますが、外科も内科も協働で腎移植を行うことが当然となっています。

コメディカルの薬剤師や管理栄養士、臨床検査技師など多職種でカンファレンスを行い、全人的に患者さんを診ています。多職種がかかわることで、移植医療もひとつの腎代替医療にすぎないという意識が醸成されているようにも感じます。さらに、これが普通の治療として広く知られるよう、努力していきたいと思います。また、今学会では内科医と外科医の共同セッションもありますので、腎移植について、さらに深く知ることができる機会になると思います。

また、徳洲会でも多くの移植医療を行っていることを知っていただきたいです。それは国内にとどまりません。たとえばタンザニアでは、私たちが20年1月まで11例の腎移植を現地で支援した後、これまでに現地スタッフのみで19例も腎移植が行われ、結果も良好です。同国では衛生状況や費用面などから、透析よりも腎移植のほうがベターな医療という認識もあるようです。

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