徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2022年(令和4年)12月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1370 3面
日本超音波医学会第49回関西地方会学術集会が大阪府内で開催され、徳洲会が9演題を発表した。一般演題8演題に加え、新人賞にチャレンジするセッションにも参加、優秀賞を受賞した。関西地方の医療機関に勤務する医師や臨床検査技師など現地参加750人、WEB参加を含め1000人以上が知見を共有、研鑽を積んだ。
優秀賞を受賞し笑顔の吉田・臨床検査技師
「今後も精度の高い検査業務を」と藁谷主任
アドリアマイシン心筋症治療をテーマに発表した笠松医長
優秀賞を受賞したのは岸和田徳洲会病院(大阪府)の吉田奈月・臨床検査技師。新人賞のセッションでは7人が発表を行い、最優秀賞1人、優秀賞2人が選出された。
吉田技師の演題テーマは「心室細動による意識消失で発見された左冠動脈肺動脈起始の成人例」。勤務中に意識消失した20代女性の症例で、救急隊到着時に心室細動の状態だったため除細動により心拍再開後、岸和田病院に到着。心エコー検査で左冠動脈肺動脈起始が疑われ、造影CT(コンピュータ断層撮影)検査と冠動脈造影検査を行ったところ同様の所見を得た。
これは、大動脈からではなく肺動脈から左冠動脈が起始する先天性の異常を指す。この患者さんには冠動脈バイパス手術を施行し軽快退院した。「左冠動脈肺動脈起始は心室細動などを発症し、致死的な疾患であるため、意識消失のスクリーニング検査時には本疾患の可能性を考えていく必要があります」とまとめた。
表彰式で賞状を受け取った吉田技師は「光栄です。日頃支えていただいている先生方や同僚の方々のおかげです。これからも患者さんのため、より良い画像を撮れるように努力していきたいです」と抱負を語った。
同院臨床検査科で超音波検査の責任者を務める藁谷直人主任は「学会直前までスライドの見直しや練習を行うなど本人が頑張った成果です。当院では診断精度向上のため2018年に高性能のエコー装置を導入していただきました。こうした恵まれた環境も今回の受賞につながったと思います。スタッフ一同、患者さんのため今後も精度の高い検査業務に取り組んでいきたい」と笑顔。
同院からはこのほか、平良沙也技師、木村透技師、佐藤寛太技師が発表。平良技師は「置換術二年半後に発症した鎖骨下動脈位人工血管破綻の一症例」、木村技師は「僧帽弁に付着した巨大疣腫の一例」、佐藤技師は「肺動脈弁に孤発した感染性心内膜炎の1例」と「神経性食欲不振症に伴う左室収縮機能低下の1例」をテーマに口演した。
和泉市立総合医療センター(大阪府)からは4演題の発表があった。循環器内科の村田恵理子部長は「外傷性三尖弁閉鎖不全症の1例」をテーマに口演。症例はバイク事故で顔面外傷と前胸部打撲の既往がある20代女性。後遺症がなく日常生活に制限もなかったが、数カ月前から動悸を自覚して他院を受診、心陰影拡大を指摘され精査目的で同センターを紹介受診した。
心エコーの結果、右心系拡大および三尖弁前尖の腱索断裂を認めた。重症三尖弁閉鎖不全症によるうっ血肝を呈していたことから外科的修復術の適応と判断、心臓血管外科へ紹介となった。村田部長は「弁を温存する形成術が可能な症例もあるため、至適手術時期を判断する必要があり、定期的な心エコーなどによる経過観察が必要であると考えられます」と強調。村田部長は「左室流出路狭窄を伴ったたこつぼ型心筋症の1例」をテーマとする口演も行った。
同センター循環器内科の笠松慶子医長は「左室収縮能が改善し逆リモデリングが得られたアドリアマイシン心筋症の1例」をテーマに口演。症例はアドリアマイシンによる化学療法でホジキンリンパ腫が寛解した70代男性。半年後に、うっ血性心不全で入院、右室心筋生検により心肥大と炎症細胞浸潤、造影心臓MRI(磁気共鳴画像診断)で心室中隔基部から下壁中隔にかけて遅延造影を認め、アドリアマイシン心筋症と診断。心不全治療薬の投与により、心機能の改善を得た。
笠松医長は「適切な心不全治療を行ったことで、左室収縮能を改善することができました」と結んだ。笠松医長は「化膿性脊椎炎に合併した感染性心内膜炎の3例」をテーマに口演も行った。