徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)10月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1361 1面

徳之島病院
リードレスペースメーカー植え込み術
「離島でも都市部と同水準の医療」

徳洲会グループは、さまざまな角度から離島・へき地医療に注力している。徳之島徳洲会病院(鹿児島県)はリードレスペースメーカー植え込み術を新たに開始。主に徐脈性不整脈など心臓が正常に動かない疾患が対象で、「島民の方のために都市部と同レベルの医療が提供できるよう努力したい」と意欲的だ。また名瀬徳洲会病院(同)と笠利病院(同)は歯科口腔外科領域に関し、宇治徳洲会病院(京都府)と連携。地域研修を兼ね同院の歯科研修医が年間をとおして応援業務を行っている。医師としての成長の機会にもなっており、双方にメリットのある活動だ。

「侵襲が少なく、とくに高齢の方には有用と感じています」と田代副院長

ペースメーカーは、主に徐脈性不整脈(脈が遅い)など心臓が正常に働かない病気の治療に用いる医療機器。心筋に電気刺激を人工的に与えることで、心臓の規則正しい収縮をサポートする。従来は、手術によって本体を左右どちらかの鎖骨の下付近に植え込み、リード(細長い電極)を近くの血管から心臓に通して電気刺激を与えるリード付きペースメーカーが主流だったが、2017年にリードレスペースメーカーが保険適用され、治療の選択肢が拡大した。

リードレスペースメーカー(右)。電気回路や電池、電極などがすべて組み込まれている

リードレスペースメーカーは心臓の中に本体のみを植え込む。小さなカプセル型で、脚の付け根からカテーテルを使って静脈から右心室に挿入、本体の先端に備え付けられた小さなフック状の部分で固定し、直接、電気刺激を与える。耐用年数は10年程度。リード付きペースメーカーのように交換できないため、新たに追加する。また、血管が蛇行しているケースなどには適さず、電気を利用した針治療や高周波・低周波治療などは行えない。

カテーテルでリードレスペースメーカーを挿入する田代副院長 リードレスペースメーカーの位置はX線透視撮影で確認

徳之島病院は21年に治療を行うための準備を開始。田代篤史・副院長兼循環器内科部長が講習を受けるなど、施設基準と術者基準を満たし、今年3月に1例目を実施した。

「とくに施設基準を満たすのは大変でした」と田代副院長。「当院に常勤の循環器内科医師は私のみ。心臓血管外科医師はいません。心臓領域で新たな治療を行おうとすると、現在は心臓血管外科医師のサポートが必須条件になってきていることもあり、沖縄県の中部徳洲会病院と南部徳洲会病院に協力していただきました」と振り返る。

その後もコンスタントに治療を行い、これまで10例を実施。いずれも経過は順調だ。なかにはリード付きからリードレスに切り替えた例もあるという。

リードレスペースメーカーについて田代副院長は「手術のように切開する必要がないため、感染リスクが低い、治療に要する時間や入院期間が短い、リードの断線リスクがない」などメリットを挙げる半面、「固定が不十分だと血流に乗って移動してしまう」といったリスクも指摘。

「患者さんの状態や希望に応じ治療を選ぶ」としながらも、「リードレスペースメーカーは侵襲が少ないぶん、とくに高齢者に有益と感じています」と強調する。「離島でも都市部と同水準の医療を提供できるよう努力します」と田代副院長は語気を強める。

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