徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2022年(令和4年)10月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1359 1面
喜界徳洲会病院(鹿児島県)は9月23日、新築移転工事の起工式を開催した。同院は奄美大島の東側約25㎞に浮かぶ“離島の離島”である喜界島に立地。同島で唯一の病院だ。建築主である医療法人徳洲会(医徳)の東上震一理事長や同院の浦元智司院長、奄美群島離島病院など徳洲会関係者、行政や地域、地元の県議会・町議会、設計・施工各関係者が列席し、工事の無事を祈願した。新病院での診療開始は2024年7月を予定。オープンすれば、徳洲会グループの離島病院では沖永良部徳洲会病院(鹿児島県)に次ぐ新築移転となる。
新病院の完成予想図
喜界病院は1991年8月に開設。病床数は一般40床、医療療養31床、介護療養18床の計89床だ。海岸から近いため潮風による塩害がひどく、雨漏りや配管の不具合など築30年以上が経過し老朽化が目立っていた。
「今後さらに離島医療に力点」と東上理事長
新病院の建設地は現病院から東南に直線距離で約1㎞の地点。市街地から坂を上った位置にあり、津波の心配はない。周囲は喜界町役場や喜界小学校、喜界中学校、地域の防災拠点でもある防災食育センターなどが立地する島内行政の中心地だ。
「安心・安全の根幹として期待」と金江副町長
新病院は地上3階建て。敷地面積は約1万6370㎡、建築面積は約3960㎡、延床面積は約8740㎡。竣工は2024年5月、診療開始は同7月の予定だ。
「喜界病院の医療・介護機能が向上」と禧久議員
台風が多い地域であることから、建物への影響を抑えるため低層階とし、強風を受け流す設計とした。1階中央に“結いの広場” と称する空間を確保。外来や薬局、検査科、放射線科などを、この結いの広場を取り囲むように配置するため視認性が高い。自家発電設備を屋内に格納し、軟水器を設置するなど災害時への対応や長寿命化を図る。
「安心して暮らせる病院を建設」と竹山社長
同院は「島内唯一の病院として、住み慣れた島で最期まで暮らすことを実現できる病院」を目指し、全職員で基本コンセプトを策定。①命の誕生から看取りまで完結できる病院、②島内での災害拠点病院を目指す、③行政や他施設と積極的に連携し、島の医療・介護の中心的な役割を担う、④島民の健康づくりをサポートし信頼と満足を得られる病院、⑤強い日差し、高い湿度、台風に負けず快適に過ごせる療養環境をつくり、後世に残せる病院、⑥離島の特殊性をふまえて、最善の医療を提供できる医療人の確保とジェネラリストの育成――の6項目だ。
「患者さんと喜界島を守っていきたい」と浦元院長
浦元院長は「全職員で練り上げた6つの基本コンセプトの実現に向け、力を合わせていきます。患者さんの生命と、患者さんが暮らす喜界島を守っていきたい」と意気込みを見せる。
地鎮の儀を執り行う東上理事長
徳丸順子・看護部長は「療養環境を改善できることをうれしく思います。病棟をワンフロアに集約し、看護師の視線が届きやすいようスタッフステーションの配置など工夫しました」とアピール。都一成事務長は「マンパワー不足解消のため、とくに島出身の医療人材確保に向けた取り組みを継続しています」と、新病院開院に向け人材確保をより積極化していく。
関係者が列席し工事の無事を祈願 新病院の中央に設ける“結いの広場” 起工式後に東上理事長らが喜界病院を訪れ職員と記念撮影
神事後の直会で、東上理事長が建築主挨拶。「徳田虎雄・名誉理事長は“生命だけは平等だ” を理念に、とくに離島・へき地医療に力を入れ、全国に病院をつくってきました。住んでいる場所によって受けられる医療に差があっていいはずがない。そうした徳田先生の思いで、31年前に喜界病院は島唯一の病院として開設されました」と同院開設の経緯に触れ、「徳田先生の思いを受け継いでいきたい」と語気を強めた。
また、災害拠点に相応しい行政機能の集約した立地での新病院建設が可能となったことから、行政に対する謝意を表明。続けて「今後さらに離島医療に力点を置きます」と宣言、「そのためにホンダジェットの導入を考えています(現在は試験運用中)。島民の方々に医療者側が『本土の医療機関に来てください』と言うのは簡単ですが、患者さんの負担は相当なものです。患者さんが動くのではなく医療者側が動き、離島に良い医療を届けてこそ“努力” と言えます。その受け皿として素晴らしい新病院をつくり上げ、離島医療の充実を図っていきたい」と抱負を語った。
来賓の金江茂・喜界町副町長は「さらなる安心・安全の根幹として地域に必要な医療を提供していただく場となることを期待しています」。鹿児島県議会の禧久伸一郎議員は「喜界病院の医療・介護の機能向上が図られることを大変うれしく思います」と挨拶した。最後に施工者挨拶として、竹山・南生建設工事協同組合の竹山博昭・竹山建設代表取締役が「島民の方々が24時間365日安心して暮らせるための病院建設を目指します」と決意を示した。
起工式後、東上理事長は同院職員に直接メッセージを伝えるため、病院に移動。はじめに一般社団法人徳洲会の植嶋敏郎・事務局長が「コロナ禍で対面の機会から遠ざかっていましたが、すべては現場にあるという方針の下、現場を訪れ現場の状況を見ることを重視しています。徳洲会一丸となって発展していきましょう」と挨拶。
東上理事長は離島・へき地医療をさらに強化していく方針を強調。治療を受けるために患者さんが島外に出なければならないのは「医療者側の都合」と指摘し、「より高度な医療を含め、当院で提供するのが望ましい姿」と訴えた。そのためにホンダジェットの活用や、グループ内の人材交流活性化の構想を唱えた。「命を守る拠点として、目の前の患者さんのためにベストを尽くし、ひとりでも多くの患者さんに『徳洲会があって良かった』と思ってもらえてこそ、存在意義があります。皆で力を合わせ頑張りましょう」と呼びかけた。最後に全員で理念の唱和を行った。