徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)09月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1357 4面

読み解く・読み得 紙上医療講演58
安全支える医療対話推進者

2019年に世界保健機関(WHO)総会で、9月17日は「世界患者安全の日(WPSD:World Patient Safety Day)」と制定されました。今回は「患者さんの安全」がテーマです。近年、患者さんの安全を向上する目的で「医療対話推進者」を配置する医療機関が増えています。この医療対話推進者にはどんな役割があるのか。一般社団法人徳洲会の大坪まゆ美・医療安全・質管理部部長が解説します。

大坪まゆ美・一般社団法人徳洲会 医療安全・質管理部部長

医療対話推進者は、患者さんの安全に対する考え方が変わり、その流れで誕生しました。かつて日本の医療では「医療事故はあってはならない」という考え方の下、トラブルが起こった際は個人の責任を追及する傾向にありました。

ところが、1999年に患者さんの取り違えや薬剤の誤投与など、医療事故が相次ぎ、医療に対する社会全体の不信感が増幅。医療安全への関心が高まると同時に「To err is human(人は誰でも間違える)」という考え方に変わり、組織や仕組みなど環境改善に努めることが重要視されるようになりました。国は法制度の整備、現場の各医療機関は体制やマニュアルの見直しなど、仕組みを中心に〝患者さんの安全を最優先する文化〟を醸成しようと、絶えず改善活動を行っています。

こうした背景の下、医療対話推進者が生まれました。医療は、提供する側と提供される側の知識・情報の差が大きく(情報の非対称性)、双方の誤解から過誤の有無に関係なくトラブルに発展するケースが少なくありません。そのギャップを埋めるのが医療対話推進者です。医療従事者と患者さんとの仲介役として三者で協議したり、個別に対話したりするかたわら、院内の医療安全管理者、事務を含む各部門とも連携して医療機関の環境改善を図り、医療従事者と患者さん双方の理解促進、信頼関係の構築につなげます。医療機関の職員ではあるものの、あくまでも中立的な立場で臨むことがポイントです。

悩みや不安がある時は相談窓口の利用を

日本医療機能評価機構や日本医師会など、さまざまな団体が養成事業を行い、医療対話推進者になるには、原則、医療関連の有資格者は2日、無資格者は3日間のプログラムを受講しなければなりません。徳洲会グループでも医療安全管理部会が、日本医療メディエーター(仲介者)協会のプログラムに基づく研修をこれまで7回開き、合計230人の医療対話推進者を養成しています。

今までは患者さんが不安や不満を感じても、相談先が明確ではなく、結果的に治療を拒否したり、いろいろな場所に相談しても事態が進展せず時間を浪費したりしていました。なかには、いきなり訴訟に発展するケースも見受けられました。

現在は、医療対話推進者が患者さんや医療従事者が前向きで同じ方向を向くよう調整することで、今後の方向性、解決策が見出しやすくなっています。研修修了者が在籍している医療機関では、相談窓口を設置し、玄関やホームページなどで提示しています。不安や悩みがある時には、ぜひ利用してみてください(研修修了者が在籍していなくても相談先をわかりやすくするために「相談窓口」を掲げている場合もあります)。

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