徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)09月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1357 1面

名古屋病院がMitraClip
僧帽弁閉鎖不全症に低侵襲治療
徳洲会グループ5施設目

名古屋徳洲会総合病院は、僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対するカテーテル治療であるMitraClip(経皮的僧帽弁接合不全修復システム)を開始した。従来、MRの治療は外科手術(僧帽弁形成術、僧帽弁置換術)、もしくは薬による対症療法に限られていたが、患者さんのなかには、高齢や心機能低下により手術を受けられなかったり、薬が効かないケースもあったりした。MitraClipはカテーテルによる低侵襲治療で、体への負担が少ないことから、外科手術が困難な患者さんにも治療の機会を提供できる。徳洲会グループで5施設目。

「患者さんに最適な治療を提案します」と田中部長

僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にある弁。前尖と後尖の2枚の弁からなり、拍動によって血液が送られるのに合わせ開閉し、血液の逆流を防いでいる。MRは僧帽弁が適切に閉じず血液が逆流する疾患だ。

MitraClipは心エコー(心臓超音波)ガイド下で、脚の付け根の大腿静脈からカテーテルを挿入して行う治療。右心房から心房中隔穿刺を行い左心房にカテーテルを導き、カテーテル先端のクリップを用い、適切な位置で前尖と後尖をつかんで弁を形成する。国内では2018年4月に保険適用された。

MitraClipの治療の様子

名古屋病院では保険適用後しばらく様子を見ていたが、MitraClipに使えるデバイスの種類が増え、患者さんに合わせたデバイスを選ぶことができるようになり、合併症の報告も少なくなってきたことから導入を決めた。MitraClipを実施するには、日本循環器学会から実施施設認定を取得する必要があり、人的要件や実績要件に高いハードルが課されているが、すでに取得しているTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)の施設基準と類似する部分も多く、問題なくクリアした。

MitraClipによる治療のイメージ図 クリップで前尖と後尖をとめて血流の逆流を低減(提供:アボットジャパン)

1例目は5月12日に実施。80代の患者さんで、心不全で入退院を繰り返し、心機能が低下していたため外科手術が厳しかった。MitraClipの治療は奏功し、術後のリハビリテーションを経て、独歩退院できるまでに回復。その後は外来で元気な姿を見せている。

田中昭光・循環器内科部長は「MitraClipはエコーガイド下で治療を進めるのですが、アンギオ(血管造影)ガイド下で行う通常のカテーテル治療とは勝手が違うので、慣れが必要です。エコーを操作する安藤みゆき循環器内科部長とコミュニケーションを密に取り、一つひとつの手技を確認しながら慎重に治療を進めています」と説明する。

さらに「基本的にTAVIを行うハートチームでMitraClipも実施するので、チームの下地はできています。新たなチャレンジができることに、チームのモチベーションも上がっています」と意気軒高。

同院ではMitraClipの導入により、MRの患者さんに示す治療の選択肢が増えた。基本的には外科手術で根治を目指すが、高齢や心機能低下が原因で手術を受けられない患者さんにとって朗報だ。田中部長は「当院は心臓血管外科の手術件数が多く、手術支援ロボットのダヴィンチによる心臓血管手術にも対応しています。心臓血管外科との連携も密に取っているため、どのような弁膜症の患者さんを紹介されても、患者さんに最適な治療を示せると考えます」とアピールする。

近隣でMitraClipを実施する医療施設は名古屋市に1施設あるが、尾張北部医療圏では同院のみ。しかし、MitraClip自体がまだ多くの医療施設に知られているわけではないため、田中部長は地域への周知活動にも積極的だ。

田中部長は「積極的にカテーテル治療を実施して症例数を増やそうという考えは一切なく、患者さんの適応は慎重に検討しています。患者さんの安全を第一に考え、一例一例を慎重に治療していきます」。

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