徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)09月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1355 3面

日本呼吸療法医学会学術集会
徳洲会が8演題発表

第44回日本呼吸療法医学会学術集会が8月6日から2日間、神奈川県で開催された。メインテーマは「BREAK THROUGH~扉を開けよう~」。呼吸器診療に携わる多職種が全国から集まり日頃の臨床や研究活動で得た知見を発表、情報共有を図るなど研鑽を積んだ。徳洲会グループからはシンポジウムやパネルディスカッション、一般演題などで8演題の口演があった。

緒方部長はシンポジウムとパネルディスカッションで口演 シンポジウムで発言する神尾部長

「COVID-19総括:次のパンデミックに活かすために」をテーマとするシンポジウムには、八尾徳洲会総合病院(大阪府)の緒方嘉隆・集中治療部部長と、岸和田徳洲会病院(同)の白須大樹・救命救急センター医師が登壇した。

緒方部長は「重症COVID-19に対するステロイドの投与戦略─rou-tineのステロイド投与は必要か─」をテーマに口演。重症COVID-19肺炎の病態はモザイク状で一様ではなく、同一症例でも経過中に病態は刻々と変化することから、「その都度、状態を精査し、一人ひとりの患者さんに合わせた治療を検討することが必要です。ステロイドを投与する際は根拠およびフェーズの検討が大切です」とまとめた。

白須医師のテーマは「人工呼吸を要した重症COVID-19患者の胸部レントゲン・CT画像の長期フォローの結果」。後遺症が残ることも多いCOVID-19に関し、重症者の胸部異常陰影がどの程度改善するのかを調べた。「退院後半年で9割弱の患者さんは胸部レントゲンで異常所見がありませんでした。また胸部CT(コンピュータ断層撮影)では異常陰影の範囲は半減、浸潤像はなくなり、すりガラス像は残りやすいことがわかりました」と報告した。

緒方部長は「ARDSの原因疾患を探そう」をテーマとするパネルディスカッションにも登壇。ARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、先行する侵襲が引き起こす血管透過性亢進型肺水腫を総称する疾患群で、急速に呼吸状態が悪化する。ベルリン定義と呼ばれる臨床基準があるが、同基準を満たす場合でも疑似症例(mimickers)の可能性があり、鑑別が困難なことも多い。緒方部長は自院での治療戦略や症例を提示し「BAL(気管支肺胞洗浄)のみでは確定診断に至らない症例も多く、その際には挿管・人口呼吸下にTBLB(経気管支肺生検)を検討しても良いと思われます」と示唆した。

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の神尾直・集中治療部部長は「呼吸療法とお金:2022年診療報酬改定を最大限活かすには」をテーマとするシンポジウムに登壇。ICU(集中治療室)関連の各種加算の施設基準や自院での取得状況を紹介し、「さまざまなハードルがあり、取得できない加算もありますが、小さな加算の積み重ねが収益にも影響するため、加算要件を満たす取り組みを推進する必要があります」とまとめた。

“チャレンジケース”のセッションでは、中部徳洲会病院(沖縄県)の平田旭・集中治療部医師が「蘇生後脳症に対しての気管切開後気管腕頭動脈瘻を形成し大量喀血をきたした1例」をテーマに口演。出血時の対応や治療方針、治療経過などを提示したうえで「気管腕頭動脈瘻を疑った際、もしくは発症してしまった際は、早期に対処し治療を行わなければ救命できず、かつ治療選択は複雑です」と結んだ。

一般演題では、東京西徳洲会病院の西岡広薫・初期研修医が、開腹術後にCO₂ナルコーシス(高二酸化炭素血症により意識障害などが出現する病態)を発症し、治療に難渋した重症COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんの症例を報告。「重症COPD患者さんの場合、可能であれば吸入麻酔や呼吸補助筋損傷は避けるべきと考えます」と訴えた。

南部徳洲会病院(沖縄県)臨床工学部の神谷敏之係長(臨床工学技士)は酸素療法関連機器の安全管理体制の構築に関する取り組みを発表。

具体的にはマニュアル整備や病棟スタッフへの指導・教育、酸素ボンベ残量アラート装置の導入などを実施した。「インシデント(ヒヤリ・ハット)件数およびインシデントレベルともに低減し、気付きにくい流量誤差によるインシデントも未然に防ぎ、安全性をより向上できました」とアピールした。

南部徳洲会病院臨床工学部の屋比久健・臨床工学技士は、在宅用呼吸療法機器のリコール問題への対応を報告。CPAP(持続陽圧呼吸療法)など装置内の素材劣化による粒子状物質などの発生により、毒性の影響が懸念されリコール(クラスⅡ:回収)対象となった。同院は代替機を用意できる県内ディーラーへの取り扱い機種の変更などを実施。「情報収集から装置手配・確保を迅速に対応し、患者さんへの影響を最小限に抑えられました」と報告した。

このほか、吹田徳洲会病院(大阪府)の丸川征四郎顧問、医療法人徳洲会の落合亮一顧問が「COVID-19総括:レジェンドによる未来に向けたメッセージ」をテーマに企画された座談会のメンバーとして招聘され、他の登壇者とともにコメントを発した。

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