徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2022年(令和4年)08月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1353 1面
湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)と宇治徳洲会病院(京都府)は、日本医学会から出生前診断の基幹施設に認定された。出生前診断とは、妊娠中に行う胎児先天性疾患の有無を調べる検査だ。湘南藤沢病院、宇治病院ともに臨床遺伝専門医によるカウンセリング体制を整備し、妊婦さんに寄り添っていく。
「臨床遺伝専門医の役割に広がりが出ました」と橋口部長 「妊婦さんのニーズに応えたい」と青木部長 「チーム医療で妊婦さんを支えます」と横田部長
出生前診断の主な流れは、事前にカウンセリングで検査の特徴などを説明後、母体血を採取しNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)を実施。陽性の場合は、さらに羊水検査で確定診断を行い、カウンセリングでその後の判断をサポートする。
最近は無認可のクリニックが出生前診断を実施するケースが急増、カウンセリングや確定検査がないまま妊婦さんが放置され、混乱する事態を引き起こしている。このため日本医学会は従来の認定施設を「基幹施設」とし、その下に「連携施設」を設け病院数を増やす指針を公表。6月9日の会合で基幹施設として169施設(従来の認定施設が101施設、新たに68施設)を認定した。
湘南藤沢病院の橋口和生・産科・婦人科部長は「無認可施設でNIPT陽性と判定され、どうすれば良いかわからずに当院を受診した妊婦さんもいました。出生前診断は異常を見つけることだけが目的ではなく、妊婦さんの安心のためであり、陽性の場合は、地域ぐるみでの濃密なケアが必要になります。どんな道を選ぼうとも、妊婦さんに寄り添っていきます」と意気込みを見せている。
同院では、NIPTや羊水検査だけでなく、コンバインド検査やクワトロテスト(母体血清マーカー)にも対応。コンバインド検査は妊娠初期スクリーニング(エコー)に採血を組み合わせたもので、胎児の解剖学的変化も検出できる。クワトロテストでは21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、開放性神経管欠損の可能性を算出。妊娠中期に行うため、妊娠初期にNIPTを受けられなかった妊婦さんにも適している。
橋口部長は「妊婦さんの不安を少しでも軽くするために、多くの選択肢を用意しています。近隣では当院でしか出生前診断を実施していないので、紹介された妊婦さんに手厚く対応し、地域連携をより深めていきたいです」と意欲的だ。また「臨床遺伝専門医の役割に広がりが出てきました。患者さんからのニーズによっては体制を見直し“遺伝外来”を拡大する必要もあると思います」と展望する。
一方、宇治病院では、日本超音波医学会認定専門医を有する青木昭和・産婦人科部長が、エコーを用いた胎児の形態異常を調べるスクリーニング検査を実施していたが、染色体異常の検査体制が手薄だったため、1月に臨床遺伝専門医を有する横田浩美・産婦人科部長が入職、同基幹施設認定を申請した。
青木部長は「妊婦さんのニーズに応えたいという思いがあるので、基幹施設認定は重要な位置を占めます。胎児超音波検査、NIPT、羊水検査は、どれかひとつだけではなく、すべて高いレベルで実施できてこそ、患者さんのニーズに応えられます」と強調する。
同院のレベルの高さを示すケースが、横田部長が入職してすぐに訪れた。横田部長が羊水検査を行い胎児にダウン症候群が判明した後、青木部長がエコーで形態異常を調べた結果、心臓には異常がないことが判明。篠塚淳・小児科部長も説明に加わり、妊婦さんの不安な気持ちに対応した。
横田部長は「当院の風通しの良さもあり、さまざまな立場の医師や認定遺伝カウンセラーの知恵を結集し、妊婦さんにハイレベルな情報提供ができました。これから本格的に出生前診断に取り組む当院にとって有益な経験となりました。チーム医療で妊婦さんを支えていけたら良いと思います」とアピールする。