徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2022年(令和4年)08月08日 月曜日 徳洲新聞 NO.1350 1面

業務改善の知見を共有
徳洲会グループ 第6回QI大会結果

徳洲会グループは第6回QI大会を開催した。コロナ禍のため前年に続き事前収録した発表動画を、全病院・施設から視聴するオンライン形式で実施。演題の応募は過去最多を更新した前回の116演題を上回る123演題が集まった。そのなかから一定の評価基準をもとに15演題を厳選。医療の質の向上や業務改善の推進を目的として、2016年以降、毎年開催している。各病院・施設の工夫やアイデアを共有し、グループ全体の底上げを図る重要な取り組みだ。

過去最多123演題応募

演題はテーマや内容に応じて、「臨床」、「患者目線」、「地域社会」、「職員目線」、「経営」の5つのカテゴリに分かれ、各3演題の発表を行った。全病院・施設の職員が視聴・投票(カテゴリごとに一番良いと思った演題に投票)でき、獲得票数の多い順にカテゴリ内で順位を決定(表)。公平を期すため、発表施設は自施設を含むカテゴリには投票できないルールを設けた。投票総数は前回の2倍以上となる延べ5万9592票に上った。

大会開催にあたってQI(品質改善)担当理事の東上震一・一般社団法人徳洲会理事長(当時・医療法人徳洲会副理事長)は「それぞれの施設で各職種が横断的に力を合わせて改善活動に取り組むのがQIの趣旨です。その結果をひとりでも多くの職員の皆さんが視聴し共有していただけることを願っています」とビデオメッセージを寄せた。各カテゴリで1位に選ばれた演題と発表者のコメントを紹介する。

臨床 標語作成し誤認ゼロへ ──湘南鎌倉総合病院

放射線科の室賀幸代副主任が「患者誤認ゼロへ」をテーマに発表。患者誤認は徳洲会全体で取り組むネバーイベント(決して起こしてはならない事象)のひとつでもあることから、QI活動の目標に設定し対策を実施。2つの識別子(患者氏名+生年月日またはID)でモニター確認を行うことを徹底した。

一人ひとりが能動的にモニター確認を行うよう浸透させるため、「せ:責任もって/き:機械(登録モニタ)と/ね:ネーム(患者本人)」と標語を作成。同院放射線科の関根聡技師長の名字に因み、3つの頭文字を取り「せきね活動」として推進。また、確認しやすいよう一般撮影室内のモニターの配置を変更した。結果、患者誤認発生件数は大幅に減少し、2021年4~10月までの7カ月間で2件にとどまった。

室賀副主任は「放射線科のチーム全体で盛り上げながら取り組めました。“患者誤認ゼロ”を目指し継続していきたい」と意気込みを語った。

患者目線 発熱外来の滞在時間短縮 ──湘南藤沢徳洲会病院

同院は「患者目線」のカテゴリで2年連続1位を獲得。金城舞・看護主任が「発熱外来滞在時間短縮を目指して~タブレット問診及び薬剤セット運用導入による業務改善~」をテーマに発表した。同院は20年3月に発熱外来を開設し多数の受診患者さんに対応。上気道症状や強い倦怠感など新型コロナ感染症を疑う症状がある場合は、発熱外来で対応していることから、同外来が新たな感染の場とならないよう、滞在時間短縮を目指す取り組みを実施した。

発熱外来の看護師と受診患者さんとの接触時間を短縮するため、21年8月にAI(人工知能)を活用したタブレット問診を導入。また、処方薬の待ち時間を短縮するため、3種類の薬剤セット処方を導入した。これらの取り組みにより、発熱外来での患者さんの総滞在時間は、導入前と比較し23・2%短縮できた。

金城・看護主任は「多職種の協力と支えにより、滞在時間を短縮できました。これからも業務改善の視点を大切にしていきたい」と意欲的だ。

地域社会 救急隊から高い満足度 ──庄内余目病院

同院は「地域社会」のカテゴリで2年連続1位を獲得。企画課の遠藤豊喜課長が「円滑な救急連携を支えるために~改善活動の継続、企画広報室ができること~」をテーマに発表した。

04年4月から救急隊への訪問活動を開始して以降、①定期的な消防署訪問と情報提供、②救急断りの検証、③救急受け入れ表の連絡、④病院独自のホットラインの導入、⑤救急救命士病院実習の受け入れ、⑥新たな取り組み~スクナ(クラウド型12誘導心電図・静止画・動画伝送システム)に対するフィードバック――などを行ってきた結果、同院の救急搬送者数は年々増加。今回の発表では救急隊へのアンケートをもとに活動の意義を検討した。①~⑥に対する救急隊の満足度はいずれも非常に高く、「日頃から顔の見える関係を築き、意見を聞いて自院の救急体制の改善に生かしています」とまとめた。

遠藤課長は「救急隊からの声をふまえ、新しい活動を徐々に増やしてきました。これからも救急隊の方々とともに地域の救急医療を守っていきたい」と抱負を語った。

職員目線 時間外労働を削減 ──石垣島徳洲会病院

通所リハビリテーションの比嘉藍主任(理学療法士)が「幸せなアフター5を求めて~遥かなる60時間のその先へ~」をテーマに発表(共同演者)。通所リハビリでは全職員が毎日時間外労働を行う状況だったことから、改善活動を実施。20年6月以降、終業時の申し送りの廃止、連絡事項などは管理日誌で確認、送迎コースと人数の見直し、朝の送迎で早い時間に出発した人は定時に終業――などを実践した。

従来、1人平均23時間だった月間時間外労働は20時間に短縮したものの、大きな効果は得られなかったため、再度、送迎方法の見直しを行った。送迎車の台数増や、職員が2人必要なコースのみ他部署から応援をもらうほか、清掃業者による清掃を開始。結果、1人当たり10時間となり、約62%の削減に成功した。

比嘉主任は「視聴・投票いただいた職員の方々から多数のコメントもいただきました。とても励みになりますし、今後の改善活動の参考にしていきたい」と意気軒高だ。

経営 手術室の薬品仮払い低減 ──大垣徳洲会病院

薬剤部の細野真吾主任が「手術室における薬品管理業務の改善─薬剤師の手術室介入効果─」と題し発表。同院の手術件数が近年、大幅に増加するなか、手術室の薬品在庫量や補充方法は大きくは変えていないため、管理薬(筋弛緩薬など、とくに適正な管理を必要とする薬)を含めた薬の不足や、薬の仮払いの増加、手術に使用した薬剤のオーダー漏れが追跡できないといった課題が発生していた。

薬の仮払い増加は薬品管理を煩雑にし、手術室看護師の業務負担の増加や、インシデント・アクシデントの増加につながる恐れがある。改善策として薬剤師が1日1時間程度、手術室に介入し、薬品管理業務を開始。薬品補充方法の変更(薬剤師が手術室に薬を持っていき定期的に補充)、麻薬処方量の見直し、薬品コスト漏れチェックに取り組んだ。

結果、管理薬の仮払い件数は介入前に年間62件だったが、介入後は5件へと大幅に減少。同様に麻薬も21件から1件に減少した。細野主任は「業務改善の成果が表れ、手術室看護師からも『薬品管理が楽になった』と聞いた時はうれしかったです。これからも続けていきたい」と意欲を見せた。

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