徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2022年(令和4年)06月27日 月曜日 徳洲新聞 NO.1344 4面
血管年齢とは、血管の硬さや詰まり具合などから総合して判断するもので、ショッピングモールなどの無料測定を利用したことがある方もいると思います。血管年齢が高いと気を付けなければならないのが動脈硬化。進行すると心疾患や脳血管疾患など重大な病気につながるため、日頃から注意が必要です。今回は羽生総合病院(埼玉県)の栗原政利・検査科技師長が解説します。
栗原政利 羽生総合病院検査科技師長
血管年齢の簡易測定で使用するのは、人差し指の先を入れるだけで測定できる加速度脈波計。指先の脈拍から血流のスピードを測定し、血管年齢を推定する方法です。一方、医療機関での測定で用いるのは血圧脈波検査。両手足の血圧を同時に測り、動脈の脈波を調べることで血管の硬さ(CAVI)、手足の血圧の比を調べることで動脈の詰まり具合(ABI)を測定します。
血管年齢が高い場合、気を付けなければならないのが動脈硬化です。これは動脈にコレステロールや中性脂肪などがたまり、詰まったり硬くなったりして弾力性や柔軟性を失い、スムーズに血液が流れなくなる状態を言います。
動脈硬化には自覚症状がないため、症状だけで早期発見することは困難です。進行すると、日本人の死因の主な原因である心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳梗塞、脳出血)などを引き起こす恐れがあります。これらの病気は発症したらすぐに死に直結してしまう可能性があるため、ある意味、がんよりも怖いと言えます。
狭心症は労作時に胸が痛くなり、じっとしていたら収まるのが特徴。放散痛(病気の原因部位から離れた部位に現れる痛み)が左側の腕や首、歯などに表れます。急性心筋梗塞は心臓の筋肉が壊死して心臓の機能が損なわれる病気。発症1時間以内に50%以上が死亡すると言われます。
リスクの重要な指標になるのがコレステロール値。これはLDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールの2種類があります。LDLは血管の壁にコレステロールをため込み、HDLは余分なコレステロールを血管から回収して肝臓に運ぶ役目があります。両者はバランスが大切で、LDLの数値がHDLの数値の2・5倍以上あると、動脈硬化のリスクが高まります。
その他のリスク要因として加齢、喫煙、高血糖、高血圧などがあります(表)。このうち喫煙は血管を収縮させるため、細い血管が詰まることで太い血管にまで悪い影響を与えます。高脂血症や高血糖は体内に栄養が余分にある状態であり、体に栄養をため込むことで血管にプラーク(ごみ)が形成されやすくなります。
予防には①ストレスを解消する、②規則正しい睡眠で休息を取る(成長ホルモンが血管の傷を修復)、③塩分の取りすぎに気を付ける、④適度な運動をする、⑤お酒の飲みすぎやタバコを控える――など実践が大切です。そして自宅で体重や血圧を測り、毎日の変化を把握すると同時に、病院で定期的に検査を行い、自己管理を心がけてください。いつまでも血管年齢を若く保ちましょう。