徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2022年(令和4年)05月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1338 4面
病院経営者らの団体「東京青年医会」で熱弁を振るう原監督 医療メディアが詰めかけ原監督をインタビュー
『水俣曼荼羅』は患者さんと家族だけでなく、活動を支援する医師や弁護士、元アナウンサー、作家らと、政治家や役人などが入り混じった群像劇だ。原監督は患者さんを「被害者」として扱うのではなく、水俣で暮らす「生活者」としての悲喜こもごもを撮ることに努めている。だからこそ判決後の会見で政治家や役人が「政治決着していますので」、「お察します」と繰り返す体制側の非情さが、より一層際立つ。「この映画では白黒を付けるという態度は極力避け、観客の自由な解釈に委ねています。ドキュメンタリーは基本的に問題提起ですから」。
原監督が明確に指弾しているのが、かたくなまでに現状を変えたくない、変えようとしない姿勢、態度だ。医療界も例外ではない。「『52年判断条件』のベースとなる末梢神経障害の病像論を説く医師に取材をしようとして、弟子筋にあたる人からやめてほしいと妨害されたこともあります。その医師は水俣病を世に知らせた功績がある方ですが、誰でもミスはあります。そのミスをひとつの歴史的事実として追及したかったのですが……」。
インタビューの模様はこちらから!
現代はエビデンス(科学的根拠)が求められる時代だが、この映画を観ると違和感を禁じ得ない。最高裁で支持された中枢神経説は、いまだメインストリームと言えない。二宮正医師(現・笠利病院勤務)は支援活動を続け、2013年の最高裁判決で勝利した溝口裁判で分厚い答弁書を作成。研究に関しては浴野成生医師が細々と続けている。「ふたりの医師に聞くと、脳の障害なので突然、暴力的になったり、性欲が異常に高まったりするなど、さまざまな症状が出るそうです。そういう意味では水俣病の研究は、まだまだこれからです。多くの医師に浴野医師の研究を引き継いでもらいたいですし、さらに、その学説がアップデートされていくような環境をつくってほしい」。
病気や治療の研究が行われないことほど、患者さんにとって、つらいことはない。多くの医師、とくに次代を担う若手医師が水俣病に関心をもち、新たな視点と最新の医学的手法で水俣病研究に光を当てることを願ってやまない。