徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2022年(令和4年)05月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1338 4面
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は厚生労働省から「がんゲノム医療連携病院」の指定を受けた。がんゲノム医療は、がん患者さんの多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにし、一人ひとりの体質や病状に合った治療を行うことを目的としている。厚労省が指定するがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院と連携して治療にあたる。湘南鎌倉病院は3月1日付で、同拠点病院である神奈川県立がんセンターの連携病院として指定を受けた。徳洲会グループでは昨年8月に指定を受けた和泉市立総合医療センター(大阪府)に続き、2施設目。
「遺伝子パネル検査の実施が可能になりました」と下山副院長(左)、門谷・副薬剤部長 週1回、WEB開催されるエキスパートパネルに参加
湘南鎌倉病院は、がん医療に関して手術、化学療法、放射線治療を総合的に提供する質の高い集学的治療の実践に努めている。こうした診療体制や実績が評価され、2020年4月に厚労省から地域がん診療連携拠点病院の指定を受けた。
がんゲノム医療では、標準治療がないがんの患者さん、または標準治療を終えたがん患者さんの多数の遺伝子を同時に調べる「遺伝子パネル検査」を行う。がんの発生や成長にかかわる遺伝子変異を調べることで、検査結果に応じ患者さんごとに最適な治療方針や薬物療法を決定できると期待されている。同検査はがんゲノム医療中核拠点病院、同拠点病院、同連携病院でなければ実施できない。保険診療として実施できる同検査は現在、3種類ある。
湘南鎌倉病院の下山ライ副院長兼オンコロジーセンター長は「これまで年間20人ほどの患者さんを県立がんセンターに紹介していました。当院が、がんゲノム医療連携病院の指定を受ければ、当院で遺伝子パネル検査の実施が可能になり、患者さんにとっては、より身近な病院で検査を受けることができます。患者さんの負担軽減につながるため指定を受けました」と狙いを話す。
同検査の結果に関しては患者さんの同意の下、がんゲノム情報管理センター(C─CAT)に登録を行う。C─CATは人種差を考慮したゲノム医療の発展のため、ゲノム情報のデータベース運用などを担う国が整備した機関だ。
この登録を行うことによって、検査結果で明らかになった遺伝子変異に関連した臨床研究や治験の実施情報が記載された調査報告書を得ることができる。
「遺伝子変異が見つかった場合でも、必ずしもその時点で有効な治療法があるわけではありませんが、臨床研究や治験が行われていれば新たな治療の可能性を享受でき、それを希望する患者さんにはメリットが大きいと言えます」(下山副院長)
同院は指定を受けた3月から、県立がんセンターが主催するエキスパートパネルと呼ばれる専門家会議に参加。遺伝子パネル検査の結果をふまえ、一人ひとりの患者さんに適した治療法を検討している。毎週1回、WEB開催し、同センターや同院を含む5施設の連携病院が計10~20症例について検討を行っている。
同院の門谷靖裕・副薬剤部長は「遠方の医療機関に通院するのは、がん患者さんにとって大きな負担です。地域の身近な病院で高度な医療をトータルに提供できるよう、総合病院の強みを生かしながら、今後も取り組んでいきたい」とアピールしている。
国は一人ひとりのゲノム情報(全遺伝情報)に基づき、個々の体質などに合わせたがんの個別化医療の提供体制を全国に整備するため、要件を満たした病院を、がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院として指定。いずれも地域がん診療連携拠点病院などであることが指定の前提となっており、指定を受けるには診療体制や診療従事者、診療実績、連携・人材育成、臨床試験に関して所定の要件を満たす必要がある。同連携病院は、同中核拠点病院や同拠点病院と連携し、がんゲノム医療を提供する。5月1日時点で、同中核拠点病院は全国に12施設、同拠点病院は33施設、同連携病院は188施設。